安倍晴龍の霊案件⑬門獄師
-洞窟前-
土御門、朱雀、芦屋が湖の森の方を見て「来た」
と声を揃えた。
「これは手に負えない位の"化物"だよ」
芦屋が生唾を飲む
「ちょっと行ってきます」
土御門は2人に入り口を任せると伝え歩きだす
「待って」
朱雀は1人では危険だからつい行くと追いかける
芦屋が状況を晴龍に話して3人で行くことを提案する。
霊圧が強すぎるので少し離れていた方が時間も稼げる
中流クラスの霊なら晴龍の邪魔しても詩羽もいるので何とかなるだろうと言うことで話がついた。
土御門が式神をだす
真っ白なウサギ
これを出したときの土御門の顔はいつも超笑顔
デレデレとしながら今の話を伝えるように晴龍のもとへと行かせる
朱雀と芦屋も顔が萌えていた
式神のウサギは速い
洞窟内を飛び走る。
祠の前に着いた晴龍達と同じ位に着く
「土御門の式神」
晴龍はしゃがみ、ウサギから状況を聞いて作戦を変えると
詩羽と菅原へ伝えた。
詩羽はウサギを可愛いと抱きながらOKと親指を立てる
菅原は伝子を端に動かせ、焦りながらも呪符を沢山出して祓う準備をした。
-湖の畔-
化物の大きな身体から振り落とされたノコギリは車の屋根に刺さっていた
腰を抜かしたまま六風はその場を離れる
化物は刺さったノコギリを動かすと鈍いゴリゴリ音が響き始める
その姿と音が六風に恐怖を焼き付けていく
逃げたいのに視覚と聴覚がそれを許さない
さらに化物の後からマサカリと斧を持った黒い影が歩いてくる
マサカリと斧が引きずられてゴリゴリゴリと地面を響かせ
ノコギリの車を切断していく音は黒板を鳴らす嫌なキィキィーと言う高い音が頭をおかしくさせていく
腰を抜かし舌をだしてヨダレや小便を垂れ流す六風は廃人になった。
車は切断され化物は改めて六風へと向かう
まるで六風を分けるかの様に残り2体の化物も横に並んだ
振りかぶる3体の化物
エヘヘエヘヘと笑う六風
そこに3本の破魔矢が飛んでくる
ザクザクっと3体の背中に破魔矢が刺さると痺れた様に化物達が痙攣をする。
「今よ」朱雀が叫ぶと呪符で巻いたしめ縄を芦屋が飛ばす。
霊力で飛ばされた しめ縄はグルグルっと3体に巻き付くと化物達は倒れ叫びだす
ウォーウォーと脳を揺らすほどの低く大きな声
意識が飛びそうなのを堪える朱雀と芦屋
土御門は走り化物の頭へ呪符を貼る
ウォーウォーウォーさらに声が大きくなる
土御門は急いで2人のもとへ走り印を組む
3人が呪を唱え始める
ウォーとこれまでで一番大きな声がすると大地は揺れ、木々の鳥達が一斉に飛び出した。
ブホッと耳や鼻、口から血を流す
化物の声は衝撃波になり景色を歪ませる
目の前にいる廃人になった六風は化物の声の衝撃でビビビと全身の皮膚が波打つと頭部の皮膚がベロっと剥がれ、ゴキンと骨を割る音とともに腕が飛んだ
今でこの霊力
万が一でも化物が六風を喰らえば怪獣クラスになるのが解った
-洞窟内-
晴龍は印を結び呪を唱える
形式的な呪を唱え終えると、まるで誰かと話しているかのようにも見えた
「それでは開門願います」
微笑みながら壁に伝えると岩壁は光りだし
ゆっくりと岩がずれはじめた。
ズズズズズズと岩を引きずる音とともに中にもう一つ立派な門が現れる。
初めて見る菅原は観いってしまう
「お兄さん!来るよ!構えて」
詩羽の声で我に帰る
「この門は今生とあの世を繋ぐ門だから開門させたくない霊達が一斉に邪魔しに来るからね」
印を組みながら菅原へ説明をしてくれた
"門獄師"
世界に数人しかいないこの世とあの世を繋ぐ者
閻魔大王補佐 小野篁と契約を結び指定した霊達をあの世へと引きずり込む最強霊能力者
悪霊達はあの世で裁きを受けたくないためにこの門が開くときにあがき始める
湖の水面が揺れ始める
穏やかな揺れから勢いをつけて嵐のように波を立てそこから何百もの手が現れる
街中では炎上している道や鏡の中から半透明な霊が空へと浮き出し事故処理の邪魔をする。
浮遊する悪霊は化物3体の方へ加勢に向かい
またある霊は晴龍達の方へと邪魔をしに向かう
洞窟内で暴れだす霊達
岩は重い音と地響きをあげて崩れてくる
落下してくる岩を猫ならではの避けながらで霊を祓う詩羽
菅原は勢いよく走りだして呪符をペタペタと霊へ貼って行く
まるで居合の剣士の様に一閃して呪を唱えると一気に霊達がスパスパっと消えていく
「お兄さんやるじゃん」
詩羽は感動して万勉な笑みで誉めたたえる
詩羽の笑顔の可愛さに鼻の下が伸びた
赤と金で重厚のある立派な門はゆっくりと開き始めた。
-湖の畔-
化物の衝撃が強くなり3人の皮膚が剥がれ始める
それでも呪を唱え続けて化物達を祓い続ける
化物達の身体から黒い煙が少しずつ湧き出てくる
ダメージを与えてる証拠だった
化物を加勢する無数の手が集まり3人へと絡みつき、殴る手と2チームになって攻撃をしてきた
絡む手達が腕を引っ張りだす
朱雀と芦屋はかなり耐えたが印を外れてしまう。
「しまった…」2人が苦痛の表情で地面に叩きつけられた
呪が弱まった所へ違う霊の手達が化物の破魔矢を外し、しめ縄を解く
破魔矢やしめ縄にも呪がかかって居るので外した霊達はその場で煙の様に消えていった。
もがく3体の化物は怒りが増して増力を図る為、目の前の六風の亡骸の首、胴体、腰下を握る
雑巾の様に捻られるとブチッと鈍い音がして六風の身体が千切れる。
ウォーウォーウォーと高らかに声を上げて六風の身体を口から入れて丸のみをする。
「や、ヤバイ」
押さえつけられ血まみれの芦屋が焦る
朱雀と芦屋の顔を観る土御門
助けるより自分が行った方が時間を稼げると判断した。
「後は頼みますね」
印を解いて呪符を拳に巻いて化物へ走る
「ダメ!」朱雀も叫ぶが無数の手に押さえつけられていて動けない
一番近くの化物へ拳を放つ
ドン!と重い音を立てて転がる化物
殴られた場所から黒い影が煙の様に出る
無数の手が土御門を目指す
勢いよく拳を連打して祓うがキリがなく後少しなのに化物に届かない
土御門を囲む3体の化物
「土御門さんっ!」
危険だと叫ぶがノコギリ、斧、マサカリが降り上がったのが見えた。
手に邪魔されて避けるのも厳しい状況の中
稲妻が朱雀と芦屋の横を走った
光が走った後に音がビュッと抜けていく
土御門の顔が少し安堵する
光の大きな手が3体の化物を掴んでいる
ウォーウォーと化物が叫ぶが全て掌の中でその声の衝撃波は消される
「間に合ったー」朱雀と芦屋がハモる
その後沢山の光の矢が飛んでくる
暗い畔が明るくなると何百もの一斉に手が消えた
光の手の中でもがく化物はそのまま洞窟の中へと吸い込まる
洞窟の中では汗だくになって座る菅原と詩羽が晴龍を見ている
扉の横で2本の指を立てて呪を唱える晴龍
光の手が戻ってくる、伝子は立ち上がり光の方を向いている
菅原が伝子を押さえるが伝子の身体は宙を舞う
悪霊と一緒ではダメだと菅原は必死になる
化物達が握られたまま門の中へと吸い込まれて行く
ノコギリを握る手に伝子が手を伸ばし触れる
菅原は伝子の足を持つ
菅原のイタコ能力がずば抜けているのが解った瞬間だった
伝子の想いと記憶が菅原の力によって化物へ伝えられる。
これには晴龍も驚く
少しだけ時間がゆっくりと流れた
包帯だらけの伝子が螢の様に優しく緑と黄色に光る
異形と化した顔が人の顔に変わった
一太郎だ
優しい目で頷く一太郎は少し泣いていた。
伝子も包帯だらけで顔は見えないが涙を流しているのは何故か解った。
化物達が吸い込まれ消えると重厚な門が閉まる
「閉門!」
指を立てたまま横一閃に腕を振ると岩戸が締まり元の岩肌へと戻った。
「お疲れ様、終わったわ」
晴龍が優しく微笑む
菅原は晴龍から後光が差した気がした。
湖は静かに月を映し、湖畔は穏やかな空気を取り戻す。
大の字に転がる3人は星空を観ていた。
生きてて良かったと芦屋が安堵すると
早く本庁に戻り恵日に傷を治して貰いたい、傷痕残したくないとぼやく朱雀
ウサギに囲まれて寝たいと土御門は思っていた。
街も戻り始める
警察署の電気は復旧して機能を取り戻し署長が喜ぶ
大通りの火災は鎮火して消防車両や救急車両が入り大活躍している。
夜が明けると村はいつものように動いていた。
-山朱荘-
純と愛が命からがら逃げて、結局旅館へ戻って来ていた。
駅方面は事故火災で通行出来ず、土地勘も少ないので旅館へ逃げ込んできたようだ。
昼過ぎに起きた晴龍達は村長から豪勢なご飯をご馳走して貰っていた。
包帯やら傷バンド姿で喜ぶ5人
肉、魚、野菜、フルーツでご満悦
詩羽は釣り立て鮎にご満悦
楽しい時間が過ぎた。
村長の隣には伝子が座って居る
伝子を祠へ戻す予定だったが村長がご先祖様からのご縁と言う事で旅館で一緒に過ごしたいと言ってきた。
伝子も冷たい洞窟より暖かい人達と一緒に居たいとのこと。
晴龍はそこは管轄外だから好きにしてと見ないフリをしてくれた。
沢山のお土産を積んで帰る準備をしていると
純と愛が晴龍達の元へ来て
頭を深々下げて、言うことを聞かなかった事を謝罪してくる。
同時に夜中の保の件を話て、助けて欲しいと必死になっている
純が頭を下げる時は自分の為の時だけなので村長も晴龍達も呆れていた。
本当は今回で完結予定だったのですが長くなってしまったので次回完結します。
読んでくれた方々ありがとうございます。




