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王室の霊媒師  作者: 鍛冶
安倍晴龍の霊案件
3/14

安倍晴龍の霊案件③純と愛と保

湖畔にある古い旅館 山朱荘(サンシュソウ)

は撤収の為 パトカーが続々と走り去っていく。

「なんでだよ、何も解決してないのに」

刑事六風は安倍晴龍を陰から睨み付けぼやく

「六風さん帰りますよ」

若い刑事が六風の肩をたたきパトカーへ誘う

六風は叩かれたその手をにぎり引き寄せる

「これでいいんか?」

目をギョロギョロとさせて睨み付ける

「知らないですよ、上が撤収って言ったんだから帰りますよ」

若い刑事は面倒くさそうに六風の手を払った。

「お前残れ、もう少し捜査するぞ」

振り払われた手をつかみ返す。

「嫌です、私は六風さんと違って免職も命も惜しいので」生意気な口調でまた手を払い苛立つように背をむける。

「お前今までの恩とかねぇのか!一緒に捜査してきたろっ」

引き止めるように叫ぶ

若い刑事から舌打ちが返ってくる

六風を残しパトカーへ乗りこむと他の刑事へ吐き捨てるように愚痴をこぼす。

六風は誰も残らない事で苛立ちを物にぶつけ街へと消えていった。


旅館二階の一室

3人の男女の元に晴龍と菅原がいる

事件当日の話を聞いているが警察の報告と同じ事をきく

この3人は動画チャンネルのメンバー

純と愛と言う恋人同士とマネージャーの(タモツ)である。

純と愛が全国の下火になりかけている観光地を巡り

その土地の歴史やグルメ等フリージャンルで紹介するチャンネル

菅原はすかさずスマートフォンで動画を流す


"純愛ストリート"軽快な音楽と共に始まる


ポップな作り方だが薄っぺらく観える

このチャンネルが人気なのは下火になりかけている観光地を良いことにその土地を小馬鹿にしてウケをとる事で視聴数をとる趣味の悪さがある。

亡くなった2人はカメラ担当だったそうだ

純は得意気に苦労話や製作秘話みたいのを話す

菅原は話を一生懸命聞いてメモにしていた。

晴龍は話を聞きながら紙を折っている。

「可愛い、紙人形?」

愛が甘えた声で晴龍の折る紙を差す。

「式神って言うの、なんかの時のお守りよ」

2つ人形(ヒトガタ)の紙を部屋の棚の上へ置いた。

「式神?オカルトじゃん」

半笑いで純が式神を見る

「今回の事件は封印された霊をあなた達が解放したから事件が起きたと私達は見ている、おふざけの代償が高くついたのよ」

少し苛立ち、突きつける様に純へ言葉を投げた

「なに代償って?お金取るの?払わねぇよ俺達被害者だし解放とかあいつらが勝手にやったことだろ」

仲間が死んだのに関係なさそうに話す純に菅原も苛立つ

「あんたらなんかからお金は取らないから安心しなさい、坊やは早く帰った方がいいわよ」

純の顔が少し不機嫌そうになるとすかさず

「あ、でもこの街出るまでに呪われるかもしれないから自己責任でお願いね、式神があっても私達は坊や達を守れる保証ないから」

と意地悪な眼で晴龍が言うと保と愛の顔が青くなった

「れ、霊とかお化けとか本当に居るんですか?」

保が少し震えて訪ねると、当たり前でしょと晴龍がニヤリとした。

少し沈黙ができるとそれを壊すように晴龍は自分達の部屋を教えた

「警察へ報告した以外の事思い出したら教えて」

そう言って部屋から出ていく

閉まったドアに耳を付け純は晴龍達の足音が遠くなるのを確認した

「ねぇ本当にお化けの仕業なの?」

少し怯えた様子で愛が純の腕を掴む

「居るわけねぇよ、あのババア脅かしてるだけだろ」

「でもあの送られてきた動画はおかしいよ」

強がる純に保が返した

「帰ろう」

愛が泣きそうな顔をするが純は目を輝かせ

「なにいってんだよ!この状況を配信したら稼げるだろ」

純は幽霊事件の回を作って事件を盛り上げる

被害者の生き残りとして動画を配信して閲覧数を上げる方向の話をする。

追悼も兼ねて配信すれば1ヶ月で莫大な金と名声が手に入る算段だ。

保が撮影して純と愛が悲しみと怒りを悪霊へ向ける企画だが、そこには仲間を失った悲しみや保、愛の気持ちなど何も考えていない

棚の上に置いてある式神を通じて晴龍達が聴いていた。

配信に取りつかれている事に呆れる菅原

ババアと言われたことに怒る晴龍がキーキーとわめいている。

そこに村長から村の伝説の話を聞いてきた土御門が戻ってきた。

不機嫌そうな晴龍の顔を見て苦笑いをする。

「ちょうど二人も着きましたよ」

大きな土御門の陰から男女が顔を出す。

「ご苦労様です」

素早く菅原は背筋を伸ばし身体を大きく曲げて挨拶をした。

ニコニコと綺麗な瞳で挨拶をする女性

「はじめまして、破魔師(ハマシ)弓削朱雀(ユゲスザク)宜しくね」

綺麗とも可愛いとも言える朱雀に鼻の下を伸ばす菅原

わかりやすいですねと丁寧に土御門がツッコミを入れる

その横にはスラッとしたナルシスト風の男が爽やかに握手をしてくる

呪縛師(ジュバクシ)芦屋白虎(アシヤ ビャッコ)だ、宜しくぅ」

少しチャラさも見えた

「皆さん○○師って付くんですね」少し驚きと尊敬の眼差しで皆を見る

「言い遅れたけど私は呪符師(ジュフシ)です」

手で自分を差しながら土御門が改めて菅原へ自己紹介した

少しお茶をしながら和む会話のあとに土御門が村の伝説と言われていた話をはじめる

伝説と言うよりは村の歴史

村長の家系はこの村の地主で江戸時代から続く宿場を営んでいる

そこに伝わる文献がある

時代が明治へと変わり始める頃、この国は激動していた

スタイルが変わるのは山合の田舎でも例外だはなかった


お上の指示でこの村も変わる

ある日突然、獄門場(ごくもんじょう)になった。


-獄門場-


処刑場の1つだが特に重罪人の処刑を行う所


湖のから流れる川の河原で首を落とし晒し刑

重罪人だから処刑は残酷だった

廃刀令の兼ね合いもあり首を落とす処刑具は

ノコギリ (なた) 斧 だったそうだ

斬首人は3名の村人が藩によって命を受けた

3人はとても優しい男達、猟師、木こり、大工

藩の命令とはいえ人を処刑する事を嫌がっていたが

時代が故の強制に渋々やらざる得ない状況だった。

気持ちも病みながら続けるもこの処刑方法があまりにも残酷と言うことで数年で廃止になり

湖のほとりにある洞窟内に慰霊碑が造られたそうだ


村長曰く今回の事件は処刑された罪人達の霊ではないかとの事だった。

土御門から聞く話に晴龍は疑問を抱いた。

悪霊になる者は怨みを持つ者

普通の霊とは違う

罪人、特に重罪人は自分のしたことに対しての結果として処刑をある程度受け入れる為、悪霊として残る事が少ない、余程の冤罪で処刑されて残ったとしても人を殺せる程の力は持たない。

それは土御門も同じ事を感じていたが村長に聞いても文献以外の事は解らないそうだ。


話を聞いた後に朱雀と芦屋が動画を観る

「この影‥‥」

芦屋がポケットから細い麻縄を出してテーブルに円を作った

円の中心部にスマートフォンを置き護符を重ねるとズズ‥ズズっと黒い影が少し出てきた

麻縄の中に冷たい空気が漂うと

その影は大きな筋肉シルエットで手にはノコギリらしき物も見えた

5人は確信した

この悪霊は処刑人の方だと

「状況を整理するため明日朝、事件現場と獄門場跡地に行くよ」

晴龍がシュッと仕切ると4人が頷き各自の部屋へと戻る。

菅原が部屋に入ろうとすると動画配信の愛が甘えた顔でマネージャー保の腕を抱くようにして階段の方へ歩いて行くのを見た

保の顔がだらしなく笑っている

節操が無いなと思う気持ちと羨ましい思いが菅原の心でブランコの様に揺れていた。


同じ頃

朱河村の中心部にある小さな繁華街

駅から続く石畳で造られた商店街は情緒ある道なりで観光客が来れば喜びそうだ

商店街の奥に朱河警察署がある

お洒落な雰囲気を台無しにする趣味の悪い銀色のスーツが見える

六風が威嚇するように目をギョロギョロさせてポケットに手を入れながら入っていった。



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