表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

メイド・イン・めいど

掲載日:2021/12/13

「お帰り下さいませ、ご主人様」

 開口一番、出会い頭に彼女はそう言った。

「えーと……、ご主人様っていうのは、僕のこと?」

「もちろんです。私は、あなたのメイドですから」

 へえ、僕のメイドかぁ……。

 え? めいど? 僕の?

 疑問符を浮かべ、僕が硬直していると、

「では、いきましょうか」


 そう言って彼女は僕を連れて進みだした。

 知らない廊下だ。

 白亜の壁面は一切の傷も、模様もなく、いっそ奇妙であるほどだ。

 無機質極まりない、生命感から離れていくような感覚すら覚えるような廊下。

 

「えと、今、僕はどこへ向かっているのかな……?」

 不安に耐え切れなくなって、僕は二歩ほど先を行くメイドさんに尋ねた。

 彼女は立ち止まり、振り返ると微笑とともに首を傾け、言った。

「冥土です」

 冥土?

 というと、死後に行くあれか?

 つまり、僕は今から死ぬのか?

「はい、あなたの肉体は今まさに生死をさまよっているところです」

「え……」

 平然と心を読まれた……?

「メイドですから」

「ああ、そうだねメイドさんだもんね……。じゃなくて、僕は、死ぬの!?」

「はい。というより、今まさに死につつある、という状態でしょうか」

「今まさに……?」

 何を言っているんだろうか。

 生死の境、でもなく、死につつある……?

「はい。申し訳ありませんが、もう戻れません。入り口は、先ほど閉じてしまいました。もう、出口以外は残っていません」

「ここは……」

「はい。ここが、どうかいたしましたでしょうか」

「ここは、どこなんだ?」

「もういい加減に気づいているのではないですか? 先ほどから、見ていないふりをしていらっしゃいましたが、わかってらっしゃいましたよね? だって、ここには」

「言うな」

「ここには」

 彼女が続けるより先に、僕はしゃべりだしていた。

 溢れ出るように、言葉は次から次へと漏れ出した。

「ここにあるのは、僕の過去なんだろう? 僕が、これまで生きてきた歴史を振り返る、そういうところなんだろう? あちらこちらにある映像、全部見覚えがあった。そうさ。わかってたよ。きっと、ここは何らかの特殊な場所なんだろうって。君の言葉で、僕は死んだんだってわかった。でも信じたくなかった。だってそうだろう? 死んだときの記憶もないのに、死因もわからないのに、死んでしまったなんて、信じられないだろう?」

「ええ、ええ。わかります」

「なにがわかるっていうんだ! 突然死んだんだぞ?」

「私は、あなたをずっと見てきましたから。ここは、あなたの生と死をつなぐ道。冥途です。私はあなたと共にあって、あなたの死後の道案内のためだけに存在しました。この道案内が終われば、この道も消え、私も役目を終えます」

「え……」

 そんなことがあっていいのか? だってそれは、そんなあり方は、あまりに悲しい。つらい。

「ええ、かなしいですよ。いやです。だから、最初に言ったでしょう?」

 また、首をかしげて彼女は微笑んだ。


「『お帰り下さいませ』と」





以前書いたもののリメイクです……、というには変えすぎだろうか……?


感想、アドバイス等あれば書いていってください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ