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異世界旅行はゴブリンと共に  作者: アフ 郎
2/6

依頼の小鬼

剣士

「この前買ってあげた服、似合ってんじゃん」


魔法使い

「ほんとに~!?私も気に入ってるんだよね、買ってくれてありがと!」


剣士

「いいって。お前にも今度買ってやろうか?」


弓使い

「私は別に・・・いいよ。それよりも依頼の目的地、ここらだよね」


剣士

「あぁ・・・そうだったかな。お前ら、用心しとけよ?」


魔法使い

「うん!」


弓使い

「えぇ」


僕たちはいいパーティーだと思う。

剣士くんはリーダーシップがあって、僕たちを引っ張ってくれる。

魔法使いさんは戦いになると攻撃魔法や回復魔法で皆を援護してくれるし、

弓使いさんはいつも冷静で、時々僕にも話しかけてくれる。

僕は話すのが苦手だから皆との会話に混じれないけれど、虐められている訳でもない。

戦いになったら皆で協力するし。魔物を倒して、戦いに勝って、近くの街や村に戻って、宿で休んで、朝になったら冒険を再開する。

僕たちは上手くいっているんだ。




・・・でも、もし心からの本音を言ってもいいのなら


僕も剣士くんのように皆を導きたい。

深夜、3人と同じように宿屋から抜け出して遊んでみたい。

依頼までの道中、くだらない話をして心から笑いたい。


「本当の仲間」と言えるような存在になってみたい。


幼いころ、御伽噺に出てくる勇者に憧れた。

冒険者になれば勇者のように心から信頼できる仲間ができて、強大な災厄に立ち向かうんだと思った。

でも冒険者になった今、現実はそんなキラキラしたものじゃないと知った。


僕は勇者にはなれない。

旅の仲間とも会話できない僕は「冒険者」にもなれない。

この依頼が終わって街に戻ったら、パーティーを抜けさせてもらって家に戻ろう。

そう思っていた時だった。


剣士

「おっ!ゴブリン見~っけ」


剣士くんの声が聞こえた。

どうやら以来の討伐対象「ゴブリン」を見つけたようだ。


ゴブリンは魔王の従えている魔族の中でも最下級の存在。

知性は低く、言葉も話すことができない。

ここがエルフやドワーフとの大きな違いらしい。


魔法使い

「ねーねー!私が新しく覚えた呪文!使ってもいい?」


剣士

「しょうがねぇなー、外すんじゃねぇぞ」


弓使い

「外しても私が射貫くわ、安心していいわよ」


魔法使い

「やったー!じゃあ詠唱始めるよ~!」


魔法使いさんはそういってブツブツと呪文を唱え始めた。

ゴブリンは魔法使いさんの動きを見て危険を察知したのか、森の奥に向かって走り出した。

それを見た弓使いさんが、即座に矢を射る。

矢はゴブリンの足に命中し、ゴブリンはうめき声をあげた。

ゴブリンは足に刺さった矢をへし折り、地面を這いながら茂みに隠れようとしていた。


魔法使い

「よーし、詠唱完了!狙いを澄まして~!ゆけーファイアボー・・・」


魔法使いさんの詠唱が止まった。


剣士

「お前・・・何してんだよ」


弓使いさんも珍しく驚いているようだ。


剣士

「アンドリュー」


僕は必死に生きようとするゴブリンの姿が、まるで自分のように思えて

このゴブリンを生かしたいと思ってしまった。


ゴブリン

「だず・・・げで」


アンドリュー

「・・・うん」


ゴブリンから助けてと言われた気がした。

僕はそれに頷く。


剣士

「アンドリュー・・・何考えてるか知らないけど早くどいてくれ。・・・お前ごとやるぞ」


魔法使い

「ちょっと本気なの!?アンドリューは人間だよ!?」


剣士くんが苛立ち、魔法使いさんがそれを止めようとしている。


アンドリュー

「やってみてよ・・・僕はこのゴブリンを守る」


弓使い

「あなたそれ、人間への宣戦布告ともとれる発言よ。言葉には気をつけなさい」


弓使いは矢を引き絞りながらそう言った。


何を考えてるか知らないんだろ。

僕の事を人間という種族としてしか見えてないんだ。

僕を狙って、いつでも殺せるくせに。



穿った考えかもしれない


人間に宣戦布告することになるかもしれない


昔憧れた勇者には、もうなれないんだろうな


でもいいじゃないか


助けを求める「人」がいて


僕はそれを助けたいと思った


それ以外は・・・どうでもいい


アンドリュー

「皆。これまで一緒に旅をしてくれてありがとう。だけど」


アンドリュー

「彼を殺したいと言うのなら、僕も君たちを殺す」


剣士

「クルセイダー!!」


アンドリュー

「ガーディアン!!」


冒険者たちは、ゴブリン、冒険者と戦いになった!



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