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王室の霊媒師  作者: 鍛冶
安倍晴龍の霊案件
7/14

安倍晴龍の霊案件⑦動き出す

時は少し戻ってPM 1:30

洞窟入口付近

晴龍達は伝子の話を聞き直ぐに対応しないといけないと話す

大きな悪霊が既に2人の魂を喰らっている。

眠り続けた分の力と魂を食べた分でかなり霊力を上げている

強い悪霊の力に呼ばれるように中級の悪霊が寄ってくるのだ。

元々は処刑場跡の村、死霊達が集まりやすい場所でもあるので邪気が無い者ですら危うくなる可能性が有る。

「悪霊倒すのにもう少しお伝ちゃんからお父さんの話を聞きたいんだけど先に結界張った方が良さそうね」

晴龍がそう言ってスマートフォンの地図をを出すが伝子の霊気で圏外になっていて使えなかった。

様子を見ていた村長が山朱荘に戻れば地図が有ることを伝えると直ぐに戻る準備に入る

菅原は手を握っている伝子を見て晴龍へ視線をおくった

晴龍は溜め息にもにた仕草をとり

「ここに置いていけば悪霊に狙われる可能性も有るから連れてくしかないでしょ」

苦肉の策だった

肉体が具現化する程大きい霊力がある伝子が万が一にでも父親達の霊に喰われれば悪霊は更に大怨霊になる、それだけは避けたい

邪気を好む悪霊は強い霊力も好んで喰らう

それが家族の霊でも関係ない

そんな悪霊が3体にも膨れれば除霊は大変になるので連れていくのは仕方がないと判断した。

一行は車に乗り込み山朱荘へと向かう

車の運転は菅原の為、村長が伝子の横に座り歩みよろうとしてるのか笑顔でやたら話しかけていた

晴龍は伝子の父親達の話を聴きたかったがいったん諦めた。

PM1:50

山朱荘に先に着いていたのは純と愛と保だった

純は保の態度が気に入らないのでスマートフォンで動画を撮りながら山朱荘まで来た

息巻いて部屋で座りこむ保

ふてくされパソコンを広げる純

2人に呆れる愛が部屋のちゃぶ台に腰かけている

3人が居る部屋は純と愛が寝泊まりしている和室

レトロな室内には和箪笥、壁には不気味さもただよう仙人の様な老人の水墨画が飾ってあり、その前には花瓶とこけし、赤べこが飾ってある。

保は弔いの動画を完成させたら最後に村の名所等を作ってみてはと提案してきた。

なんでお前の提案なんかと純は睨みを利かせ、立ち上がったパソコンで洞窟の動画の編集を始める

しかし純は少しひっかかていた。

「帰る」と言われると思ったのにまだ撮影すると保があの気の弱い保が言ってきたのだから

純はチラッと愛を見る、愛はスマートフォンをいじりながら純を目だけで見た。

撮ってきた動画の様子がおかしい

洞窟内を歩いて入るところまでは普通なのだが進むに連れてノイズが徐々に増えてくる。

「なんだこれ?」

純が呟くと2人がどうした?といわんばかりに後ろから覗き込む

ノイズが映り出した辺りから部屋の空気が変わる

冷たく重い空気

3人は気付いていないが後ろの掛け軸の仙人の目が動き、赤べこの顔が上下に揺れはじめ、こけしの目が開いた。

置物全てが3人の後ろから見つめはじめた

ザッザザと音を立てノイズのある画面は2人が亡くなった場所へとたどり着く場面を映す。

山朱荘に着いた晴龍達は旅館からの霊気に気付き、急いで車から降りて旅館内へ入ろうとする

グワッと勢いよくガラスの引き戸が締まり開かなくなった。

「壊してもいいですか?」

土御門が村長へ聞くが晴龍が止めた

扉の向こうに大量の低霊がドアを抑えその上に強い結界が敷かれていた。

純達のパソコンには亡くなった2人の首がおぼろ気に映りはじめた

暗い画面に3人の恐怖した顔が反射している

映り出された首はゆっくりとゆっくりと動き画面の方へと顔を向けてくる。

「あっあっあー」声が詰まりながら腰が抜ける3人

愛が後ろの視線を感じて勢いよくガバッと振り返る

こけしと赤べこが愛の真後ろに来ている

「なんで?」恐怖した目で見る

更に掛け軸の仙人の目が睨むようこっちを観てる事に気付く

ノイズの音が始まるとザザッザザッからファックスの様なピー音が混じり流れる

画面は白目を向いた生首が2つ並ぶと、うめき声がノイズ音に被せるように発せられた

ウォーウォーヴォー

部屋の電気がチカチカとついたり消えたりし始める

恐怖する純と愛

「エッエッエッ」喉をしめられたかのような声で保が笑い始める

今度は何だと言わんばかり保を見ると

蛇の様な目と頬まで上がる口で笑い

スルスルと立ち上がると揃わない指で手の平を掲げ腕を上げた

叫ぶ純と愛の声が晴龍達へ届く

「結界破ります」芦屋が印を唱えようとすると結界から霊圧が飛び出し向かってくる

手裏剣の様に矢を飛ばし朱雀が霊圧を弾く

「ありがとう」芦屋がお礼を告げる

一斉に印を組もうとするが晴龍達は扉の向こうに白い猫を見た

「なんだよ居たじゃん」ニヤリと笑う姿がガラスに映った

「ここを開けて頂戴"詩羽(ウタハ)"」

大きな声で猫に向かって叫ぶ

「詩羽?」菅原が首をかしげる

「はいよーママ」

猫はそう言うと人の形へと変わる

「え?何ですかあれは?」

菅原が驚くと「私の最愛の式神だよ」と晴龍が答える。

まるで平安京に居そうな白い着物に横から後ろまで刈り上がった髪と三つ編みツインテール

前髪はピンクと黒でパッツンのファンキーな式神がまんべんな笑顔で現れた

口元のピアスが笑顔に輪をかける。

最高に可愛い笑顔だ

詩羽は左手の指を2本立てて前へ出す

右手は頭の上まで上げて拳を握ればまるで招き猫のようだ

笑顔が真顔になり呪を放つ

扉を抑えていた低霊達が一瞬で黒い煙状になり消えると結界に歪みが生まれた

「チャンス!」芦屋が印を組み指を結界へ刺すと結界が弾き飛んだ。

「助かったわ詩羽」お礼言いながら純達の部屋へと走りドアを開けると保が笑いながら純に馬乗りになって首を絞めている

愛は叫びながら保を離そうと揺らしながら引っ張っている。

「あっちは詩羽がやっとくよ」

そう言ってこけしと赤べこの方へ印を作り一瞬で祓う

土御門が騒ぐ愛を軽々と片手で持ち上げると畳の上にあった座布団へとどかす

土御門は冷静に呪符を出して保の頭へ置いて呪を唱え呪符の上に指を立てた

保の顔が天を向き叫ぶ

大きな口が開くと黒い煙がグワッと飛び出して来た

芦屋が縄を投げると煙を掴み、縛りあげた

「これは中級霊ですね」宙で縛られもがく黒い煙をみて土御門が手をかざし祓う

「大丈夫ですか?」

伝子を抱いた状態で村長が走ってきた

伝子を見て純達はまた驚く

気を失っている保を土御門が布団の上へと運んだ

霊気、霊圧が害の無いレベルになったことを晴龍達が感じた

純は流石に懲りたのか素直に経緯を晴龍達に話はじめた。

全国を周り名所を小馬鹿にしてた配信は伸び悩んでいた。

旅費を考えると5人では赤字、路線変更で色々調べていた時、朱河村を見つけた、下火になりかけている観光地、でもネームバリューは有る

歴史を観れば過去には処刑場がありこれは怪しい話を創れると思った。

都市伝説をオリジナルででっちあげる配信チャンネル

そう思いここへ来た

「処刑場や神社の話なら私も聴かれたよ」

村長が亡くなった2人に村の事を聴かれたので洞窟の話を教えたそうだ

ただ、あそこは雰囲気が良くないからお勧めはしないと伝えたそうだ。

しかし2人は洞窟へ向かい亡くなった。

村長もそれなりに責任は感じていると純へ頭を下げた。

純は赤字解消と2人への敬意と弔いの為撮影を続行したと言う

晴龍達は正直呆れていた。後付けの理由でこの期に及んでまだ自分達を正当化しようとしているのがある意味哀れでもあった。

部屋に戻り村長が用意してくれた地図を見て人的被害が無いように結界を張る会議が始まる

菅原の横には伝子が懐いたのかピッタリとくっついて座っている。

詩羽は白猫に戻り晴龍の横で身体を丸めていた

計画が話される

他の霊達が入り来れない様に結界の場所を四獣四方に張る事で霊のレベルアップを防ぐ、その後今回の悪霊達の除霊を行うのだ。

四獣四方とは東西南北に龍、鳳凰、龍亀、白狐の印を配置させる事、風水等と同じ並びである

悪霊を除霊させるのに生前の話は知っておくと便利だ、どのくらいの怨みなのか過去の良心や弱み等を知れれば祓いやすくなるからだ。

悪霊は夜現れる事が多い

霊圧の少ない今時間に伝子から当時の話を聞いておくことにする

話は夕暮れまで続いた

PM5:00

駅前の居酒屋

開店したばかりでお客は少なく

空気を裂くように大きな声で話す男達

ゴリラの様に笑いながらバカでかい声で話してる大きな身体をした男は留田灰助(トメダハイスケ)

隣で腰巾着の様に笑っている小物感満載の男は穂本洋司(ホモトヨウジ)

ハイボールをガバガバと飲んで勢いをつけて話す

前には留田を持ち上げながら自分を凄いやつとアピールする六風がレモンサワーを飲んでいる

今日の悪夢から立ち直れていない古林は何も飲まず、頼んだだけの烏龍茶が汗をかいていた。

六風は2人を釈放させるまでプロセスを武勇伝の様に話をして恩を着せるように伝える。

当然裏話は言わない、古林を陥れるようにコイツが妹に手を出したからとコイツのお陰だよと肩をたたく。

古林の目は死んでいる。

すげぇぜすげぇぜとウキョウキョ笑いながら留田は出てくる物をがさつに食べる。

留田も穂本も清潔感はなく従業員への横暴な態度もありお店では歓迎されない客だった

六風も留田も自分達は命知らずだと意気投合していた。

出世も興味なく、国民の為だけに俺は命賭けて職務を全うしてんだと威張る六風。

世の中は知ったこっちゃないが仲間の為なら命をかけると粋がる留田。

似た空気を感じると2人を持ち上げる腰巾着穂本。

話が本題へと入る

隠し撮りした土御門の画像を留田へ見せる

「中々いかいつい奴だな、コイツを止めればいいんだな、俺にその写メ送っておいてくれ」

フンっとあしらうようにスマートフォンを突き返した。

「多分っすけどそいつは今、湖の側にある旅館に居ると思うのお願いしまっす」

何に被れてるのか、その言い方がカッコいいと思っているのか昔の任侠映画の様に膝に拳を置いて背筋を伸ばして頭を下げてから画像を送った。

話し方は田舎のヤンキー中学生、上っ面だけのその姿は陳腐だ

古林の手前、事故に見せる事や殺すと言った話はしない。

留田も空気を読んで理解している。

古林は昨日警察で六風が言っていた洞窟の事件を追う事と思っている

しかし今の古林にはどうでも良かった。

六風は晴龍を外へ誘き出す作戦を伝える

その時に土御門を別の場所へ呼んで足止めをしてもらいたいと話す

留田は六風の耳元で声をひそめ

殺しちゃってもいいのかと言うと六風は「そこはお任せします」と軽く答えた。

1時間もしないで六風達は店を出る

会計は古林が出す

従業員達は早々に帰る4人を見て肩を撫で下ろす

少しの時間しかいないかったテーブルは汚かった。

PM18:10

山朱荘に着く六風達は古林の運転する車から慌ただしく出てくる晴龍達を見つけた。

人が増えている事で作戦を変えないといけないのかと留田が六風を見ると目をギョロギョロとさせて晴龍を睨む姿に異常さを感じた。

晴龍は男と少女と猫を連れて車へ乗り込んだ。

残りの3人が一緒に歩き始めたのを確認して尾行すると車から留田と穂本が降りた。

別行動なら足止めの必要ないと古林は思ったが口にはしなかった。

六風の指示で晴龍達の車を追った。

菅原は車を運転しながら「正直、悪霊に同情するところも有りますね」と晴龍へ言う

「悪霊は殆どって言って良い位、被害者だからね」

と少し寂しげに答えた。

2人は伝子から聞いた話を思い出していた。










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