4 冒険者ギルドの依頼
「まず依頼には三種類あります。討伐依頼・採取依頼・救助依頼の三つがあり、それぞれによって冒険者ランクを上げる貢献度が違います。まず一つ目の討伐依頼は特定の魔物を倒し、討伐した証として魔物の一部の部位をギルドに預けると討伐依頼が完了します。一番手っ取り早く貢献度を上げるのなら討伐依頼が一番早いです」
アンリが冒険者を相手にする時用の仕事モードになって説明をする。
討伐依頼はあらかじめ戦う魔物がわかっているため事前準備を行う事ができる。また様々な魔物と戦うので実践経験を多く積む事ができ、戦闘知識や熟練度を多く蓄積出来るので一番人気の依頼である。
「二つ目の採取依頼は、依頼主の欲している素材を採取してギルドに預けると採取依頼が完了します。採取依頼は様々で鉱石や魔物の素材などもあり、素材によっては一定の地域にしか無い物もあるので討伐依頼と同様の貢献度になります」
採取依頼も討伐依頼と同様に、あらかじめ場所やその素材の周辺の出現する魔物などが事前準備することができる。しかし素材によって素材を守護する魔物や獣が存在するため討伐依頼と同じぐらい危険度がある。
「最後の救助依頼は、貴族や商人から子供や荷物を運んでいる小隊が帰って来てないなどから救助依頼を指名などで頼まれる事が多い依頼です。救助依頼は一番依頼を受ける人が少なく、依頼が達成された場合のリスクとリターンが釣り合わないためあまり依頼を受ける方が居ません」
救助依頼は他の依頼とは比べ物にならないほど難易度が高いため、救助依頼をまともに達成できる者が少ない。
「でも救助依頼は時間が経てば経つほど、依頼の難易度が高くなるんじゃ無いのか?」
「それも救助依頼を冒険者がやりたがらない理由の一つです。救助依頼を受けた冒険者が目的地に向かう頃には大抵救助依頼の対象が亡くなっているから、誰もやりたがらない理由の一つです」
「それなら、ギルド側から報酬を増やしたりしたら依頼を受ける冒険者が増えるんじゃないか?」
「一応救助依頼を達成した人にはギルド側から別報酬をお渡ししているんですけど、それでもリスクとリターンが釣り合わないため受ける人が少ないんです」
冒険者ギルドとしては救助依頼も受けて欲しいと考えて別報酬を用意してはいるが、救助者を見つけて保護をして街まで戻る際の労力が討伐依頼や採取依頼とは違い、疲労も溜まり魔物が襲ってきた場合は救助者を守って戦うため常に気を張らなければいけないのを冒険者ギルドは知っているため強く救助依頼を勧める事ができない。
「なるほど。ちなみにティアちゃんはやってみたい依頼は何かある?」
「私は、救助、、依頼、、、を、受けた、、い、です」
ずっと黙ってアンリの説明を聞いていたティアにダリルが声をかけると、少し悩んだ様子で考えて答える。
「どうして?」
「私の時は、だれ、、も、、、これな、かっ、、た、から」
ダルクは驚いた表情で薬屋のお婆さんの話を思い出した。ティアが自分と同じく九年前に魔物によって村が襲撃され、ティアの村と村人は全滅してしまったためティアが薬屋のお婆さんの元に来ることになったことを。
「えーと、救助依頼を受けようとしてくれるのは嬉しいんだけどC級からしか受けることが出来ないからごめんね」
救助依頼は他の依頼に比べて遥かに難易度が高いため、冒険者としての経験や知識がないと救助者も不安になる。そのためC級からは一人前と言われているC級から受けれる様になっている。
「冒険者ランクもS級からE級まであるけど、E級の依頼はほとんど初心者用クエストしかないから安心してね」
「例えばどんなのがあるんだ?」
「討伐依頼ならスライムやゴブリンなどがあって、採取依頼なら薬草や解毒草などがあるわね。最初は採取依頼を受けてから討伐依頼をやった方がオススメかな」
「なら最初は採取依頼を受けようかな。それでも良い?」
ダルクがティアに依頼の了承を聞くとティアは小さくうなづいた後に黒いドラゴンのノワールに顔を埋めた。
「それと喋る異形の魔物に出会った場合は絶対に逃げてね?」
「異形の魔物ですか?」
「そうよ。過去に何種類か討伐されているけれど、異形の魔物は他の魔物とは違って知能が高く喋る事ができるから魔物を統率して村を襲ったりするわ。しかも異形の魔物は呪禁と呼ばれている魔物専用のスキルを持っている可能性があるから出会った場合は絶対に逃げて」
「喋る異形の魔物、、、」
ダルクは九年前に村が襲撃された時に自分と妹の前に立ちはだかった喋るオークを思い出した。
「異形の魔物は強すぎるため、A級の冒険者が複数人で戦って倒せる魔物なのよ。しかも魔物の呪禁によっては複数人にでも勝てない場合があるから戦わずにすぐ逃げて」
あの時の喋るオークも異形の魔物だとするならば、ダルク達を助けた大楯の冒険者は少なくともA級の実力を持っている事がわかる。
「もしやむを得ず戦闘になってしまったら?」
「その時は冒険者カードに書かれているコールって文字に触れれば冒険者ギルドに救難信号を送れます。コールは洞窟内などでは使えなませんが、平原などで使うと冒険者ギルドに居る上位ランクの冒険者を救難信号のあった座標に転移魔法で飛ばして救援しに向かいます」
「そんな便利な魔法があるんだな」
「ある魔術師と捕まっている異端の職業の<刻印師>の合作で出来た物らしいです。しかし転移魔法で救援しに行く際に十分〜十五分かかります。そのためコールにはそれまでの防衛策として結界を張ってくれるので、簡単には割れないので結界を張って救援が来るまで耐えてください」
「わかった」
ダルクはこれまで説明された事を頭に入れて、ティアはノワールに埋もれながらもうなずく。
「それでは最後に私からもアドバイスがあります」
「アドバイス?」
「冒険者は常に死が付きまとう仕事です。だからこそ引き際を間違えずに危険だと感じたらすぐに逃げてください。逃げる事は恥ではなく勇気ある行動です。生きていれば何度だってやり直せます。だから絶対にどんな依頼でも油断せず準備を行い向かってください。これが先輩からのアドバイスです」
アンリはニコッと笑った後に真剣な表情でダルクとティアに話した。
「わかりました。絶対にどんな依頼でも油断ぜず準備万全に挑みます」
「よろしい!そしたら今日はそのまま依頼を受けるの?」
「今日は依頼を受けず明日受けます。ティアちゃんもそれで良い?」
「大丈夫です」
ダルクはティアに了承を得ると明日に備えての準備を行うため冒険者ギルドをあとにした。