モッチーナ
私の名前はモッチーナ。
フルネームはモッチーナ・ナオミーラ。
前世での名前は持田ナオミ。結構な美人だからモテたのよ。……なんてね。
私は今、カイヌシ様に夢中。
珍獣さまを守る優しさと、私の腕を斬り落としたその強さに。
ああ……。でも彼は前世ではあまりにモテなかったらしくて、女性の扱いにとても疎いようなの。
「珍獣様も、ヘルリアーナ様も眠ってしまわれましたわね」
私は隣を歩く彼に話しかけた。
「そうですね。すやすやと……。かわいいな」
お二人が眠ってしまわれた今はチャンスの時。私達は今、ほぼ二人きりよ。
後ろに邪魔な犬はコロがついて来てはいるけど、存在を無視すれば数に入らない。
アタックチャンスよ。アタックチャンスだわ。
「ねえ、カイヌシ様」
私は早速アプローチをかけた。
「カイヌシ様はどのような女性がお好みなの?」
「女性……ですか」
彼は恥ずかしそうに、でも答えてくれたわ。
「ブロンドの長い髪に、碧い美しい目、華奢な身体で剣術使いが好きですね」
私は自分の真っ黒な髪を、黒い目で恨めしそうに見るしかできなかった。持っているものも剣に似てるっちゃ似てるけど、でも包丁だから、違うんでしょうね。
でも、理想はあくまで理想。
現実にはまったく違うタイプの女性を好きになるなんて、よくあることよ。
彼は続けて言った。
「僕、実はロリコンなんですよ。14歳以下の女性しか愛せないんです」
私は言葉を失った。
私はどう見てもロリータではない。むしろ大人の色気をムンムンもっちもちさせている。
自慢のこの大福餅のような胸も、彼にとってはマイナスポイントでしかないというの?
でも明日、苦労してブロンドヘアーにして、碧いカラコンを入れて、どうにかロリータ体型に見せられる服を買おう。
あなた好みになるから、愛してほしい。
彼が顔を赤らめて、また言った。
「何より、二次元の少女しか愛せないんです」
私は包丁を振り上げた。
私のものにならないのならば、その望みがないというのならば、せめてあなたのその首が欲しい。
ねえ、いいでしょう?
毎晩あなたの首を抱いて眠りたいの。
起きたら目覚めのキスを交わしたいの。
ねえ、いいでしょう?




