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30 瞬殺

 葵一人なら、おそらく和樹の敵ではない。もともと葵はエミリアより魔術の才能に劣るらしい。

 そうであればエミリアは不意打ちで不覚を取ったとは言え、エミリア一人でも葵と互角だし、そこに和樹が加われば制圧は難しくない。


 けれど、白川家の男の魔術師たちが葵の背後から現れた。スーツ姿の20代ぐらいの男性4人だ。

 彼らも下卑た笑みを浮かべている。

 

 葵が得意げに言う。


「白川家の精鋭部隊よ。祝園寺くんたちが敵うわけがない。ああ、そうだ。勝ったらエミリアを好きにすればいいわ」


 葵は男たちにそんなとんでもない命令をする。エミリアは「ひっ」と短い悲鳴を上げて、裸の身体を隠す。


 葵は自信満々だった。数の力で和樹を瞬殺できると思っていたらしい。

 だが、結果は真逆になった。


「え?」


 葵が間の抜けた声を上げる。和樹が腕を一振りすると、凄まじい霊力の波動が生じたのだ。

 覚醒した霊力は、観月を抱いたことでさらに強くなっていた。


 たちまち、白川家の人間たちは圧倒されてしまう。


「……っ! 一時撤収よ!」


 葵と男たちは逃げ出した。追撃しようかと思ったが、屋敷内には他の男もいて、透子たちをさらおうとしている。

 冷静に態勢を立て直すべきだ。


「すごいです! 祝園寺先輩!」


 そう言って、エミリアが和樹に抱きつき、その大きな胸がぎゅっと和樹に押し当てられる。


「え、エミリアさん……これはまずいよ」


「大丈夫です。だって、私、先輩にいろんなことをされるのも覚悟していますから。約束ですよね?」


「でも……」


「もし先輩がいなかったら、私は男たちにひどいことをされていました。このままだと、また襲撃されたときには本当に初めてを失っているかも……」


 葵は深くエミリアを憎んでいるらしく、昼間もエミリアを男たちに襲わせようとしていた。白川家との決着がつかないかぎり、今後もそういう危険があるだろう。


「私だけじゃなくて……他の女の子も、先輩が守るつもりがあるなら、自分のものにするべきです」


 エミリアはそう言って、和樹にしなだれかかる。甘い吐息に和樹は惑わされる。

 そう。東三条の女性たちも取り返しがつかないことになる前に、和樹に抱かれたいと懇願している。そして、そうすれば、和樹の霊力は増して、彼女たちを守ることが容易になる。


 あとは和樹の覚悟の問題だけだ。


 そのとき、屋敷の中から悲鳴が響いた。


「きゃあああああっ。……た、助けて、和樹お兄ちゃん!」


 悲鳴は桜子の声だった。


(今すぐにでも助けに行かないと……!)


 和樹はエミリアを放すと、エミリアもこくりとうなずく。その拍子に大きな胸が揺れ、和樹は赤面する。

 ともかく、エミリアを自分のものにするにせよ、話は東三条の女性たち、そして観月を救出した後だ。


 和樹とエミリアは風呂場から飛び出した。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] 和樹が行動を起こすのが遅い。女性陣が乱暴されそうだと分かっているのに余計な事を考えてしまい、悲鳴が聞こえてやっと行動に移す。 危険なの分かってるなら先に助けに行けよと言いたくなる。
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