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王室の霊媒師  作者: 鍛冶
安倍晴龍の霊案件
4/14

安倍晴龍の霊案件④囚われの六風

朱河警察署

足をがに股にして猫背で歩いているが入口でポケットから手を出して背筋を伸ばす男が守衛警官に手帳を見せてさっさと中へと入る

19時をまわっているので1階正面受付には誰もいない

軽く舌打ちをして生活安全課に行き警察手帳を出して頭をしゃっしゃっと下げて上げる。

「県警本部の六風です」

少し大きい声で勢いつけて挨拶をする

カウンター越しの制服警官がスッと立上がり敬礼で返す。

「誰か1人捜査に貸してもらっていいっすか?、何課でも構わないので」

まるで学校の部員の様に半分フレンドリーに言うと

制服警官は冷静かつ事務的に要請が有るか無いかの質問してきた

この事務的な対応に六風は顔を下にして目をギョロっとさせて苛立つが深呼吸をして笑顔を作る

要請は無いが先日起きた首切り事件の捜査に1人では対応できないので協力をお願いしたいと伝える。

制服警官は上に確認をすると言って奥へと行く

六風は待合いの椅子に背筋を伸ばし腕を組み足を広げて待つ

ギョロギョロと睨むようにして制服警官の背中を観ている。

少しすると制服警官が戻ってきて今一度警察手帳を確認、六風は押し付ける様に見せると2階の捜査一課を案内される。

ノックをして捜査一課へ入るが時間的に数名しか居なかった

受付をしている警官に三係へ行くように指示されたらい回される事に苛立つのを押さえながら薄暗い廊下を歩く

三係の札を見るとまた笑顔を作った

扉は空きっぱなしで置かれただけのカウンターがある

中には3人しか見えない

壁をノックして挨拶をするも 誰だお前? みたいな顔をされる。

疎外感を感じる中、印籠の様に警察手帳を出して

"県警本部捜査部"を強調して名乗りを上げる。

若い刑事がダルそうに歩いて来た

六風は今回の事件の真相を捜査するために人を1人貸して欲しいと改めて頼んだ。

若い男も中に居るベテラン風の刑事も相手にしない

目がギョロギョロとしていく六風を見て若い刑事は強制的に廊下へと追い出した。

下手に出るのも笑顔を作るのも演技をしていたのだが六風はもう自分を偽るのをやめた

作戦を変更する

廊下から捜査一課三係へくるりと勢いを着けて戻る

ガシャーン

響く音と共に三係受付のカウンターが倒れる

3人の男が直ぐに六風を取り押さえた

流石の刑事達動きは早かった

「はなせコノヤロー」

本日2回目、床へ叩き落とされる

捜査一課の別の係も一斉に走ってくる

興奮状態のまま手錠をかけられる

「あんた正気か!免職もんだぞ」

ジタバタと暴れる六風に叫ぶ刑事

六風はそのまま留置場へと連れていかれる

「少し頭ひやしなさい」

そう言ってベテラン風の男が冷ややかな目で六風を見た

六風は膝を抱えて下を向いているが口元はイヤらしく汚い歯を見せ笑っていた。


警察署によって留置場の作りは違う

朱河警察署の留置場は1つのフロアに6つの部屋の様に牢屋がある。

フロアの入口は金庫のような扉で出来ていて扉の外側は捜査一課になっているため留置場内の牢屋番はいない。

したがって牢屋前はカメラのみであるため牢屋同士の会話ができる。

田舎の警察署とあって囚われている者も少ないもしくは居ない恐れがある

ここは六風の賭けだった。

「うぉーい、誰かいますかー」

六風の声がフロアに響く

返事は無い

「うぉーい」とまた叫ぶ

ガサガサっと小さな音がする

人の気配を察知して、六風はまた叫ぶ

フロアの入口の扉が厚い為、外に声は漏れない

所轄は監視カメラの音量も切ってあることが多いのも知っている。

六風は何度も叫んだ

「うるせぇな!静かにしろぉ」

隣から男の声が響いて返ってきた

「すんません、ちょっとお話しませんか?」

「しねーよ」

「何でつかまったんすか?」

相手の答えなど気にせず話始める

「殺人っすか?薬すか?」

返事はない

「もしかして傷害しかも喧嘩とか窃盗みたいなションベンすか?」

ゴッと厚い壁をたたく音がする

「そうなんだ、ションベン刑方面だ」と軽く笑って話を続ける

「初犯?ションベンの初犯?」

「テメーいい加減しねぇか!アニキはそんなんじゃねぇよ、バカにすんな!」

少し高い声で怒鳴る男

フォローするような発言に捕まっているのが1人では無いことを確信すると六風の顔はやらしい笑顔をした。

「本当すか?見栄とかはんないでくださいよ」

さらに小馬鹿にする

「うるせぇな傷害と恐喝だよ」

少し低めの声で返事があった

気配と声で2人と確認

「なるほど、なるほど、じゃあ21日は居ますね、その後、拘置、ムショコースだ」

「何が言いてぇんだ」

「俺がここから出しましょうか?」

「なめんてんのか、そんなこと出来るわきゃねぇだろ」

「俺警察官なんすよ、県警本部の」

はぁ?と言い2人の男が六風の口車にのってきた


六風はここから出すための作戦をトーンを下げた声で話始める

二人の男達は半信半疑の様に聞くが身体は壁にピッタリとくっつけ六風の言葉に吸い寄せられていた。

話を聞き終えた2人はとりあえず頷いていた。


その後について、自分は女の癖に威張っている安倍晴龍を事故に見せかけ殺すことを話した

「お二人を信用したから話たんっす、だから俺の事も信用してください」

得意の薄っぺらい話し方で信用を押し売りする

そしてここから出す代わりの交換条件を出す

交換条件は土御門を追い込み何処かに監禁もしくは入院でも良いので足を止めることだった。

「どうすか?のりますか?辞めますか?」

六風はやらしい口調で男達へ言うと

「その後、俺らがあんたを売るか脅すかするかも知えれねーぞ」

と言葉が返ってきた

自分の手の内やハッタリを話してくる時は相手が自分の話に乗る時なのを六風は知っている

だから情に揺さぶりをかけて自分側に持ってくる。

「まぁそんときはそん時っす、長年刑事やってますから話した感じで信用しちゃったんすよね」

声をワントーン低くして六風が返事をするとガハハと笑い声がしてこの話に乗る事になった。

「ただ相手の足止めする男はかなりの大男っすからね」

「大丈夫すよ、アニキは元格闘家ですからその辺のやつには負けねぇっす」

舎弟と思われる男から自信に満ち溢れた口調で言われると六風は口を押さえて笑いを堪えた。


-山朱荘-


純は部屋で動画編集をしている。

警察に押収された動画を別に移していたので事件の概要などを作っている。

「もう少しこの村の情報が欲しいな」

頭をかきながらパソコンをいじる


外では湖の畔にある水辺公園で保と愛が話をしている。

愛は保の肩にもたれ保はガチガチに緊張していた。

愛は夜の湖をながめながらカメラマン2人の事件を話す

幽霊の話はオカルトで嘘か本当か解らない2人だ

警察が撤収した不自然さや安倍晴龍のオカルトを真実味含ませていた

「ねぇ何かあったら守ってくれる?」

甘えた声で目を潤ませる

月明かりに照らされる愛の顔に凝視できず月を見る

「あ、愛ちゃんには純がいるでしょ」

力を振り絞り保が答える

「さっきも聞いたでしょ、あいつは配信の事しか頭にないんだよ、私の事見てないからさ」

「そ、それはね、僕も思ったけどさ」

「だから純はもういいかなぁ」

保が勢いで愛を見た

「本気だよ、そろそろ別れようかと思ってるし」

愛はそのまま純の不満を保へぶつけて話はじめた。

湖に月が綺麗に映っていた

保は愛に見とれながら黙って聞いていた

「明日朝イチでここを出よう」

愛の愚痴がひと息ついた頃、保が提案する

愛はお金等、手に入れる物を手に入れてから別れたいため撮影だけはしていきたいと返す。

確かに愛の言っていることもわかる

保は今回は危険だと告げるが、愛の「一通り形がついたら保と2人で最初から始めたい」と言う言葉で心が変わる

「愛を守るよ」そう言って手をぎゅっと握りしめて誓う。

そんな二人の影を部屋の窓から安倍晴龍が見ていた。

コンコンコン

「失礼します土御門です」

「どうぞ」

土御門が外の2人の事を報告しようと来たが窓辺に椅子を置いて座る安倍晴龍を見て流石ですと言わんばかりにニヤリと笑って隣へ立った。

「あの2人怖いとか言っていたのに平気で外出ましたね」

「信じる信じないは解らないけど自分達は大丈夫だと思ってるんでしょ」

少し呆れ顔になる。

「まぁ今の所、霊気は感じないし放っておきますか」

土御門も呆れ顔になった。


女性慣れしていない保が愛へ夢中になるのに時間はかからなかった。

肩に置かれた愛の頭と腕にくっつく胸に1人胸を高鳴らせている。

だからといって襲いかかる事は出来ない。

でも愛は欲しい


カクジツニホシイ


純の事を嫌がっていても、2人の付き合いは長い、情もあるだろうし、お金や名声が手に入れば愛はまた純の事を想うのではないのか?

恋の始まりはトキメキと共に闇にのまれていく。

嫉妬心 執着心 独占欲

ルックスだけで中身のない純より僕の方が愛を幸せに出来る

出来るのか?

出来るさ

デキル

自問自答しながら保の頭の中が愛に埋まっていく

愛の笑顔を見ていたい

愛の寝顔を見ていたい

愛が欲しい

愛と付き合たい

愛と共にいたい

愛と一緒に

愛と

愛と‥

愛‥‥

愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 

愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛 愛


保の頭の中が完全に愛への想いになった時

この事件に便乗して愛を手に入れる事を思いつく


それは一瞬で練られた


ジュンヲコロス 

スベテヲ ユウレイノシタコトニシテ

ジュンヲコロス

目をつむり寄りかかる愛は見えてなかった

完全に目がイッて月明かりに照らされる青白い保の不気味な顔が










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