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32 ハーレムを作るべきです!

 桜子が、男たちに押し倒されているのを見て、和樹の頭にかっと血が登った。


 桜子は悲鳴を上げ、涙を流し、今にも襲われそうになっていた。


(必ず助ける……!)


 和樹が霊力の弾丸をいくつか放つと、男たちはあっさりと倒れた。倒れ悲鳴を上げる男たちに、和樹は追撃でさらに霊力を叩き込む。


「そ、そのへんにしておきましょう」


 エミリアに後ろから止められ、和樹はハッとする。

 危うく殺しかけるところだった。


 男たちは気を失っている。和樹は男たちを霊力で拘束した。霊力の覚醒からしばらく経って、ようやく力の使い方にも慣れてきた。


 そして、和樹は桜子に駆け寄る。桜子は幼い身体をぐったりと横たえていた。

 それでも、幸い最後まではされなかったようだ。


 ほっとした和樹は、身をかがめて桜子に手を差し伸べようとする。ところが――。


「お兄ちゃん……!」


 桜子は身を起こし、ぎゅうっと和樹に抱きついた。和樹はうろたえる。その様子をエミリアはジト目で見ていた。


「すごく、すごく怖かったの……!」


「もう大丈夫。俺が必ず桜子を守るから」


「うん……」


 桜子はこくりとうなずき、「お兄ちゃんの身体、温かい」とえへへと笑う。

 そろそろ離さないと、と和樹は思う。


 だが、桜子はそっと和樹に顔を寄せると、「えいっ」と素早く和樹の唇を奪った。

 小さな唇だけれど、桜子のキスは燃えるように情熱的だった。桜子は和樹の唇を解放すると、上目遣いに和樹を見つめた。


「ファーストキス、あげちゃった」


「さ、桜子……!」


「言ったよね? わたし、お兄ちゃんのこと、大好き。さっき男の人達に襲われそうになったときにね、お兄ちゃんにわたしの初めて、全部上げればよかったと思ったの。そうすればたとえどんなに酷いことをされても、わたしの初めてはお兄ちゃんのものなんだって思えるから」

 

「桜子をひどい目に合わせたりしないよ」


「わかってる。お兄ちゃんがわたしを守ってくれるって信じてるもの。でもね、この先、何が起こるかわからないから」


 あと一歩で、桜子は男たちに純潔を奪われていた。今後もこういうことが起こらないとも限らない。

 そのとき確実に和樹が助けられると言えるかどうか……。


 ともかく、今は他の女性たちも救わないといけない。襲撃犯の目的は透子たちなのだから。

 ところが、その場に観月が現れたことで、もはや急いで救出する理由はなくなってしまった。


 しかも悪い方向に。


 観月は制服を綺麗に着ていて、襲われた形跡はなかった。隠れていて無事だったらしい。


「でも、透子さんたちが……誘拐されてしまいました」


 観月は悔しそうに言う。

 透子・朱里・結子の三人は、白川家の子を産ませる道具として拉致されたらしい。

 

 そうであれば、透子たちが辱められるとしても、相手は白川の嫡男などの白川嫡流の人間に限られる。

 拉致されるあいだに、凌辱される可能性は低い。


 それでも、和樹はすぐにでも救出に向かいたかった。透子は元婚約者で大事な幼馴染なのだから。

 結子はその透子や桜子の母だし、朱里にだってひどい目にあってほしくはない。


 でも、観月もエミリアも和樹がすぐに救出に向かうのは反対のようだった。


「夜に敵地を攻撃するのは危険です。占星術の応用で、白川家は夜に霊力が高まりやすい体質のはずですから。それに、白川本家に乗り込むなら、他の七華族のうちの一つの家でも味方にしないと勝てません」


 観月は言い、エミリアもうなずく。たしかに和樹も白川家への反撃が困難とわかっていた。

 だが、夜が明けても、透子たちが無事だとは限らない。白川の男に犯され、種付けされてしまっているかもしれない。


「少なくとも、祝園寺先輩にはやるべきことがあります」


 エミリアがきれいな声で言う。


「それはなに?」


 和樹はエミリアの青い目を見返して問うと、エミリアは少し顔を赤くした。


「霊力を高めるためにですね……そ、その……ここにいる女の子三人全員とエッチすることです。観月さんも、東三条桜子さんも、そしてもちろん、私も」







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