表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王室の霊媒師  作者: 鍛冶
安倍晴龍の霊案件
5/14

安倍晴龍の霊案件⑤村長の村案内

朱河警察署8:30

山合の朝は気持ちの良い空気が肌寒さと共に漂う

警察署の入口には水色のロングカーディガンの中に白を基調としたワンピースを来た可愛らしい女の子が立っている。

「ちょっと何でこんな場所まで来なきゃ行けないのよ」

頭をかきながら出てくる六風に食いつくようにはしってくる

警察署入口で六風は前日の経緯を話

それを見ていた警護警官が少し笑って見ていた。

今回は説教と始末書で済ましてもらったと話すと

女の子は警察は身内に甘いと呆れていた

少し話をしていると三係の若い刑事もでてくる

六風がへらっと頭を下げる

通常なら無視をしてさっさと帰るのだが、六風が女の子を連れているのでわざと必要もない声をかけた

憎まれ口にも近い言葉だが六風はお恥ずかしいと言わんばかりに笑って女の子を紹介する

女の子の名前は 小春

六風の妹と名乗る、若い刑事は鼻の下を伸ばすのを隠すように少しカッコをつけて名乗った

古林翔(コバヤシショウ)

兄がご迷惑をと頭を下げると古林がいえいえと返し少しの談笑が和みムードになる。

小春がお腹空いたと六風に言うが土地勘が無いので何処がやってるか解らないと告げると古林が得意気に朝やっている美味しいお店を教えてくれる

場所がわかりにくいので案内をして欲しいと小春が甘えた口調でお願いしてきた。

古林は2人を自分の車に載せて警察署を後にした。


山朱荘 8:45

晴龍たち5人が朝食を終えて外へと出てくる

広い空を満喫するかのように深呼吸をする

バイクのエンジンの様なエンジン音をならし村長がチェーンソーで植木の手入れをしているのを見る

「ご自分でお手入れされてるのですか?」

晴龍が目をキラキラさせて村長の元へ駆け寄っていくと村長は気配で晴龍に気付いた。

2人は楽しげに話している

「意外ですね、ああいうおじいさんがタイプなんですね」

菅原が真顔で言うのを見て朱雀が吹き出して笑う

「違うわよ、あんた天然?」

他の2人も笑うものだから菅原は気恥ずかしそうに「違うんですか?」と言う顔で訴えた

「晴ネェはああいう職人的仕事が大好きなの、興味が有るのはチェーンソーで木を整えているあの(わざ)

言われてみれば 安倍晴龍はそっちの方が似合っていると菅原は納得して頷いた

暫くすると晴龍が村長と共に来る

色々話しているうちに打ち解け、事件のあった洞窟まで案内をしてくれるそうだ。

菅原が運転する車に乗って現場へむかう

少し窓を開ければ心地よい風が車内に流れ

村長が村の案内(ガイド)をしながら走る

村長は物腰が柔らかくて人当たりが良い

そして話好きのようだ

観光地と行っても年々観光客は減ってきていて困っている話を愚痴混じりの相談のようにしてきた

キャンプ客が多くなってきているが今回の事件で客足が減るのではと心配もしている

「殺人事件だと減るかも知れないけど、怪談話なら来るかも知れないですね」

晴龍の発言に村長が目を見開き驚いた

「そんな事があるもんなんですか?」

「まぁ怖いものは現実離れしている方が興味を引きますからね、ほとぼりが覚めたら街起こしで幽霊祭りとか幽霊饅頭等やってみては?」

「不謹慎では?」

「確かにそうね」と晴龍は村長へちょっと意地悪そうに笑うと村長は頭の汗を肩に掛けてるタオルで拭いた。

洞窟は山朱荘の丁度対岸にある

湖を大回りする様に行くと大きな鳥居が見えてくる

そこが事件現場の洞窟

車を止めて見てみると石色に古い土汚れの鳥居が威圧感を与える様に大きく構えていた。

キープアウトのテープが剥がされている。

「誰かきた?」芦屋が目を細目暗く冷たい風を感じる洞窟を覗く。

「ここからだと霊気は感じないですね」

土御門が懐中電灯を出して言うと村長も懐中電灯を出して2人が先頭となって中へと入っていく。

菅原は身体を震わせながら晴龍の隣で歩いていく。

後方からも懐中電灯を照らしながら朱雀と芦屋が歩いていく。

少し歩くと外の光は届かない、4つの電灯が役に立つ、照らせばかなり明るい岩場が水気に光って不気味に映える。

冷たい空気と何処からともなく吹いてくる風にお線香の香りがする。

晴龍はそこにいる者の検討はついている。

白い息が舞う

「随分寒い上に長いね」

晴龍が周りを見ながら腕をさする

「元々はここも湖だったんですよ、地震や嵐といった天災で地盤や地形が変わり洞窟が出てきたんです、山水が浸透してきてるのと地下水が流れてるので空気が冷たいし1年中寒いんです」

静かに村長が話し始めた

鳥居が石で造られていたり、少し新しくも感じた事もあり晴龍がこの(ヤシロ)事態いつ頃出来たのか訪ねた。

昭和の中頃に村長が父親と一緒に造ったそうだ。

元々は洞窟の上に供養塚があったのだが宮司と話し合い偉い宮司さんにお願いして洞窟内に(ホコラ)と結界を結んでもらったそうだ。

「私らはお金を出しただけですけどね」と村長はへへへと得意気に笑う

奥に小さな灯りを見つける

懐中電灯を灯りの方へ向けると3人の姿が見える

照された一瞬だけだが3人の後ろに白い人影が見えた

村長は気付て居ないようだが5人は一瞬の霊気と影に身構えた

「誰ですか?」穏やかに村長は問いかける

「純と愛と保です」

仲間2人が亡くなったと思われる場所でお線香を焚きながら撮影をしている姿を見て

「あんたらある意味すごいのぉ」

村長は呆れた口調で肩を落とした

「おじいさんごめん、照されるとカメラに反射して動画撮れないから少し光下げて」

純が光を手でさえぎりながら言うと村長はすまんすまんと光を違う方へ向ける。

「相変わらず生意気ですね」

土御門が指を指して言うも「あんたいつもあんな感じ」と朱雀が突っ込むと「朱雀もね」とどっちもどっちの話になり少し笑いが起きる

撮影している3人の脇を通り結界の前に着く

「物凄い霊気が漂ってる」芦屋が生唾をのむ

照された洞窟内の奥には大きな氷岩があり見事な綱で結界が結ばれていた

大きな氷岩の前に小さな祠を挟んで岩と祠を守るように3つの氷岩が並んでいる。

「2つの岩が割れている、結界も切られてる」

芦屋が切れた結界を持って切口の形状や結界の種類を懐中電灯で照らしながら分析している

「晴龍さんこの結界結んだの‥」

芦屋が晴龍を見ると晴龍が頷く

道満(ドウマン)だな」

道満(ドウマン)?」

菅原は誰?と首をかしげる

「いずれ逢う時が来るよ、民間霊媒師の道満っていう芦屋の叔父さん、結界師よ」

菅原はどんな人なのか少し逢ってみたいと思った。

5人は切れた結界や岩を引き続き調べる

菅原は初めての事なので教わりながら要所、要所をスマートフォンに打ってメモにしている

寒さにやられ顔が紅くなっている所に撮影3人が悪びれもせず撮影しながら入ってくる。

「危ないからこっち来るんじゃないよ」

晴龍がきつめに言うが全く気にせず入ってくる

土御門が大きい身体を活かして撮影の邪魔になるように立ちふさがると3人の足取りがとまる

土御門の顔がいかついのに光に照らされて更に怖く映ったので怯んだ

菅原のスマートフォンに異変が起きる

タッタッタと人差し指で画面を叩く

「フリーズ?」

撮影している保の画面にノイズが走り突然スンっと暗くなる

冷たい電気が走る感覚を5人が感じとる

「来た!」

呪符を出そうと構えた時、保の身体が一瞬浮く

「うへっうへっ」

蛇のような人相で笑はじめる

「保!」純と愛があまりの恐怖で目を閉じて腰を抜かし座り込む。

保は白目で鼻の穴を広げ口を頬まで三日月の様に吊り上げて 野太いのに高くも聴こえる声で笑はじめた

土御門が呪札を保のオデコへ着け呪符を唱えはじめる、すかさず芦屋が麻縄で身体を縛り札を貼る

保は足から崩れ地面に倒れた

除霊に入る土御門と芦屋が指を二本立てる

「まてっもう居ない」

晴龍が止めに入ると保の顔は元に戻っていた

芦屋が驚く、土御門はかなりの速さで呪符を貼ったはずだし自分も隙なく呪縛したのだから

「おかしい、何かおかしい」

晴龍が周りを見ながら呟く、後ろでは朱雀が小さい弓矢を指の間に挟んで構えている

菅原が首をおさえて膝を着く

「は、晴龍さん」

絞められてるかのように苦しく思う通りに声が出ないので手を伸ばした

朱雀が異変に気付いて矢を菅原へ投げる

矢が身体に当たると菅原も倒れ混む

全員に強烈な耳鳴りが飛ぶ

鼓膜を刺すような痛みが襲う

すると錫杖(シャクジョウ)の鈴の音にも似たシャンシャンシャンという音が洞窟内に鳴り響く

純と愛が耳をおさえて恐怖する

白い影がスゥーと隣に現れる

気付いた晴龍が片耳を押さえながら十字を描き"早九字"を切る

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」

白き影は九字の途中で何処へと消えた

耳に残る残音と少しの頭痛に言葉を失う面々だが、腰を抜かしていた村長が3つめの岩の結界が切れている事に気付いて指を差して晴龍に教えた。

どういう事?、いつの間に結界が破れた?霊が切った?誰かが切った?

晴龍達が戸惑う

誰かが切ったとしても皆そばにいた

1番怪しい純達は腰を抜かしている

霊は二体いて一体がのり移っていたのでもう一体が結界を切ったのと考えるのが一番確率が高い

これだけの悪霊なら結界を切ることも出来るだろうが結界師の結界が簡単に切れるのか?

一瞬の間で晴龍の頭の中で謎が駆け巡る

"出して、ここから出して"

今度は女の子の声がする

5人が声のする一番大きい氷岩を見る

ぼやっと青白い光をゆらつかせている

"ねぇお願い出して"

頭の中に聴こえるように響く

純と愛は完全に怯えて気絶している保を置いて走り去っていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ