初陣 その4 -ダイナモ-
新手のHCGがシン達に襲いかかる。
重装甲、強火力のHCGダイナモの登場です
味方艦の援護射撃のおかげで敵機との距離を取ることが出来た。この機を逃す訳にはいかない。火力勝負なら負けないからね。クリス少尉も手練のダイナモ相手の斬り合いは不利だと思ったのか、カービンを撃ちながら後退してきた。
ダイナモが取るであろう行動を予測する。
1 間を空けずに突進してくる
2 レパント級巡洋艦に向かう
3 後退する
出来れば3であって欲しいが・・・?それは無かろう。
少しの間カービンの回避運動をしていたダイナモは、バズーカを放つと同時に突っ込んできた。だろうね。味方艦も同士討ちを恐れて撃てないし。
散開するクリス少尉機とウィル機。私はバズーカを避けながら主砲を応射し、真っ直ぐ後退する。思惑通り、私を標的に定めたダイナモが迫る。
「シン!」「避けて!」2人が同時に叫ぶ。これだけ接近されれば主砲は撃てない。ダイナモが剣を振りかざす。全身に電気が走るような恐怖と緊張を感じるが、照準を合わせないまま袖口のミサイルを撃つと同時に、フルブーストで後退をかける。直後に爆炎が上がった。命中だ!
爆炎でモニターは真っ白だが、とにかく8の字回避運動をかけながら後退する。ミサイル2発で吹き飛ぶ相手ではないからね。それでもノーダメージでは済まないはずだ。モニターが回復する。居た。棒立ちのダイナモに主砲を向ける。もらった!
・・・あれ、手応えが無い。モニター上に残弾ゼロの赤い表示が点滅しているではないか。なんでだよ!呪詛を吐きながら攻撃手段を考える。何にも無い。まずい。ダイナモが私を視界に捉えたのか、こちらを向く。動くだけで撃ってこないルナはただの的。猛然と向かって来るダイナモ。もう逃げられない。敵わぬまでもお手向い仕る!アームを左右に開き、威嚇のポーズをとる。コアリクイかよ。いや、ザリガニか?
ダイナモが切りかかる。左右に剣を避けながら反時計回りに動く。ダイナモの動きが何かおかしい。先程までクリス少尉機と切り結んでいた動きとはまるで違う。さっきのミサイルでモニターか駆動系が損傷しているのだろう。ならば!
ルナを前進させ、ダイナモの左側面に取り付く。この動きは予測出来なかったのか、ダイナモの反応が遅れた。素早く左アームでダイナモの左腕を掴み、機体を手繰り寄せると右アームで右腕を掴む。羽交い締めみたいな形だ。
ルナのアームは非力だが、クリップの握力だけは強い。マニピュレーターではない単純な油圧式だからだ。クリップはニッパーと同じ形状をしており、刃が付いている。パワー全開でダイナモの両腕を握り締めると刃が食い込んでいく。
ダイナモはようやく何が起こっているのかを把握したらしく、身を捩って振り解こうとする。アームに負荷が掛かり、モニターに警告灯が点滅する。アームを引きちぎられる前にクリップを放し、後退用のブースターを全開にする。
素早く振り向くダイナモ。切られる!と思ったら剣がすっぽ抜けた。狙ってなかったが、腕の駆動系を切断出来たらしい。しかし、ピンチである事には変わりがない。相手にはまだ脚もあればタックルだって可能なのだ。こちらはもう逃げるしかないのだが、速度はダイナモの方が速い。距離を開けないまま再びアームを左右に開き、威嚇する。
このハッタリが効いた。ダイナモが躊躇する間にクリス少尉機が助けに来てくれた。少尉の放った荷電粒子砲がダイナモを掠める。不利を悟ったダイナモはあっという間に離脱していった。
「モガミ5、無事ね!?」「少尉殿、なんとか。でも弾切れです。補給を受けないといけません」「なんだ、生きてたのか(笑)、しぶといな?」ウィル、酷くない?
周囲ではまだ赤紫と黄緑の光線が飛び交っているが、徐々に黄緑が数を減らしているようにも見える。旧世紀の軍神トーゴー元帥は、「我が方が不利と思えし時は五分と五分」と言う戦訓を残している。本当の所はどうなんだろう。戦況が分からない。
「モガミ4よりモガミ1へ。母艦で補給を受けます。許可を。」「・・・・・・」「中尉殿、聞こえますか?」「・・・・・・」
どうやら状況は良くないみたいだ
子供の頃、ザリガニを釣った後で捕まえるのが怖かったです(笑)。
同じくらい、オオカマキリが怖かった( ; ; )
コアリクイは動画でしか見た事ありません。威嚇のポーズが可愛い(^^)