表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

初陣 その4 -帰還-

前哨戦を無事に潜り抜けたシンたち第2小隊に、行方不明となっている第3小隊捜索の命令が下った。再び戦場へ向かう第2小隊。第2ステージが始まる。

 中尉からの返信が無い。大規模な通信妨害が行われているせいだ。モガミと連絡をとる。「ブリッジへ。こちら第2小隊。他の隊と連絡が取れません。現状を知らせてください。」「・・・第1小隊に損害が出ているが、中尉は無事だ。第3小隊とはこちらも連絡が取れない。」「・・・了解しました。第2小隊はこれより補給のため帰還します。誘導を願います。」「了解。モガミ4。コードを送る。」


 母艦であるモガミに着艦するためには誘導コードが必要である。母艦を間違えたり、敵機と誤認されたりしないための措置である。通信の状態が劣悪だし、押され気味に見えるが、誘導コードが送られて来たのだから、モガミは今のところ着艦出来る状態なのだろう。


 雄々しく主砲を振りかざし、交互撃ちをする戦闘艦群を横目に母艦モガミを目指す。「ブリッジへ。ルナから着艦します。モガミ5、あなたから着艦して。」「了解。モガミ5着艦します」こう言う時、指揮官は最後まで警戒のため着艦しない。明文化はされていないが、複葉機時代からの伝統だ。クリス少尉は部下2人が着艦する様子を見守る。


 旧世紀のパイロットたちは航空母艦への着艦を「コントロールされた墜落」と評していたそうだ。AIの発達した今世紀ではそのような難しさは無いが、戦闘行動中の母艦への着艦は、やはり緊張感がある。誘導コードを送り、着艦軌道に乗せる。


 モニターが着艦軌道に乗った事を告げる。オートで着艦フックをワイヤーに引っ掛けるとガクンと言う強めの衝撃が伝わる。着艦成功。「モガミ5ルナ、着艦しました」「モガミ6着艦しました」「了解。ブリッジへ。モガミ4ジュピター、着艦します。」


部下の着艦を見届け、周囲を確認しつつクリス少尉も着艦体勢に入る。ジュピターは露天ではなく、格納庫へ向かうのだ。「ブリッジよりモガミ第2小隊へ。機体の整備の間、ブリーフィングルームへ行ってくれ」「モガミ4了解」「6了解」「・・・モガミ5了解」


 ベルトを外し、ヘルメットのモニターでバイタルその他のセルフチェックをしていると、作業員からの連絡が入る。「オッケーです。開けてください。」ハッチが開く。「お帰りなさい!」「ただいま戻りました。」作業員さんに答礼を返しながら、外に出る。真面目そうな人だな。


「残弾ゼロです。それと、被弾はしてないけど、アームが傷んでいるかもしれません。チェックをお願いします。」「了解であります!」


 艦内の通路でヘルメットを脱ぐ。気が緩みそうになるが、まだ戦闘中なのだ。気を引き締めてブリーフィングルームへ向かう。リフトに掴まって移動していると少尉から声を掛けられる。少尉はヘルメットを手に持ち、硬い表情のままだ。その表情も素晴らしいです!


 ブリーフィングルームにはすでにウィルが居た。部屋には軽食と飲み物が置いてあるのだが、もう食べ散らかしている。「少尉殿、先に頂いてます!」食べるか喋るかどっちかにしろよ。


 腰を落ち着け、取り合えず水分を口にする。こういう時、飲むのはポ〇リと決めている。ア〇エ〇よりは絶対にこっちだ。あー、生き返る。ふと隣を見ると少尉はやっぱり紅茶だ。パックの紅茶を飲む姿も美しいです!

 

 しばらくするとブラントン中尉が入室してきた。反射的に立ち上がり、敬礼する3人に対し、ブラントン中尉が口を開く。


 「3人とも、無事か。良かった。第1小隊が帰って来れたのはお前たちのおかげだ。礼を言う。それにしてもダイナモ相手によくやったな。」中隊長自ら褒めてもらえた。単純に嬉しい。


 「かなりの手練れでした。撃退出来たのは部下たちのおかげです。」少尉にそう言っていただけるだけで幸せです!「いやあ、それほどでもありませんよぉ!」おい、ウィル調子に乗んなよ。


 少しの間、苦笑いをしていた中尉が表情を改める。「第3小隊と連絡が取れない。ロストしたかは分からん。電波が悪すぎる。補給を受けたら直ぐに出撃する。連絡があるまではここで身体を休めておけ。」


 中尉がブリッジへ向かっている間、しばしの休憩だ。たとえ短い時間であっても、リクライニングシートを倒し、パイロットスーツを緩め、身体を楽にさせることが肝心なのだ。目をつぶっていると冷たいものが顔に乗せられた。おしぼりか。ウィル、気が利くじゃんと思ったら少尉だった。


 「ありがとうございます!」飛び起きようとする私を制し、クリス少尉が微笑んでくれる。「さっきはありがとう。助けられちゃったね。」「当然です。僕らはチームなんですから!」「ウィルもありがとう。」ウィル、セリフを取らないで?すぐに私も少尉に話しかける。


 「少尉殿、次の戦闘はさらに厳しさを増すと思います。でも、絶対に3人で生きて帰りましょうよ。絶対に、です。」少尉に想いを伝えないままなんて死んでも死に切れん。


 「分かった。絶対に、ね。約束よ。よし、そろそろ時間かな。」


「第1、第2小隊へ。整備終了。直ちに出撃せよ。」「「「了解!」」」


 さあ、セカンドステージの始まりだ。


 


 




 


 

炭酸抜きコー〇と悩みました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ