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28 エミリアの提案

「し、白川さん!? なんでここに?」


「あ、あの、他の女の子にバレちゃいますから、大きな声は……。これから、バレたら困るようなことをしますし」


「え!?」


「お、お背中をお流しするだけです!」


 エミリアは顔を真っ赤にしてそう告げた。

 そう言うと、エミリアは身をかがめ、和樹の前にひざまずいた。


(せ、背中を流すなら正面に身をかがめるのは変なような……)


 女子としては身長が高めのエミリアには、バスタオルが少し短すぎた。

 見下ろすと、白い胸の谷間がかなり見えてしまっている。金色の髪が扇情的にその胸元にかかっていた。すらりとした白い生足も太ももまで露わだ。


「え、エミリアさん……そ、その、これは……」


「あ、あまり見ないでください。私も恥ずかしいですから……」


 二人のあいだに沈黙が訪れる。緊張に耐えられず、和樹が口を開く。


「エミリアさん、これはいったいどういうこと?」


「た、助けていただいたお礼にご奉仕しようと思ったんです」


「そんなことしなくていいよ」


「わ、私に魅力、ないですか?」


「い、いや、むしろとっても魅力的……」


 和樹は言いかけて失言だと気づく。エミリアはくすりと笑う。


「先輩、私の身体に目が釘付けでしたよね」


「ご、ごめん」


「謝ることじゃないです。私は、嬉しいですから。ねえ、先輩、私を守ってくださいますか?」


「もちろん。俺にできることなら、何でもするよ」


「良かった……。私も先輩のためなら、何でもします。先輩は魔術の才能のある女の子と、そ、その……エッチなことをすれば霊力を増やせるんですよね?」


「ど、どうしてそれを知っているの?」


「先輩がハーレムを作ろうとしていることも、観月さんとせ、セックスしたことも私、知っているんです。盗聴していましたから」


「え!?」


「白川家はこの家のたくさんの部分に盗聴器をつけています。だから、東三条家の白川家への対抗策は筒抜けです。このお風呂場だけは安全ですから……」


 エミリアが風呂場に来た真の理由が、ようやくわかった。他の場所では話せなかったのだろう。


 そして、教えてくれたということは、エミリアはやはりこちら側の陣営についてくれるようだ。


「私は白川家の兄妹からは憎まれていますから。このままだと私、傷物にされてしまいます。それに、私のお母さんも助け出さないと……」


「白川さんのお母さん?」


「はい。私の母は、13歳のとき、父に強引に犯されて愛人にされて……私を生んだんです。それ以来、母はずっと白川家の奴隷です。権力で隠していますけど、そういう女の人が白川家の屋敷には大勢います」


 衝撃だった。霊力のためなら手段は選ばない家だとは聞いていたが、和樹の予想以上だ。

 エミリアの母はまだ28歳のはずで開放できれば新しい人生を歩める。他の女性たちも含めて必ず助け出したい。


 エミリアは青い瞳で真摯に和樹を見つめた。


「だから、私を……あ、愛人にしてください、祝園寺先輩」


「そ、そんなこと、できるわけないよ」


「遠くない未来に、この家は白川家に襲撃されます。そのとき、負けたら裏切り者の私に待っているのは破滅です。見せしめに男たちにひどいことをされるかも……。だから、白川家に勝つためにも、私の霊力を利用してください」


「そうはいっても……白川さんはそれでいいの?」


「私、先輩をカッコいいなと思ったんです。私を先輩のハーレムに加えていただけませんか?」


 エミリアは真っ赤な顔で、和樹を上目遣いに見た。

 そのとき、屋敷に轟音が響いた。


 白川家の襲撃は、予想よりずっと早かったのだ。






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