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不人気職業クランの無自覚成り上がり  作者: 十六夜直哉
第一章 親愛と愛情を込めた人形への願い
6/12

3 パーティ

「そう言えばティアちゃんはその子と話が出来るんだっけ?」


 ダルクはティアの抱き締めている黒いドラゴンの人形に付いて聞く。先日ティアが男の子達にからかわれていた時に男の子達が人形と喋る事に関して馬鹿にされていたのを思い出す。


「はい」


「確か人形師は自分の使う人形に刻印を付けて魔力を流して戦うんだっけ?」


 一般的に魔力は全員所有しているが個人差がもちろんあり、僅かしか無い者もいれば莫大な魔力を持っている者もいる。魔力の有無によって<職業選定>の際に魔力を扱う職業になりやすい事が判明している。近接戦闘の職業はあまり魔力を宿しておらずその代わりに身体能力が高い者が多い。また魔力を多く持っている者が近接戦闘の職業に変更する者もいるが、その場合魔法を使うことも出来るが魔法には集中力はもちろん、詠唱や術式が必要なため詠唱を行いながら近接戦闘をこなせる者がほとんどいない。


「はい。この、、子、は、、、ノワール、、って、、、い、いま、、、す」


「それならノワールも仲間ってことだね。よろしく」


「・・・」


 ティアは俯いて少し嬉しそうな顔をして、黒いドラゴンの人形のノワールに顔をうずくめる。


 ダルク達が冒険者ギルドに辿り着くと相変わらず賑わっているのがわかった。冒険者ギルドは昼夜問わずに誰かしらの冒険者がいる。またご飯を食べれる食堂もあるため賑わっていない日が無い。冒険者ギルドに入るとカウンターには笑顔でダルク達を見ているアンリが居た。


「あれ、珍しく今日はこんな昼ご飯の時間帯にどうしたんですか?」


「今日はこの子とパーティ登録をお願いしに来ました」


 アンリはダルクとティアを驚いた様子で交互に見ていた。普段ダルクは昼頃には雑異依頼を受けて働いているため、食事時に冒険者ギルドを訪ねることがほとんど無かった。そのためアンリはダルクが食事時の時間帯に来た事にとても驚いていた。


「確かその子は薬屋のお婆さんのところの、、、」


「ティア、、と、いい、、、ま、す」


 ティアは緊張でどもりながらもアンリに挨拶をした。だいぶダルクと喋るのには慣れたのか噛んだらするのも減ってきていたが、初対面の相手ではまだ緊張をするのかダルクの後ろに隠れてしまいズボンの裾を持って少し覗いている。


「初めまして、私はアンリって言いますよろしくね!それでパーティ登録をしに来たんだっけ?」


「お婆さんの紹介で俺なんかとパーティ組んでくれる子が見つかったので!」


 ラフバンスに来てから一年経ちやっとパーティを組んでもらえる子と会うことができた。パーティを組むことでようやく本格的な依頼を受けることができる。


「まずはパーティ登録をする為に冒険者カードを貸してもらってもいい?」


「あ、、の私、、まだ、、、冒険者、登録、、して、、、な、い、、、で、、す」


「それなら先に冒険者登録をするから、こっちに来てもらってこの水晶に手を触れてもらってもいい?」


 アンリがそう言うと引き出しから水晶を取り出して、ティアの目の前に置いた。水晶に手を触れる事によって自身のスキルや熟練度などの詳細が判明し冒険者カードに書かれていく。水晶に触れることにより犯罪者かどうかなども分かるため水晶に触れることで身の潔白を証明することにも使用できる。


「あ、、の、お兄、、、さ、ん」


「どうした?」


 ティアはダルクの袖を引っ張り、アンリから貰った冒険者カードをダルクに見せた。


 名前:ティア

 職業:人形師(13/100)

 固有スキル

1:付喪神

大事にしてきた人形には魂が宿り心を通わせ、大いなる力を目覚めさせる。

2:

3:

 メインスキル

1:コンダクター

人形を自身の手の様に操り戦闘能力を向上させる。

2:空間収納(インベントリ)

人形などを空間に収納する事ができる。魔力や熟練度に応じて空間は拡張される。


「俺と同じで固有スキル持ってるじゃん!てか俺より熟練度高いのか、、、」


 ティアの冒険者カードを確認するとダルクと同様にすでに固有スキルを獲得して居た。また熟練度に関してはダルクよりも熟練度が高くメインスキルも二種類持っていた。


「俺もだけどティアちゃんも一度も戦ったりしていないのに固有スキルを持ってるけど、これって結構普通なんですか?」


 ダルクが疑問に思い、おそらく最も多種多様なスキルを確認しているギルド受付嬢のアンリに問いかける。


「神殿の神官に説明を受けていると思いますが、基本的には死の境目に立ち強い欲望で獲得できると言われているのでとても珍しいですよ!」


 アンリは驚いた様子で食い気味にダルクに説明をする。死の境目に立った際に冒険者は生きたいや目の前の魔物を倒したいと言った欲望から固有スキルが獲得することが多いため、固有スキルの保有数=多くの戦闘を経験して生還していると思われている。そのため固有スキルを二つ以上持っている冒険者は一流と言われている。


「でもティアちゃんの固有スキルは人形師なら誰もが欲しがりそうな固有スキルだよね。俺もその固有スキルを持ってたらノワールとも喋れたんだろうけどね」


「ノワール、、も、、、ダルク、、さん、と、、、喋りた、、がって、い、、、ます」


 ティアが人形と話が出来たのは付喪神の固有スキルがあったからこそ喋る事ができたのだろう。もし付喪神のスキルが無くノワールと喋る事が出来なかったらティアは長い時間一人で引きこもり他者と関わる事が無くなっていただろうとダルクは思った。


「それじゃあ冒険者カードを二人とも出して!」


 ダルクとティアはアンリの声に従い素直に冒険者カードをだす。


「パーティ登録は冒険者同士のカードを触れ合わせるとパーティ登録を完了できるわ」


 ダルクとティアの冒険者カードを触れ合わせると冒険者カードの自身の名前の欄の横に緑色の丸が表示され、名前の欄の下にパーティメンバーの名前が追加された。


「緑のマークが出ていればパーティ登録が完了よ。その緑のマークが付いている限りパーティ内の人間が生きている証になるわ。だけど赤いマークの場合は残念ながら意識がないか亡くなっているから気をつけてね」


「なるほど、万が一魔物との戦闘などで離れてしまっていても生死がわかるのはありがたい」


「もしパーティメンバーが赤いマークになったていたら、すぐにギルドに来て伝えてね。場所によっては冒険者を募って助けに行かないと行けないからね」


 もし何かしらのアクシデントがありパーティメンバーが離れてしまい、その隙にパーティメンバーが死の淵に立っていたらと考えるとダルクは冷静を欠くだろう。


「もし強力な魔物が現れても、俺が絶対にティアちゃんを守って時間稼ぎをするからその時は俺の事は気にせず逃げてくれ」


「でも、そ、、した、、、ら、お兄、、さん、、、は?」


「俺は<守護騎士>の職業だから守りは固い。だから俺が耐えている間にティアちゃんは救援を呼んできてくれれば死ぬ事はないよ」


(仲間を守れもしない<守護騎士>に存在価値なんて無いし、ティアちゃんが怪我してお婆さんが悲しむのも見たくない)


「でも!」


「そういう状況が来てしまったら頼む」


 ダルクはティアの声を静止して頭を深く下げる。ダルクはこの一年間でもし自分に仲間ができて強力な魔物が現れた場合のことを考えていた。どんな時でも冷静に対応しないと死んでしまう事を九年前の襲撃で知っている。ダルクはあの日以来自分の命一つで仲間を守れるなら安いと考えていた。


「そんな辛気臭いことなんか考えないの!とりあえず冒険者登録をしたばっかりのティアちゃんが居るから依頼について説明するからね?」


 ダルクはもしもの事を考えながらもアンリの説明をティアと一緒に聞いていた。

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