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メイド・イン・めいど

「お帰り下さいませ、ご主人様」

 開口一番、出会い頭に彼女はそう言った。

「えーと……、ご主人様っていうのは、僕のこと?」

「もちろんです。私は、あなたのメイドですから」

 へえ、僕のメイドかぁ……。

 え? めいど? 僕の?

 疑問符を浮かべ、僕が硬直していると、

「では、いきましょうか」


 そう言って彼女は僕を連れて進みだした。

 知らない廊下だ。

 白亜の壁面は一切の傷も、模様もなく、いっそ奇妙であるほどだ。

 無機質極まりない、生命感から離れていくような感覚すら覚えるような廊下。

 

「えと、今、僕はどこへ向かっているのかな……?」

 不安に耐え切れなくなって、僕は二歩ほど先を行くメイドさんに尋ねた。

 彼女は立ち止まり、振り返ると微笑とともに首を傾け、言った。

「冥土です」

 冥土?

 というと、死後に行くあれか?

 つまり、僕は今から死ぬのか?

「はい、あなたの肉体は今まさに生死をさまよっているところです」

「え……」

 平然と心を読まれた……?

「メイドですから」

「ああ、そうだねメイドさんだもんね……。じゃなくて、僕は、死ぬの!?」

「はい。というより、今まさに死につつある、という状態でしょうか」

「今まさに……?」

 何を言っているんだろうか。

 生死の境、でもなく、死につつある……?

「はい。申し訳ありませんが、もう戻れません。入り口は、先ほど閉じてしまいました。もう、出口以外は残っていません」

「ここは……」

「はい。ここが、どうかいたしましたでしょうか」

「ここは、どこなんだ?」

「もういい加減に気づいているのではないですか? 先ほどから、見ていないふりをしていらっしゃいましたが、わかってらっしゃいましたよね? だって、ここには」

「言うな」

「ここには」

 彼女が続けるより先に、僕はしゃべりだしていた。

 溢れ出るように、言葉は次から次へと漏れ出した。

「ここにあるのは、僕の過去なんだろう? 僕が、これまで生きてきた歴史を振り返る、そういうところなんだろう? あちらこちらにある映像、全部見覚えがあった。そうさ。わかってたよ。きっと、ここは何らかの特殊な場所なんだろうって。君の言葉で、僕は死んだんだってわかった。でも信じたくなかった。だってそうだろう? 死んだときの記憶もないのに、死因もわからないのに、死んでしまったなんて、信じられないだろう?」

「ええ、ええ。わかります」

「なにがわかるっていうんだ! 突然死んだんだぞ?」

「私は、あなたをずっと見てきましたから。ここは、あなたの生と死をつなぐ道。冥途です。私はあなたと共にあって、あなたの死後の道案内のためだけに存在しました。この道案内が終われば、この道も消え、私も役目を終えます」

「え……」

 そんなことがあっていいのか? だってそれは、そんなあり方は、あまりに悲しい。つらい。

「ええ、かなしいですよ。いやです。だから、最初に言ったでしょう?」

 また、首をかしげて彼女は微笑んだ。


「『お帰り下さいませ』と」





以前書いたもののリメイクです……、というには変えすぎだろうか……?


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