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39 奴隷・葵

 和樹たちが悲鳴のした牢を覗き込むと、そこには地面に倒れ、セーラー服を剥がれそうになっている白川葵がいた。手足に鎖をつけられている。

 男たち三人に囲まれ、葵は怯えた表情で彼らを見上げている。


 エミリアの異母姉の葵は、和樹にあっさり撃退して敗走していた。

 あのあと、白川家の屋敷に逃げ帰ったのだとは思うが、白川家嫡流の彼女がなぜ地下牢にいるのだろう?


 葵はセーラー服の上着を剥ぎ取られ、ブラジャーとスカートだけになっていた。彼女は、男たちに懇願するように、惨めに上目遣いに男たちを見つめた。


「どうしてこんなことをするの……?」


「慶男様のご命令でね」


「あ、あたしは慶男お兄様のために尽くしてきたじゃない……! お兄様が当主となっても支えるつもりだったのに!」

 

 葵がショックを受けたように目を見開く。慶男は白川家の嫡男で、葵の同母兄のはずだ。

 なぜその二人が対立するのだろう? しかも、葵の言い分では次期当主の座を慶男と争っていたわけでもないらしい。


 男たちは薄く笑った。


「慶男様は、生意気な妹が目障りだから、従順にしつけるように、とのことだ。東三条との戦いでも役に立たなかったしな」


「そ、そんな……!」


「危険の芽は未然に摘む。手段は選ばない。それが白川家の家訓だ。ちょうど良い機会だし、『葵様は東三条の人間に乱暴されて心を病んで地下牢に幽閉』という説明もできる」


「ゆ、幽閉!?」


「実際には、その後は、白川の人間の士気を高めるために、男たちの相手をしてもらう毎日を送るわけだ。まずは――我々の番だな」


 葵が絶望の表情を浮かべる。そして、男たちは葵のスカートに手をかけた。

 じたばたと抵抗しようとした葵は、男たちに平手打ちされて大人しくなった。


 涙目の葵は「あたし、初めてなの……だから……」と許しを乞うが、そのまま口を塞がれてくぐもったあえぎ声を上げる。下着もすっかり奪われ、葵は16歳の少女らしい美しい身体をさらしていた。


 徹底して、葵の心を折ってしまうつもりなのだろう。


 和樹も兄として、観月という妹がいる。血はつながっていないけれど、大事な妹だ。

 なのに、白川の嫡男は、血の繋がった自分の妹を、男たちの慰み者にしようとしている。


 決して許せることではない。


 もっとも葵はエミリアを凌辱させようとしたから、自業自得という面もある。葵を助けるより、透子救出を優先するべきではないか。


 迷っていたら、男たちの方が和樹たちに気づいた。

 

「何だ? 貴様らは……?」


 半裸の葵は、大きく目を見開いた。これまでよりも強く葵が暴れると、男たちの注意がそれていたせいもあって、葵の口を塞ぐ男の手が外れた。


「た、助けて……祝園寺くん!」


 ともかく、男たちに気づかれた以上、とりあえず倒さざるを得ない。

 放置して通り過ぎることはできないだろう。


 案の定、男たちが襲いかかってきたので、和樹は一瞬で返り討ちにした。


「ぐわあああああ」


 男たち三人は和樹の霊力を一撃受けると、すぐに倒れ伏してしまう。

 後に残ったのは、裸で拘束されている葵だけだった。


 葵は恥じらうように顔を赤らめたが、手足を鎖で縛られているので、身体を隠すこともできない。

 和樹は目のやり場に困る。


 やがて、葵は媚びるように和樹をじっと見つめた。


「しゅ、祝園寺くんって、すごいのね……! あの人達、白川家の精鋭なのに、一瞬で倒しちゃうし。東三条の屋敷で戦ったときも、あたしなんかじゃ、全然、歯も立たなかったし」


「そんなふうにわざとらしく褒められても……」


「すごいと思っているのは本当! かっこよかったわ。ね、だから、この拘束を解いてくれない?」

 

 葵は裸の身体をさらしたまま、恥も外聞もなく、和樹に懇願した。和樹はエミリアを振り返った。


「どうする? エミリアさん次第で決めていいよ」


「そうですね……」


 エミリアは身をかがめて、葵に顔を近づけた。葵がひっと悲鳴を上げる。仕返しされると思ったのかもしれない。


 けれど、エミリアが言い出したのは、意外なことだった。


「これまでのことを反省して、祝園寺先輩の奴隷になるって約束すれば、姉さんを解放してあげます」


「ど、奴隷……!?」


「嫌なら、いいんです。このまま放っておけば、誰か白川家の男にひどいことをされるかもですけど、私にも同じことをしようとしたんですから、自業自得、ですよね?」


「ご、ごめんなさい。あのときのことは謝るから……!」


「それで、祝園寺先輩に絶対服従するつもりはありますか?」


「な、なんでそんなことを――」


「姉さんは霊力は強いですし、白川家の嫡流ですから。祝園寺先輩にとっても利用価値があります。私は祝園寺先輩と運命共同体ですし、祝園寺先輩の利益は私の利益です」


 たしかに、そのとおりだ。ただ、葵の最大の利用価値を考えると、つまり――。


「もしかして、あたしに祝園寺くんとエッチしろなんて言うの!?」


「それだけじゃなくて、子供も生んでもらいます。奴隷なんだから、ご主人さまの子どもを生むのも当然ですよね?」


 エミリアはふふっと笑って言う。やっぱり、エミリアは葵に仕返しをするつもりらしい。

 前から和樹は思っていたけれど、エミリアは白川家という特殊な環境で迫害されながら生きてきたからか、少し倫理観が変わっている気がする。


「で、でも――」


「さあ、どうするんですか? 姉さん!?」


 エミリアに迫られ、葵は涙目になりながら和樹を見上げた。


「ひどいこと、しないよね……?」


「もちろん、しないよ……」


「な、なら、あたしは……祝園寺くんの奴隷になる」


 ついに葵は言ってしまった。どのみち、嫡男に切り捨てられた時点で、葵の居場所は白川家にはない。

 エミリアは「ご主人さまに対する話し方じゃないですよね?」とさらに葵をいじめた。


「う、ううっ……あ、あたしは和樹様の奴隷になって、子供を生みます!」


 葵は顔を真っ赤にして、裸で叫んだ。目からぽろぽろと涙を流している。

 さすがに可哀想な気がしてきたが、葵がしようとした犯罪行為を考えれば、このぐらいはいい薬なのかもしれない。

 こうして、白川葵も祝園寺和樹のものになった。



<あとがき>

高飛車な美少女から、和樹の奴隷への転落……! 


面白い、葵も和樹にお仕置きされてほしい、と思っていただけましたら


・☆☆☆☆☆→★★★★★


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― 新着の感想 ―
[一言] 母親だけ手遅れパターンなのか、 罰を受ける必要がありそうではあるといえど、流石に可哀想かも、
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