8 魔力
C級冒険者の森の調査が終わるまで森近辺に近づくことが出来ないためダルクは冒険者ギルドの資料室に二日ほど篭って数日前の魔物の暴走についての調査報告書を読ませてもらっていた。
「やっぱりおかしい。三日前に現れたはぐれの魔物達は魔力を使用して集団行動を円滑にしているのに、他の冒険者が戦っている時に魔力を使用してない」
集団で行動する魔物は各々が魔力を用いた特殊な方法でコミュニケーション取るため、常に魔力を使用しており魔力ありきの戦い方をするのが魔物の特徴だ。
しかし冒険者達の戦闘記録を確認するとシャドウウルフは影の中を移動しながら戦闘を行うが冒険者達と戦った際に影の移動は用いずに連携もどこか不自然だったと書かれている。
「それにどの魔物も森の中から逃げてきた割には戦った形跡が無い」
魔物の世界は弱肉強食であり魔物には相手の魔力量を測れる。そのため魔力量が相手の方が多くても集団で行動している魔物は、自身の縄張りに他の魔物が侵入した場合は縄張りを守るために戦う。しかし今回書かれている調査報告書にはどの集団行動を主にするどの魔物も冒険者がつけた傷以外は無く、冒険者と戦って少し時間が経つと去って行ったと書かれている。
「森の中まで行って少し調べたいな」
もし集団行動を主体とする魔物達が本能で勝てないと思うほどの魔物が出現した場合はBランク以上の魔物が森の中に居座っている可能性が高くなるため早急に対処しないと死人が出る可能性がある。
「俺らがギルドの依頼を受けて外に出た際に、高ランクの魔物と遭遇する可能性が出てくるな」
魔物が存在する限り絶対的に安全な場所が無いことを九年前の魔物の襲撃で身をもってダルクは体験している。今はダルクがパーティリーダーとなっているため、ティアやノワールを護る責任があるので一年で全て目を通した資料室に来て原因になりそうな要因と魔物を調べて備える必要がある。
「・・・異形の魔物か」
ダルクは近くの本棚に置いてあった、これまで出現した異形の魔物についての資料を手に取った。
資料には九年前に襲ってきたジェネラルオークの情報も書いてある。その他にもドラゴンやデュラハンなどといったおとぎ話に出てくるような魔物も書かれていた。
「これ全部冒険者が倒しているのすごいよな」
「そうなんですよ!」
ダルクの言葉に同意をしてアンリが凄い勢いで資料室に入ってきた。
「もう昼休憩の時間ですか?」
「まだお昼の時間じゃ無いですよ!それよりもティアちゃんがダルクさんのこと探していたので呼びにきました」
「ティアちゃんが来るの早かったな」
三日前の戦闘の際にティアは魔力暴走を仕掛けたため、朝は薬屋のお婆さんに魔力のことを教えてもらうと言っていたのでダルクは昼過ぎまで資料室で時間を潰して待っていた。普段ならば昼ごはんが終わった時間にティアのことを迎えに行っていた。
「とにかくティアちゃんが待っているので読んだ資料をすぐ片付けて来てくださいね」
「わかりました。すぐに行くと伝えといてください」
アンリはダルクに伝えたあとすぐに受付の仕事に戻って行った。ダルクは今まで読んだ資料を元の場所に片付けてティアの元に向かう準備をする。
「・・・そんな運悪く遭遇しないよな」
ダルクは先ほどまで読んでいた異形の魔物の資料を手に取り片付けた。ダルクは異形の魔物のある文が気になりながらも資料室を後にした。
[異形の魔物は冒険者の心を嘲笑うかのように、絶望を蔓延させて闇より出現する。]
資料室から出たダルクは食堂で座って朝ごはんを食べていたティアを見つけて合流をする。
「ごめん、遅くなって。それで何かあったの?」
「そんな時間かかってないので大丈夫です!お婆ちゃんに魔力について教えてもらってたんですけど、お兄さんも魔力について知っておいた方がいいから呼んできてって言われました」
先日のはぐれのバイソンと戦闘した時に、ティアは魔力を一気に流してしまいノワールの魔法陣を暴走させ壊しかけたためここ数日は薬屋のお婆さんのところで魔力について教えてもらっていた。
「確かにパーティメンバーがどんな風に魔力を使うかは知っておいた方が戦い方の参考になるか」
「お婆ちゃんも似たようなこと言ってました!」
冒険者パーティや王都の騎士団にも言えることだが、昨今は魔法についてのどのぐらい理解して戦術に組み込めるかで戦い方が大幅に変わる。そのため魔力がどのように使うことができてどんな弱点を知っているかは雲泥の差がある。
「なら待たせても悪いしすぐに行こうか」
「はい!」
「そういえば今日はノワールは一緒じゃないけど空間収納にでもいるの?」
「お婆ちゃんと話しています」
「ノワールに語りかけてるってこと?」
「いえ、お婆ちゃんは昔からノワールが喋っているのを聞こえてたみたいです」
「え?」
ティアがノワールと喋れるのは固有スキルの[付喪神]のおかげで喋ることができた。ダルクがノワールの声が聞こえるようになったのはパーティになって[付喪神]の恩恵がダルクにも付与されたからと予想していた。しかし昔からということは[付喪神]の能力をパーティ問わず聞こえていたということになる。
「お婆ちゃんが言うには血縁者だから聞こえるといっていました」
血縁者が理由だとしたらティアがノワールを貰った日によってはティアの両親にも聞こえていた可能性がある。
「そういえばノワールってどうやって貰ったの?」
「両親から誕生日プレゼントで貰いました」
ティアは一瞬暗い顔をしていたが直ぐに気を取り直してノワールについて話していた。
「でもあんなに高性能だとめちゃくちゃ作る人の技量がすごいね」
「お婆ちゃんがノワールを初めて見た時は感動して涙出してましたよ」
「話しているといつのまにかお婆さんの家に着いたね」
「お婆ちゃん、ノワール、ただいま!」
玄関に着くとティアはすぐに玄関を開けてお婆さんのところに向かって行った。薬屋のお店の奥が住居になっていてそこに薬屋のお婆さんとティアが住んでいるようだ。
「おかえり。ダル坊には急に来てもらって悪かったねえ」
「冒険者ギルドの資料室に篭っていたので気にしないでください」
『・・・』
ノワールはどこか雰囲気が暗い様子でお婆さんとダルクの方を見ていた。
「どうしたのノワール?」
『いや、なんでもない』
「それならいいけど疲れているなら空間収納で休んでる?」
『肉体的な疲れはないから大丈夫。それよりティアの方こそ魔力の繊細なコントロールするための練習してたけど疲れてない?』
「うん!今のところは大丈夫!」
「二人とも疲れてないなら魔力について説明をするよ」
お婆さんがティアとノワールの様子を気にして、本当に疲れて無いと判断をして魔力について説明をし始める。
「まず魔力が何か知っているかい?」
「魔法を使える職種の特有の力」
「ダル坊ハズレだよ。魔力はどの職種に問わず誰もが持っているもので魔力を使う職種にとって生命みたいなものだよ」
「でも俺も魔法を使いたくて試したけど全く魔法を使える気配がなかったから魔力はないと思ったんだけど」
ダルクは幼少期に魔法を扱うことができれば、大盾で防御しながら攻撃ができると考えて練習をしたが出る気配すら感じられなかった。そのためそもそも魔力が無い体だと考えていた。
「正しくは魔力を持ってはいるけど、ダル坊の魔力が微量すぎるから無いと感じたんだよ」
「なら俺にも使えるってこと?」
「簡単な魔法なら使えるかもしれないけど、威力とかの補償は無いから実戦では使えないと思って方がいいよ。ティアには昨日も言ったけど、魔法は万能では無いから驕ってはいけないからね。
「うん!わかってるよお婆ちゃん!」
「それなら魔力についての話を進めようかね」
ダルクとティアはお婆さんの説明を聞きながら魔力について知見を広げていった。
すみませんがスキルや魔法などと言ったチュートリアルのような説明の話が後2話〜3話程続きます。
それが終われば本格的に話が進んでいくので少しの間お付き合いください




