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不人気職業クランの無自覚成り上がり  作者: 十六夜直哉
第一章 親愛と愛情を込めた人形への願い
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5 ノワール

 冒険者ギルドを後にした二人は明日の初依頼に備えて買い物やお互いの出来ることを話そうと思い遅めの昼食を取るため露店を回っていた。


「そういえばティアちゃんの固有スキルは冒険者カードを作る前から使えてたみたいだけどどんな感じでノワールと喋れるの?」


「人前ではからかわれたりするので外では喋らないんですけど、普段は人と喋る様な感じでお話ししてくれます」


 ティアはだいぶダルクと喋るのに慣れたのか、前みたいに緊張で詰まったりしないで喋れている。ノワールを昔から大事にしていたためその思いに応じて固有スキルの付喪神が発現してノワールと喋れる様になったとダルクは推測している。


「俺もノワールと喋る事が出来たら楽しいんだろうけどな」


 ダルクはもし喋れたらどんな感じになるのかを想像しながらティアの抱きしめている黒い竜の人形のノワールの頭を撫でる。


『男が俺に触るんじゃねぇ』


「そういうこというなよ〜」


「ノワール、そんな汚い言葉使ったらめっ!」


 ダルクに対して汚い口調でノワールが喋るが、すぐさまその口調にティアが注意をする。


「「『・・・え?』」」


 二人と一体は露店が並ぶ街の真ん中で止まり、先ほどの会話の違和感に気づく。ティアはノワールの口調に対して注意をしているのは聞こえてるからわかる。しかしダルクもノワールの言葉に対して反応をしていた。


『お前、俺の声聞こえているのか?』


 ノワールは先ほどの会話を思い出して、ダルクに自信の声が聞こえているかの確認をする。


「この少し低い声のことなら聞こえているんだけど、、、」


「え?」


 ダルクとティアは驚いた様子でお互いに顔を見合わせたあとに、ノワールの方に顔を向けて説明を求めた。


『いや、俺の方を見ても俺だってわかんねえよ』


「確か付喪神のスキルって()()にしてきた人形に魂が宿るって書いてあったから、大事にして貰った主にだけ聞こえるんじゃないのか?」


「私もそう思っていました」


『おそらくだけど俺自身とティアとの間で話すための経路が出来て話せてた訳ではなく、俺自身に自我が芽生えて魂が宿ったから話せるようになったんじゃないか?』


 ノワールが自分の見解を二人に説明をする。付喪神の説明では[大事にしてきた人形には魂が宿り心を通わせ]と書いてあったため、人形と大事にした所有者同士が電話の様な形で話すための経路を繋いで話せていた。しかしスキルの説明上はあくまでも、人形に魂が宿っているのでそもそも経路が存在せず人形だけで完結している。そのためダルクとノワールが喋る事が出来たのではないかとノワールは考えていた。


「それだと他の人にも聞こえるんじゃないか?」


「・・・」


 ティアも同じことを思っていたのか少し暗い顔で黙っている。もし他の人にもノワールの声が聞こえているならティアが今までからかわれる事は無かった。


『ダルクにも聞こえる様になったのは、パーティ登録をしたからかもな?』


 直近で変わった事は先ほどの冒険者ギルドでダルクとティアがパーティ登録を行った事しか考えられない。


『お互いの冒険者カードを触れさせてパーティ登録を行ったから付喪神の効力がダルクの方にも移った可能性がある。あの受付嬢の話を聞いていた感じだと、冒険者カードは自身の魔力を媒体に作られているっぽいから二人の魔力が共鳴したってのが一番の有力候補だな』


 どんな人間にも多少は魔力が備わっている。<職業選定>で付与術師や魔術師などを選ばれた人は魔力が一般人よりも多いため適性があると判断されて魔力を扱う職業に候補が出る。


「まあ、俺もノワールと喋れる様になったなら連携とかも取りやすいし良かったよ」


「私も嬉しいです!!」


 ティアはダルクとノワールが話せるのが心底嬉しいのかその場でぴょんぴょんと跳ねている。


 ティアにとって今までで友達はノワールしかいなかったし信頼できる人もお婆さんしか居なかった。そのため一年前から知っていたダルクと友達のノワールが喋るのはなによりも嬉しい事だろう。


「てかノワールは自分自身で動く事は出来ないのか?」


『元々備わっている魔力を消費したら動く事は出来るが、基本的にはティアの魔力を貰わなければ動けない』


「お母さんとお父さんも人形師だったんですけど、細かな魔力の糸を人形(パペット)に繋げて魔力を流して戦うのが人形師って昔聞きました」


『ティアのためにも説明するけど、人形(パペット)は作られる時に作り手の人形師が魔法陣を人形(パペット)に刻みこんで、それを人形師の魔力を使い魔法陣に書かれた魔法を使用できる』


「ノワールは何ができるの?」


『俺を使った人形師は天才だったから、使い手の人形師の熟練度に応じて魔法陣に書かれた魔法の使用数が増える仕組みになっている。今のティアの熟練度だと火を吹くのと風を起こすの二つしかできない。状況によって変わるけど俺に刻み込まれた魔法陣は全部で十個あるけど、残りの魔法陣は全て使った人形師によって鍵がかけられている』


 人形(パペット)には人形師の思いによって刻み込む魔法陣が変わる。例えば魔物を倒したいと思う人形師は攻撃系統の魔法陣を刻み、仲間を癒したいと願う人形師は回復系統の魔法陣を刻むと言ったように作る人形師によって人形の性能が変わる。


「ドラゴンに適した魔法だな」


「なら私が強くなればなるほど、ノワールも強くなるって事だね!」


『頑張れよ』


 ティアは心底嬉しそうにノワールを抱きしめる。ノワールはそんなティアを子供を見るような暖かい目で見ていた。


「あとはお互いのスキルの確認とおさらいとかもしないとね。ティアちゃんのスキルは何があったっけ?」


「私の持っているスキルは、メインスキルは人形を操るコンダクターと人形などを収納する空間収納(インベントリ)の二つですね。あとは固有スキルの付喪神だけです」


「俺の持っているスキルは、メインスキルは敵の視線を釘づけにするヒットディレクションと固有スキルの護っているものによって防御が上がる背水の陣だけだね」


『そして俺の火を吹く魔法陣と風邪を起こす魔法陣の二つだな』


「正直俺の固有スキルの背水の陣はまだ使った事がないから効力がどんなものかわかっていない。だから基本的にはティアちゃんとノワールの二人分しか防御が上がらないからあまり期待はしない方がいいと思う」


 ダルクの固有スキル[背水の陣]は護る者に応じで防御力が上がるが現状ではティアとノワールの二人分しか上がらないため誤差程度だとダルクは思っている。


「基本的な戦い方は俺がヒットスキャンなどで敵の視線を釘付けにして、その隙にティアちゃんがノワールに魔力を供給して敵を倒すやり方が無難かもね」


「私はそれで大丈夫です!」


『俺はティアに怪我が無ければなんでもいい。ティアのためにも戦いはするけどお前は絶対にティアに怪我一つさせずに護れよ』


「言われなくてもそのつもりだ。俺に攻撃系のスキルがないから攻撃はティアちゃんに頼り切りでごめんね」


「私達はパーティなんですからそんなの気にしたらダメですよ!ノワールも戦っていたら怪我ぐらいするんだから無茶な事言わないの!」


「ありがと。とりあえずある程度買い物も済んだし今日は明日に備えて解散しようか」


「わかりました」


「お婆さんの家まで送って行くよ」


「そんな申し訳ないです」


 ティアは申し訳なさそうに手を振って断ろうとするがダルクは断固として譲る気はなく、そのままティアを家まで送って行った。

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