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不人気職業クランの無自覚成り上がり  作者: 十六夜直哉
プロローグ
2/12

2 誓い

 オルレ村が魔物の襲撃を受けてから一日が経った頃にダルクは目が覚めた。


「・・・ここは?」


 ダルクが目覚めた場所は魔物の襲撃前では毎日通い、両親や妹と笑いながら食卓を囲んだ家だった。


「そうだ、、、確かオークに殺されそうな時に大楯を持った冒険者に会って、それから・・・」


 ダルクは昨日の記憶を遡りながら一個一個何があったかを思い出し、魔物から妹を守るためにナイフを持って戦おうとして助けてもらったことを思い出す。


「そういえばジャンヌや母さん達はどこに?」


 ダルクはベットから降り家の中に誰かいないかを探していると、外から太鼓の音などの音色が響いていた。気になり外に足を運ぶとジャンヌや両親の姿が目に入った。


「あ、お兄ちゃん!!」


「ダルク!!」


 ジャンヌと母親がダルクに向かって駆け寄ってくる。周囲を見てみると村にある家はほとんど半壊してはいるが、キャンプファイヤーの周りには村中の人や武装している人が集まり踊ったりらご飯を食べたりしている。


「あの人は、、、」


 ジャンヌや母親に抱きしめられながら周りを見ていると、キャンプファイヤーの付近で肉を頬張りながら豪快に笑っている大楯の冒険者を見つけた。


「ダルク。後で助けていただいた冒険者の皆さんにお礼を言うんだよ?あの方にダルクがジャンヌの事を命をかけて守ろうとしていた事を教えてもらったわ。ダルクが心配だから起きて来るまで待っているって言って待ってもらってたのよ」


「俺もしっかり助けてもらったお礼を伝えたいから、まだ村に残っていてくれて良かったよ」


 ダルクは駆け足で大楯の冒険者の元に向かうと、冒険者の方も気づいてダルクの方に目を向ける。


「お、あの時の坊主じゃ無いか!怪我とかはなかったか?」


「はい。助けていただいてありがとうございました」


 ダルクが頭を下げると冒険者は困った顔をしながらダルクの頭に手を置き撫でた。


「いや、俺らの方こそ悪かった。もう少し早くこれば助けられる命もあったし、建物だって壊されなかった」


 先日の魔物の襲撃でオルレ村の三割が魔物によって無惨にも殺されてしまっていた。


「そもそも冒険者の人たちが来ていなかったら、俺や妹も生きていなかったので、、、」


「そうか。それにしても魔物達に囲まれてる中で、妹を守るために立ち向かうなんて勇気のある奴だな」


 大楯の冒険者はダルクの頭を撫でながら大声で笑っていた。


「ちょっとリーダー、その子困ってますよ」


 身長は少し低めで薄皮装備の女性の冒険者がダルク達の方に向かってそう呟く。


「もし冒険者の方たちが助けに来れてなかったら、どちみち妹を守れず死んでしまっていたので勇気があっても守れなかったら意味がないです」


「何言ってるんだ?普通の奴ならそもそも震えて立ち向かうこともできない。少年が立ち向かったからこそ俺達が間に合ったんだよ」


「そうだよ!立ち向かうことは誰にでも出来ることではないから自信を持って!」


 冒険者の二人に褒められてすこし照れくさかったが、自分が身を挺して妹を守ろうとしたことは無駄ではなかったと言ってもらえたことがダルクにとっては何よりも嬉しいことだった。


「どうすればお兄さんみたいな人を守れる冒険者になれますか?」


「それは職業的な話?それとも気持ちの話?」


「どちらもです。俺はもう守られる存在じゃなく、お兄さんみたいに妹や両親達を魔物から守れる冒険者になりたい」


 ダルクにとって先日の大楯の冒険者のオークやゴブリン数匹に対して無傷で自分達を守って戦う姿は、今まで生きていた中でも一番印象に残る出来事だった。あらゆる攻撃をかわしり弾いて傷を負わずにモンスターの攻撃を一身に受けるその姿は七歳の少年には英雄とも思える姿だった。


「単純な話だと<守護騎士>って言う俺の職業が守りに特化しているから無傷で立ち回れたってのもあるけど、一番はやっぱり誰も傷つけず守りたいって思いが大事だな」


「思いですか?」


「そうだ。一五歳になったら<職業選定>があるからその時におそらく説明もされると思うが、各職業によって思いの強さにより固有スキルを三つまで覚えることがある」


「お兄さんがあの時の魔物に使っていたスキルですか?」


「いや、あれは<守護騎士>があらかじめ持っているメインスキルだよ。固有スキルはその人の職業に近しい思いが強ければ強いほどその状況に適したスキルを発現する」


「職業に近しい思い?」


「例えば<剣士>という職業がある。<剣士>は己の剣で道を切り開き先陣を切る職業だけど、魔物によっては<剣士>では切れない魔物も出てくる。そんな時に魔物を切ることの出来る力が欲しいと強く思っていたら固有スキルを発現したって話もある。まあそんなに簡単には発現しないけどな」


 各職業には固有スキルとメインスキルの二種類が存在する。メインスキルは熟練度が上がるにつれて増えていくが固有スキルは冒険者の中で発現した者は三割も居ないと言われているほど、全く発現がしにくいスキルである。


「お兄さんは固有スキルを持っているんですか?」


「俺は一応固有スキルを二つ持っているけど、使い方が限定的すぎてあまり使ってはいない」


「あはは、確かにあの固有スキルは限定的すぎるかもね」


 大楯の冒険者と一緒のパーティと思う女性の冒険者が苦笑いをしながら呟いていた。


 固有スキルはメインスキルとは違い汎用性が低いものばかりで、状況に応じて思いに強さで発現するため限定的な強さしか持ってない場合が多い。


「もし少年が本気で人を守れる冒険者になりたいなら<守護騎士>の職業はうってつけだよ」


「ちょっとリーダー、あまりその職業をオススメするのはかわいそうだよ。私達はリーダーの人柄とかを理解しているからパーティを組んでいるんだから」


「どう言うことですか?」


「この職業は少年も見てたと思うけど、自分で魔物を倒す手段がほぼないんだよ。とにかく味方の援護が来るまで耐えて耐えて耐えま来るしかないんだよ」


 ダルクは魔物に襲われ助けにきた時に大楯の冒険者はほとんど攻撃をしていないことに気づいた。


「だからあまり熟練度も上がらないし、メインスキルも熟練度が高くないと知能の高い魔物には全く効かないから寄生職業とも呼ばれている。だから<守護騎士>の職業を選ぶ人はほぼ居ない」


「私達はリーダーに助けてもらったことがあって人柄を知っているし一緒に冒険したいと思っているから一緒にパーティを組んでいるけど、パーティを組むことも難しい職業だからリーダーには悪いけど私達は<守護騎士>はオススメしない」


「それでも僕はみんなを守れる冒険者になりたいです。なので職業選定のときは<守護騎士>を選びます!」


 ダルクにとってはやはり大楯の冒険者が自分達を守るために前に出て魔物の攻撃を受け切る姿がそれほどまでに印象強くカッコいいと思った。その姿に憧れと尊敬を抱くほどに。


「そうか。茨の道だけど先輩からのアドバイスをしよう」


「ありがとうございます!」


「<守護騎士>になるならとにかく体力と走る速度を身につけるためのトレーニングをしろ。体力がないと魔物の猛攻に耐えることは出来ないし、足が早くないと駆けつける頃には間に合ってない可能性もある」


「わかりました!」


「もし冒険者になったら、俺達はこの村の先にある冒険者の街<ラフバンス>に居るから会いにきな!」


「はい!必ず冒険者になるために会いに行きます!」


 ダルクと大楯の冒険者は拳を交わしてオルレ村の祭りを楽しんでいった。

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