表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/59

4 二人目の妹

 透子の母と妹が入ってきたので、和樹は慌てて立ち上がった。


 透子はかなりの美少女で日本美人という感じだけれど、それは透子の母の結子(ゆいこ)と妹の桜子(さくらこ)も同じだった。


 東三条結子は、西桜木家という七華族の家の娘で、その家格と霊力から、名門の東三条家に嫁いだ。

 学生結婚だったそうで、透子を生んだのも20歳そこそこのことらしい。だから、まだ30代なかばの上に、見た目はかなり若々しくて、童顔のせいもあって、20代前半ぐらいにしか見えない。


 透子を大人にしたら、こんな美人になるのだろうなという印象で、赤い和服を綺麗に着こなしている。透子よりも目つきが少し鋭くて厳しい印象はあるけれど。


 反対に、透子の妹の桜子はふんわかした感じの可愛い少女だった。透子や和樹より三つ年下の中学一年生。透子や観月と同じ学校に通っていて、今も制服のセーラー服を着ている。


 ただ、少し前まで小学生だったわけで、やっぱりかなり幼い印象だ。

 

 桜子は和樹を見ると、ぱっと顔を輝かせた。そして、こちらへと駆け寄ってくる。


「和樹お兄ちゃん!」


 そして、桜子は和樹に抱きついた。その小さな手が和樹の腰に回され、体でぎゅっと和樹を感じるかのように和樹にしがみつく。


 桜子は「えへへー」と和樹の胸に頬ずりし、和樹は苦笑して桜子の肩をポンポンと叩く。

 昔から、桜子は和樹にかなり懐いていた。透子と和樹が一緒にいると、必ず周りにあらわれて、一緒に遊ぼうとしていた。


 小学生だった頃は、微笑ましいということで済んだけれど……。

 和樹がちらりと、観月と透子を見ると、ふたりともじーっと和樹と桜子を見ている。さらに、桜子の母の結子が冷たい目で、和樹を見ていることに気づいてしまい、どきりとする。


 考えてみると、桜子も中学一年生であり、もう十分に女の子なのだった。男の和樹と抱きつくのはまずいのかもしれない。


 けれど、桜子はそんなことを全然気にしていない様子で、「お兄ちゃん。頭撫でて♪」なんて甘えてくる。

 まあ、そのぐらい良いか、と思って和樹が頭を撫でると、桜子は幸せそうに「お兄ちゃんの手、大きいー」なんてつぶやく。


 そこに観月が乱入した。


「ちょ、ちょっと……桜子さん!」


「どうしたの? 観月お姉ちゃん」


「か、和樹兄さんは、わたしの兄なんですからね!? あまりベタベタしないでくださいっ!」


 桜子は不思議そうに首をかしげる。そして、くすっと笑う。


「観月お姉ちゃん、わたしにヤキモチ焼いているんだ?」


「や、ヤキモチなんて焼いていません!」


「わたしみたいにお兄ちゃんに抱きついて、頭を撫でてもらったら?」


「そ、そんなこと……恥ずかしくてできません」


「心配しなくても、和樹お兄ちゃんの本当の妹は、観月お姉ちゃんなんだから」


 ふふっと桜子は笑う。たしかに、桜子は透子の妹であって、和樹の妹というわけではない。

 観月が自信を取り戻したように、笑顔になる。


「そうですよね! 兄さんの本当の妹はわたしなんですから!」


 えへんと観月が胸を張る。

 一応、観月の方が二つ年上なのだけれど、年下の桜子に振り回されてしまっていて、ちょっと微笑ましくなる。

 そういうところも和樹からしてみれば、可愛いのだけれど。


 桜子は「うんうん」とうなずいたけれど、ぎゅーと俺に抱きついたままだった。桜子は頬を赤く染め、和樹を見上げる。


「だからね、わたしは和樹お兄ちゃんのお嫁さんになりたいなあって思うの」


 桜子は愛らしい雰囲気で、そんなとんでもないことをささやいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なるほど……幼馴染の妹ちゃんも可愛い妹でしたか! こうなると主人公が何故こんなにもモテてるのか気になってきますね!!! 霊力がなかった主人公が、彼女たちを惹き付ける理由を今後それぞれの視点で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ