9 固有スキル
「まず魔法を得意じゃ無い職種が使うには術式と呼ばれているあらかじめ魔法が込められている文字列を使わないと使えない。しかし魔術師や神官などの職業はメインスキル自体が術式となっているから直ぐに魔法を使うことができる」
「俺も術式が書かれている物を経由すれば魔法を使えるってこと?」
「火をつけるや氷を出すなどの簡単な術式の魔法なら魔力はあまり必要としないから使える可能性はあるけど、炎を出すや氷を形付けて攻撃するとあった複雑な魔法は使えないよ」
火をつけるや水を出す、氷を出すなどと言った基礎となる魔法は簡単な術式なので必要な魔力が少ない。しかしそれらの基礎となる魔法をさらに変形などと言った複雑な物に変える場合は術式の文字列が多くなるため必要な魔力が多くなる。
「でも私の知り合いの守護騎士は魔法かスキルかはわからないけども使っていたからダル坊も諦めちゃだめだよ」
「私もノワールを経由しないで私自身が魔法を使えるスキルを覚えるかな?」
「人形師は元々魔力の高い人がなる職業だから絶対使えるスキルを覚えれるよ」
ティアはお婆さんの言葉に満面の笑みを見せて喜んでいる。もしティアが魔法を扱うスキルを覚えた場合は人形本体とティアで魔法を使えるためかなりの戦力となる。
「ティアは魔力のコントロールが苦手だから裏庭で魔力の糸を一定の細さで保つ練習をして来るといいよ」
「わかった!」
ティアはすぐに裏庭に移動をして魔力のコントロールを身につける練習を始める。
「それじゃあ魔力の話を聞けたので、俺は資料室に行って資料を読んできます」
「ダル坊にはティアについて話があるから、もう少し時間をもらってもいいかい?」
『・・・』
「ティアちゃんについて?」
ダルクが重い腰を持ち上げて冒険者ギルドに向かおうとするとお婆さんに呼び止められる。
「ティアがノワールに魔力を流しすぎて魔法が暴発仕掛けたって話を聞いて魔力のコントロールが出来てないからと話したけれど本当は違うじゃよ」
「どういうことですか?」
「ノワールにも話したけど、あの子は無意識のうちにノワールに常に魔力を流し続けている」
「どう言うことですか?」
「あの子の両親が魔物に殺されてしまった話はしたね?」
ダルクはこくりとうなづいた。ティアはダルクと同様に九年前に魔物が村に襲撃をしてきて村は壊滅して村人もティア以外は死んでしまったと聞いていた。ティアは両親に庇われて、襲撃時に抱きしめていたノワールと一緒に運良く逃げることができたと聞いてた。
「私が引き取ってからはずっと部屋にこもっていてノワールに話しかけていたんだけど、両親を失い唯一の形見のノワールと話したいって思いから[付喪神]のスキルがその時に発現しもう誰も離れたくないって思いから無意識に魔力を流してるんじゃよ」
「でも魔力を流しても人形師のメインスキルのコンダクターがないと意味がないんじゃ?」
『俺はそもそも備わっている魔力で自立出来ること忘れてないか』
本来人形には魔力量の上限が存在する。上限を超えてしまうと人形が耐えれずに爆発を起こす。しかしノワールは魔力を貯蓄できてその魔力を使用することによって自立することが可能になっている。なので魔力を流され続けても自立する際に魔力を使用することで爆発を防げていた。
「ティアちゃんが魔力を上手くノワールに流せないのって、常に流してる魔力に加えてティアちゃんの意志で流した魔力によって結果的に倍の魔力を流してるからってこと?」
『そういうことだ。しかもティアには膨大な魔力があるから無くなることがない』
普通の人がティアみたいな状況になっていた場合魔力を倍で流しているので、自信に備わっている魔力も倍で減ることになる。
「ノワールが居なくなることはないってわかるキッカケかティア自身が自分の弱さに気づいて克服することが出来たら上手くノワールに魔力を流せるんだけど」
「ティアちゃん自身が気づいて乗り越えるしか方法がないですね」
「あとノワールには魔法の術式が複数埋め込まれている以外にも何か特別な作り方がされているよ」
「そんなこともわかるんですか?」
「ノワールは私の息子とお嫁さん、ティアの両親がティアのためだけに二人で作った人形だからね。それにあの子の誕生日の日に魔物の襲撃があったから、自分の誕生日の日は嫌なことが起こると思ってしまってね」
両親に祝われて楽しい思い出になるはずの誕生日が、魔物たちに襲撃をされて両親は殺されたなら一生心に残ってしまう最悪の誕生日になるだろう。
「本当は今もまだ魔物を怖がっているんだけど、ダル坊に助けてもらって、ダル坊がパーティを組めて無いと聞いて恩返しがしたいからと紹介してほしいと頼まれたんだよ」
「俺はそんな特別なことはしてないのに、、、」
「あの子にとっては他の子ちょっかい出されてた時にダル坊が助けてくれてヒーローに見えたんだろうね」
心を閉ざしかけている子が身内に頼まれて久方ぶりに外に出た時に、他の子に揶揄われたりしたら嫌な思いをしてより一層心を閉ざしてしまう。そんな心がすり減っている時に助けてもらったなら誰しもがヒーローに見えてくるだろう。
「それにパーティを組んでノワールと話せるのも、あの子にとっては自分の友達を紹介できたから心底嬉しかったと思うよ」
「そういえばお婆さんはどうしてノワールと話せたんですか?」
「あの子の母親の固有スキルのおかげで私にも聞こえるんだよ。あの子の母親の固有スキルが字と効力は違うけど同じ九十九神のスキルだったからね」
「そんなことあるんですか?」
「私も最初ティアから聞いた時はびっくりしたよ。あの子の母親の九十九神は九十九体まで刻印を付けることができて、刻印を付けた人形となら人形師以外の人でも意思疎通が出来る能力だった。だから父親が愛娘のために人形を作り母親が刻印を付ける。そして意思疎通を出来るようにして守ってもらおうとしたんだろうね」
『刻印を付けられて意思疎通ができるようになった時に、二人にはこの先自分達が不慮の事故とかで亡くなったりしたらティアのことを守ってほしいと頼まれたよ』
「ティアちゃんの両親は魔物の襲撃が来るのを知っていたのか?」
『わからない。だけど一番最初にティアへ渡す人形は俺って決めていたみたいだぞ。守ってほしいと頼まれた時に他の人形達もいるから力を合わせて欲しいとも言っていたから、あの時には他の人形達も出来ていたんだと思う。どこにあるかもわからないし魔物の襲撃で壊された可能性もあるけど』
「あの子は色んな偏った性能の人形を作るのが好きだったから毎年誕生日に渡す人形を決めていたのかもしれないね」
「自分達がいつ死んでも大丈夫なように年を追うごとにティアちゃんに人形をプレゼントして備えてたのか」
魔物が蔓延るこの世界では常に死が付き纏っている。どの街も村も絶対的に安全な場所はなく、少しの歯車のずれで昨日まで安全だった平和がが崩れ落ちる。
「ダル坊とノワールには悪いけど、私がそばに居ないときはティアを守っておくれ」
「当たり前です!俺の命に変えても守ります!」
『俺も守るのは約束してるから任せてくれ』
「命に変えたらダメだよ。危ないと感じたらすぐに逃げてやり直せばいいんだから」
「わかりました」
ダルクとノワールはお互いに顔を見合わせてティアを守ることを決意し誓った。




