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地獄の誓い

 ヘルリアーナがへるたんになった。


 巨大黒猫が小さな人間の女になった。


 描写してくれ、飼い主。


「うん。真っ黒な髪をツインテールにして、頭にネコ耳が乗ってる。服装は……、黒のボンデージだな」


「ぼんでーじって、何だ」


「SMファッションだ。露出の多い、ビニールっぽい黒の、いわば女王様スタイルだ」


「でもあいつ、黒猫だろ? なんで肌が白いんだ?」


「本人に聞いてみろよ」


「やだ。おれ、あいつ、怖い」






「にゃあ、カイヌシ」

 へるたんがニヤリとしながら言った。

「ご苦労にゃ! よくぞ犬の汚らしい店をブッ潰してくれたにゃ!」


「あなた……ヘルリアーナさんなの!?」

 犬が言った。

「どうしたんですか、その姿……。っていうか、よくもウチの店を潰してくれましたね!」


「わあっ!」

 へるたんが飼い主の後ろにサッと隠れた。

「犬……! 犬……こわいよぉっ!」


 急にかわいくなった。目が涙でうるうるしてる。


「よしよし」

 飼い主がなだめる。

「怖くない。わんわんは怖くないよ」


「わんわん怖いのぉっ!!」

 泣き叫ぶ。本当にこれ、あの巨大黒猫か。


「ヘルリ……へるたんも一緒に歩いてくれるんですね」

 飼い主がしゃがんだ。あ。これ、子供と話す時のポーズだ。

「心強いです」


「本当にゃあ?」

 へるたんが笑った。

「おまえ、強いから好きにゃ! 一緒に何かをブッ潰すぜよ!」


 懐かれてる。

 よかったな、飼い主。モテモテだぞ。


「地獄でモテ期、来られてもな……」

 飼い主が贅沢言ってる。


 そんな飼い主を眺めながら、モッチーナがクククと頬を赤らめて笑ってる。


 なんかおれたち仲良しだ。いいな、仲良しって。なんか、いい。みんなでバトルロイヤルして遊びたくなる。







 おれたち5人はまた地獄を歩き出した。

 どこまで行っても同じ景色だ。サップーケーだ。


 おれは肉球が柔らかいので、飼い主の首に巻きついて移動だ。楽ちん。


「それにしても、地獄で善行って……何をしたらいいんだろうな」

 飼い主がおれに言った。たぶん、おれにだ。


 おれは答えた。

「おれに聞かれても知らんぞ。頑張れ、飼い主」


「ああ……。だがな、うーたん」


「なんだ」


「さっき、ケンさんの店で、おまえ、死にかけただろ? 待てと言ったのに突っ込んで行ったろ? もう、あんなことはやめろよ? おれが『待て』と言ったらこれからは待つんだ。いいな?」


 自由にさせてくれないということだな。ムカついたので、おれは言い返した。


「おまえこそ! おれを助けて死にかけてたろ! あんなのもうやめろ。おれが生き残ったって、ひとりじゃ何もできないんだからな! 1人だけ生き残るならおまえが生き残れ!」


「なんだと!?」

 飼い主が怒った。

「おれは何があってもおまえを守る!」


「だーかーらー!!」

 おれも怒った。

「おれがひとりで生き残ったってどうしようもないだろ! おまえがいないと何もできないんだから!!!」


「じゃあ、おれは死なん! おまえも死ぬな!」


「おう! おまえ死ぬなよ! おれも死なないからな!」


「死ぬなら、2人一緒でしか死なんぞ! いいな!?」


「おう! 死ぬ時は2人一緒だ! わかったな!?」


 飼い主がおれの顔の前に人差し指を出して来た。おれはそれを強く甘噛みした。


「痛い!」

 飼い主がそう叫んで、おれの口の中に指を強く突っ込んだ。


「苦しい!」

 おれはハガハガと顎を動かし、飼い主の指を奥歯でぎゅうぎゅうと噛んだ。



 こうしておれたちの地獄の誓いが交わされた。



 おれたち、産まれた日も全然違うし、違う動物だが、死ぬ時は同じ日、同じ時を願った。かっこいい! なんかアレみたいだ。『ざんこくし』。くくっ!




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