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王室の霊媒師  作者: 鍛冶
安倍晴龍の霊案件
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門獄師 安倍晴龍の霊案件①菅原道影と吉備真備

王室直下の隠密中務省の1つ陰陽寮

この国には表に出ていない省庁がいくつかあり

その中の1つに青年菅原道景は配属された。

青年は思った

自分はエリートだと

しかし彼は今、目隠しをされ車に乗っている

一昔前の芸人のように

本当にエリートなのか?

青年は自分を疑った

青年の横には細身の男が座っている

高そうなスーツがダンディズムを醸し出している、そんな彼に運転手の女子がミラー越しに目で合図をした。


車は静かに止まりエンジンが切られると青年は男に腕を持たれ静かに外へと出されると肌寒さが青年を迎えた

そっと目隠しを外されたが辺りは暗く目隠しをされているのと変わらなく感じた

「ここは?」

青年は呟いたがもう人の気配はない

車が走る出す音だけ聞こえた。

「ちょっ ちょっとぉ」

車のライトが見えなくなり

走り去る音が聞こえなくなると闇だけが残された

虫の声や水の流れる自然音でもあれば良いのだがそれすらなければ置き去りにされた不安が青年を襲う

何も理解が出来ないから焦る

落ち着いてここに来るまでの事を整理しようとしたが何も見えない、何も聞こえない状況では冷静になれなかった

にじむ汗に冷たい空気が風に乗ると

暗闇が青年の背筋から頭にむかって流れた

焦りながらもポケットからスマートフォンを出す

圏外のマークが青年の希望を消した

「まじか」

そう呟く青年の後ろに一緒に画面を覗く影を感じる

青年は驚きの顔で後ろを見た

スマートフォンの画面で照らされた背後には誰も居なかった

しかし青年は確かに気配を感じた。

ポケットに手をいれ拳を丸める

スマートフォンのライト機能を使い周りを照らす

暗闇が景色を隠していてライト機能が意味を持たない

青年はカメラの動画モードに変えて足元照らした

動画モードはライトより暗闇が見えやすい

手を伸ばし、少しずつ歩き始めた

見えない聞こえない恐怖が歩みをゆっくりにさせる

来たであろう方向へカメラを向けながら歩く

自分の足音が聞こえるだけで少し安心できた

静かな闇を歩いて行く

歌を歌い気をまぎらわせ少しずつ少しずつ

カメラづたいに歩くのが慣れてきた頃、画面に枠線が現れた

???

不思議そうに画面を覗く

枠線は右へ左へ動き出す

「この四角って……」

青年はカメラの枠線の意味を思い出した。

顔認識の枠線

画面から目をそらし前を見るが何もみえない

ピリピリと冷たい空気が足元に絡み付いてきた

「うっあっわっ」

足を祓うように動かすとバランスを崩し腰を落として倒れた

自分の前にカメラを向けると枠線は無かった

フーと溜め息にもにた空気をはく

するとゆっくりジワジワと画面下から枠線が出てきた

「え?」

倒れた足元を映すスマートフォンの画面の隅からゆっくりとゆっくりと何かを映しながら上がってくる

同時に強く足を捕まれてることにも気付く

「やめっやっあっ」

言葉にまとまりがつかない声で抵抗しようとしたが足は動かなかった

冷たい圧を感じカメラを見ると

長いボサボサの髪と白目を剥いた者が笑ながら映っていた

恐怖で言葉を失いながらも握っていた紙を画面に重ねたふぉぶぉぶおぉ

叫び声なのか低くも気味の悪い音が響く

青年は指を立て術を唱えてその指をスマートフォンへ向けると"者"は煙を散らすように消えた。

腰を抜かした状態で動けなくなっていた。

「やるねぇ」

スッと青年の顔の横に男の顔が現れた。

ひゃっと小さく叫ぶと青年は気を失った。



ぼやけた視界に暖かい光を見つける

少し焦点が定まるとハッと我に返り青年は起き上がった

「おはようございます」

横からする声に顔を向けると年の頃なら30代位の綺麗な白衣を纏った女を見た

現状が掴めず周りを見渡すとカーテンで仕切られたベッドと事務的な棚やロッカー、暖色系のライトで少しエロめな医務室だ

「はじめまして、薬師(くすし)犬神恵日(イヌガミエニチ)です」

色気あるその佇まいに照れながら自己紹介を返す菅原青年

「薬師?薬剤師さんですか?」

「医者の昔の呼び名よ」ふふっと笑ながら返す言葉に青年は鼻の下を伸ばした。

少し他愛の無い話をはさんだ

男は話すきっかけを作るためどうでもいい質問をする動物である。

少し頭の中が落ち着いた菅原はどうして自分がここにいるのかをたずねた。

昨日の目隠しまでは憶えていたが以降の状況が掴めない

犬神はニコニコしながら研修の始まりだと教えてくれた

菅原は昨日の()()が研修ならこの先を思うと怖くなり、不安を口に出しそうになった

その時「おはよう」とテンション高めの男が入ってきた

「おー、元気そうですね、良かった」

と握手を求めて菅原の前に立った

高そうなスーツにバランスの取れた顔とスタイルのいけてるオジサン

つられる様に握手をする菅原は少し警戒している。

男は握手をしたまま笑顔で

「宜しくお願い致します。中務省(ナカツカサショウ) 陰陽寮 宮司 吉備真備(キビノマキビ)です。」

菅原はハッとめを大きくして丁寧に握手をほどいて背筋を伸ばし自己紹介をした

角度90度、宜しくお願い致しますと最敬礼をした

目の前の男は自分の直属の上司で配属先のトップだ。

その姿を見て吉備真備は目を潤ませた

「他の連中にも教えてやりたい」

吉備真備の心の声が口から漏れたとき犬神は笑って机を叩いていた

「おはようございます」看護師らしき若い女性が入ってくると吉備真備は務めの邪魔になってしまうと言って菅原と医務室を出る。

吉備真備は菅原を案内しながら説明を始めた。

隠密中務省は宮殿敷地内に存在している。

隠密の為、建物内での各省との顔合わせは原則禁止である

建物は8階建ての6階にありフロアはかなり広い

各階にエレベーターと階段があり駐車場直結

出入りは専用ゲートからのみだ

各階に医務室、食堂や風呂場、休憩室まであるので他の階へ行くことは特例を除き、ないのだ

複雑そうで凄く単純だった

暖かい雰囲気で案内をしてくれる吉備真備に警戒心は無くなっていた。

廊下の正面に大きな木の看板が見え

陰陽寮と書いてある

古木に筆字の看板を吉備真備は自慢気に菅原へ紹介していた。

菅原は和食料理屋の看板みたいだと思ったが口にはしなかった。

看板よりも菅原は扉が気になった

高そうな重厚感なのに静かに空いて静かに閉まる

押し引きの軽さにも感動していた

部屋に入ると菅原は周りをを見渡す

広い室内にモダンなインテリア

中央には机が寄せて並べてある

奥に大きく立派な机がありここが吉備真備のデスクだと解った

端の机から「おはようございます」

と可愛らしい女子が駆け寄ってきた

菅原道景は本日2度目、鼻の下が伸びる

だらしない顔で自己紹介をする

この時吉備真備の目が鋭くなったことを菅原は気付かない

吉備由利(キビノユリ)です、事務兼宮司運転手やってます」

そう言って小さな顔が菅原の前に来ると顔を赤らめてそっと吉備真備の方を向くと絵に描いた鬼の形相がそこにあった

赤かった顔は直ぐに血の気を引かせ青に変えた

「ゆ、由利さんは…」

と菅原が呟く様にたずねると、由利は吉備真備の腕を抱きながら娘ですと応えた

吉備真備の顔は先の菅原と変わらないだらしない顔になっていた

少し緩めの時間が過ぎると業務内容が伝えられた

基本は宮司である吉備真備が皇室で外交や先見を行う()()

その後のスケジュール管理や現地調査などを事務官が行う仕組みになっている

外交は各国の宗教が絡むのでデリケートな話らしいが

ここは吉備真備が骨を折っている。

事務官は約30名他の部屋で動いている


吉備真備の部屋は幹部のみが働ける場所

つまりは菅原道景は幹部候補である。

吉備真備が手の回らない案件を代行する役割で"力"の有るものだけが選ばれる。


神官の大学院を出て、山奥の施設で専門修行を2年

色々な思い出が頭を走った

キャリア組なんだ自分は頑張ったんだと菅原は拳2つ握りしめ口元を緩めた。

机に案内され初めての専用デスクに心を踊らせる

注いだコーヒーをすする姿からもにじみ出ていた

見ていた由利が少し微笑みながら

「他の方達もそろそろ来ると思います」

と教えると

どんな人達が来るのか、挨拶はどうするかなどで緊張感が出てきた

「あまりかしこまんない方が良いですよ、言い方アレですけど普通じゃないので」

菅原の緊張感が不安感に変わった。

するとスッと扉が開くと落ち着いた声で挨拶をしながら女が入ってきた

黒髪で綺麗な顔立ちが威圧感を放つ

菅原は席を立ち上がり素早く女へ挨拶をする

女は笑顔になって首から提げている身分証を見せながら

「よろしく坊や、門獄師(モンゴクシ)阿倍晴龍(アベノハルカ)よ」

と伝えた

「アベノハルカ?門獄師?」

初めて聞く職名に戸惑う菅原を見た晴龍がからかうように「あー今、大阪の高層ビルみたいだって思ったでしょう」と指を差してきたが、菅原はそちらはあまり気にしてなかった。

門獄師について興味を持ち晴龍に聞くが

スペシャルな職人とだけと返ってきた。


「他のやつは?」

吉備真備がパソコンに目を通しながら晴龍へ聞くと

「3人共現地直行してるから夕方には着くんじゃない?」と菅原には解らない会話がこの後も続いていた。

「坊や運転できる?」少しすると晴龍が菅原へ話しかけてきた

「はい、出来ます」

「じゃ、行こうか」

話の流れが解らないまま連れ出されそのまま駐車場へと着いた

「どちらまで?」シートベルトを締めながら聞くと晴龍は後ろの席で足を組み

「東北」とアバウトな答えが返ってきた

へ?とした顔が気に入らなかったのか運転席に蹴りが入る

「は、はいっ」急に蹴られた菅原は焦って車を走り出した

「ちゃんと落ち着いて運転するっ」

「すみません」

と似たようなやり取りが続きながら車は高速道路へと向かっていった。


そんな菅原を心配する由利

「大丈夫ですかね菅原さん」

「そうだね、死なないといいね」

と吉備真備はコーヒーをすすった















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