表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/59

12 保健体育で習ったもの。

「東三条家は祝園寺の家の管理下に置かれるんだもの。だから、東三条の女性はみんな和樹お兄ちゃんのものってこと」


「そ、そんなわけないと思うけど……」


「そんなことあるんだよ。実際、お兄ちゃんたちに守ってもらうことになるし……たとえば白川家みたいな家に助けを求めたら、わたしたちみんな身体を差し出さないといけなかったと思う。もちろん、わたしも」


 桜子がそんなふうに言う。たしかに、旧来の因習に囚われ、魔術を史上価値とする七華族ならやりかねない。白川家のような外道の七華族なら、透子たちを次代の魔術師を生む道具として扱うだろう。


 けれど、それと和樹が彼女たちをどう扱うかとはまた別問題だった。


 桜子はすっかりその気のようだけれど。もともと桜子は東三条家で冷遇されていたし、和樹が東三条家を乗っ取ることを提案したぐらいだ。


 積極的に他の女性も巻き込もうとしているのかもしれない。

 

「ね、お母さんも、和樹お兄ちゃんに従うんだものね」


「わ、私は……」


「お母さんはもう東三条家の当主じゃないよ。ただの下働きの女の人。そうでしょう?」


「ううっ……」


 結子は涙目でうめいていた。

 一方、桜子がいたずらっぽく瞳を輝かせる。テロリストに売られそうになった恨みもあるのか、結子をもはや母親とはあまり思っていないらしい。

 

 結子はすべての権力を失い、東三条家の家族の身分もなくなったという。自業自得といえばそうだが……。

 桜子が結子のバスタオルを奪ってしまう。


「きゃああっ」


 結子が少女のような悲鳴を上げて、うずくまって身体を隠した。和樹は美女の豊かな胸を見て、動揺する。なんだかんだで、結子はかなりの美人だった。

 そして、桜子がなにか結子の耳元にささやく。


 結子は恥ずかしそうに和樹を上目遣いに見た。


「か、和樹様……私を救ってくださりありがとうございました。こ、。この卑しい雌奴隷にお慈悲をください」


「お、お慈悲ってなんですか……?」


「な、何でもご奉仕しますから、三人目の子供も産ませてください」


 結子は潤んだ瞳でそんなことを言う。冗談ではなさそうで、目つきは割りと本気のようだった。


 透子も朱里もぎょっとした様子だった。


「ちょ、ちょっと桜子、お母様に何言わせているの!?」


「お姉ちゃんだって、白川家に売られそうになったじゃない?」


「それはそうだけど、さすがにこれはお母様が可哀想よ……」


 憐れむように透子に見られ、結子はますます屈辱を感じたようだった。娘から同情の視線を送られたら、プライドが傷つくだろう。

 なぜか結子が興奮したように頬を赤く染めているのは気になるけれど。


 桜子は首をかしげていた。


「ひどいことだとは思わないけどな。だって、わたしも同じ気持ちだもの」


「え?」


「ね、和樹お兄ちゃん。卑しい雌奴隷のわたしにお慈悲をください。わたしもお母様やお姉ちゃんたちと一緒に、和樹お兄ちゃんの子供を生みたいの♪」


 桜子はその幼い胸をえへんと張る。小さな胸だけれど、バスタオルの上からその形がわかってしまう。

 和樹は慌てて目をそらした。


「あ、お兄ちゃん照れてる?」


「照れてない……」


「お兄ちゃんなら、いくらでも見てくれていいのに」


 そう言って桜子が和樹に近づこうとすると、今度は透子が桜子の首根っこをつかんだ。


「桜子……和樹をからかうのもいい加減にしなさい!」


「か、からかってなんかないもん!」


「それに、和樹と子作りするのは私の役目なんだから!」


 透子が言った直後に、和樹と透子の視線が合う。透子は恥ずかしくなったのか、顔を赤くしてぷいっと横を向いてしまった。


 その隙に今度は朱里が和樹に迫る。ロングヘアの清楚な美人女子大生は、とても上機嫌だった。


「あんな変態母娘は放っておいて、美人のお姉さんのあたしにしたほうがいいんじゃない?」


「変態母娘言うな!」


 透子たちの声が浴室に響く。

 和樹はくらりとしてきた。桜子がくすっと笑う。


「お兄ちゃんは……ここにいる全員抱いてもいいんだよ?」


「い、意味わかっていってる?」


「保健体育で習ったもの。ばっちり」


 桜子がいたずらっぽく瞳を輝かせた。ませているなあ、と和樹は思ったけれど、今どきの中学一年生ならこんなものなのかもしれない。


 ともかく和樹はどうするか決めていた。


「えーと、それでは家族水入らずでお風呂に入ってください。俺からは以上です」


 そう言うと、和樹は回れ右をして、風呂場から逃げ出した。


「あっ、和樹……逃げちゃダメなんだからっ!」


 透子がそんなふうに声をかけるけれど、もちろんそのまま逃げ出す。

 このままだと、東三条家の女性たちを従えるどころか、手を出してその虜にされてしまうかもしれない。


 和樹はさっさと着替えて、自室に戻ることにした。

 そこで観月が待ち構えているとは知らずに。



次回、観月の反撃回! 続きが気になると思っていただけましたら


・ブックマーク

・↓の☆☆☆☆☆評価


で応援いただければ嬉しいです!


学校一の美少女と同居して、「あなたの子供がほしい……」と懇願させるほどベタ甘にする『クールな女神様と一緒に住んだら、甘やかしすぎてポンコツにしてしまった件について』も1巻が昨日発売ですっ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 庇護下にしたら中学生が付いてくるってマ!? [気になる点] だいぶやられてる状態ならもう頼るしかないわな。 御家のためにがよくも悪くも返ってきたか。 [一言] これは義妹が正妻ですね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ