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サイコパスくんと自殺少女  作者: あの1円足りません
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出会ってしまった...


《第一話》


(僕は普通じゃない...

そう初めて思ったのは小学5年生の時だった。

皆から好かれていた友達の急な転校

けど僕には何も思う所はなかった。

友達を思い泣く子を見て不思議だなと首を傾げる有り様だ

べつに理解が出来ていない訳ではなかった逆に言えば人より変に理解をし過ぎていたのだ

友達はあくまで他の小学校へ行くだけであって怪我をしたわけでもこの世から消えるわけでもない、連絡を取りたかったら番号を教えて貰えばいいし会いたかったら住所を教えてもらえばいい、むしろ今日皆にお別れパーティーみたいな物を開いてもらい本人は楽しそうではないか

悲しむ意味が分からない。


と頭の中で論理を組み上げていた。

今思えばそれが一種のサイコパス的考えを既に持っていたのだと僕は理解する。)



【現在 高校2年生】



(そんな僕の名前は桜井(サクライ) (サトル)このクラスでは中の上のポジションでよくしゃべる明るいキャラで通している。

もちろんこれは表だけの演出である。

サイコパスというのは一見すると無口で何を考えているか分からないというイメージを持たれるが実はよくしゃべり社交的な人が多いのだ


そして)


友人『さーとる!放課後この面子でカラオケ行こうって話ししてんだけど悟も行こうぜ!』


悟はちらっと面子を確認する


悟『お、いいねー...あ!ごめーん今日も家の手伝いあるんだ!』


(始めにフットワークが軽く行く素振りを見せてから思い出した様に口実を口にする。

これが相手を不快にさせない自然な断り方である)


友人『あーそっかお前の家畳屋だっけ?もう跡継ぎ的な感じ?』


(無論手伝いなど嘘だ、ただ実家が家業を意図なんでいるのは本当だからそれを口実に利用させてもらっている。)


悟『あはは...俺は継ぐ気は無いけど親が急がしそうにしてっからさ、ごめんな!また声かけてくれたら嬉しいぜ』


友人『おぅ!また今度な!』


(断った本当の理由は面子もあるが僕は基本的に突然割り込んでくる予定は却下する

今日1日の自分の楽しみ方は既に決めているそれより楽しいものでない限りは食い付きはしない

無論カラオケやボーリング、ゲームセンターなど多数人の遊技に興じたい時は自ら声をかけ誘う

だから付き合いが悪いイメージも友人からは持たれない)


放課後のチャイムが鳴り響く


悟『さて帰るか』ボソッ


校門へと向かう悟


ふと隣を見るとソフトテニス部の練習風景が目に入る


悟『熱心だね~』


(この学校の部活動は強制では無い、だから生徒の約半分はバイト組だ僕は実家の家業という特権を大いに生かし忙しいふりをする有意義な帰宅部ってことだ)


悟は校門前で立ち止まり我が校舎を背に振り返る


(フフフッこれが僕にとっての有意義ハッピーライフ!)


悟『ふははは...』ボソ


校門入り口で立ち止まり不気味に微笑む悟を見て周りにいる生徒がざわつく


悟は即周りの目線に気づき顔を真顔へと修正する


(ん//恥ずかしい!やってしまった!僕は自分の事をよく知っているだからこそ分かる自分が今他人からどう見られているのかがそして僕は隠れ中二病で尚自分好きのナルシストだということも)


悟『ふぅ~...さて帰るか』


悟は斜め上を見上げ風景に浸る

足を校門側へ運ばせようと振り向くその時だった


悟『ん?』


校門側へ振り向いた悟は何か違和感を感じまたすぐ校舎側へと振り返る


(なんだ?今校舎の上の辺りに何かいたぞ?)


悟は目を細めじっくりと見てみる


悟『ふぁ?』


そこには屋上の金網を登ろうとしている女子生徒の姿あった

と同時に悟の足は即座に校舎へ向かい走り出していた

颯爽と校舎へ入り下駄箱をスルーすると靴のまま廊下へと足を踏み入れる

周りの生徒は全速力の悟を不思議そうに目で追う


悟『ハァハァ...ハァ..ハァ....』


(あの場では気づいた人は僕以外いない本来ならばその場で指をさし周りの生徒へ知らせ教師や警察に任せるのが彼女の命を救うもっとも効率の良い方法だろう、だが僕はそんな一般的な展開望んではいない!自殺生徒を助けに行くだなんてアニメやドラマみたいでテンション上がるじゃねーか!あーアドレナリンが出るぅ!こんな快感を他の奴に奪われてたまるか!彼女の命など正直どうでもいい今こうしてザ・正義の為にと言う大義名分がたまらない!まぁもしも助けられたなら彼女に命の恩人として今後それをネタに学生の間は利用させてもらうか)


悟は階段をかけ上がりながらまたしても不気味に微笑む


屋上へ繋がる階段を上がると目の前には半開きになっている扉が現れる


ッバン!!


悟『ハァハァハァ..ハァハァ.......え?』


悟の目に飛び込んで来たのは金網に大の字になってへばり付いている女子高生だった


(まるで網戸に爪が引っ掛かって取れなくなった猫みたいだな...)


悟は彼女がこちらにまだ気づいてないと踏み気配を消して近寄る


大の字の彼女へと目の前まで迫った


(この光景は、シュールだな)


『...あの?』


悟『っふぁ!!』


不意に彼女に話し掛けられ悟は取り乱す


悟『気づいてたのかよ!』


『はい、私人の殺気には敏感なんです。』


(殺気...)


悟『よ、よく気づいたな』


(こいつにとっては他人=敵なのか?)


『で、あのお願いがあります。』


悟『ん?なんだ?』


『金網の向こう側まで行きたいので下から押して持ち上げて頂けませんか?』


悟『断る』


悟が食いぎみに答えた後少し間が空く


『...ではここから下ろして頂けませんか?』


悟『OK 』


悟は手を前に出し人を受け止める体勢を作る


悟『さぁ思い切って手を放せ受け止めるから』


『え?そういう形なんですか?』


悟『こういう形だ!あ、パンツ見えただの面倒な事は言うなよ?』


『大丈夫です短パン掃いてますから』


悟『...そうか!よし来い』


彼女は怖がりながらも両手を放し飛び降りた


『きゃー!!』


悟『うわっっ!!』


ドーン!!


『痛!いっててて...え?あの、なんで受け止めてくれなかったんですか?』


彼女はお尻から地面へ落ち苦痛の表情を浮かべている悟は1.5メートルほど後ろへ一歩後退りをしていた。


悟『あーごめん君の体系的にまぁ40キロ後半くらいかなって思いその重みが落下して来るのをいざ受け止めれるのか?と頭で考えてる内につい反射的に避けてしまってね 』


『ぅ"...まぁ貴方が怪我をする可能性もありましたし私は痛みに慣れてますから..ゴホッ...正しい判断でしょう』


(痛みに慣れてるってやはり原因は虐めか)


悟『そうなのか?まぁ悪かったな』


彼女は振り返りそこで初めて悟と面と向かって顔を合わせる

メガネ&三つ編みのまさしく絵に描いたような暗い少女がそこにはいた。


(暗い!暗すぎる!なんだこの子は?)


彼女は立ち上がりスカートの汚れを叩く


『いいえ...まぁ貴方には期待してますので』


彼女の目付きが変わる


悟『?』


『ありがとう御座います。佐藤さん』


と思いきや彼女は急に笑顔になる


悟『桜井です。』


『あー桜井サトシさん』


悟『おしい桜井 悟だ!って一体何なんだよ!』


彼女は自分のスマホを取り出し何かを打ち始める


『完了です。こちらを見て下さい。』


彼女はスマホの画面を悟に向ける

そこには【私はこの人たちの非道な行いにより結果死を選びました。】その下に何人かの名前が記載され最後に桜井 悟と書かれていた。


悟『え!?』


『これがどういう意味か貴方なら分かりますよね?』


そう言うと彼女は不気味に微笑む


その姿に悟の背筋が凍る


(一見すると何でもない事にも思えるがこれは非常にまずいな)


『うふふその顔は理解したようですね、そうですもしも私が死んだらこのスマホのメモが表に流出しいくら関係無いと言い張っても世間は貴方をどう見るのでしょうね』


悟『ぅ"...僕以外の名前の奴らは本当にお前を虐めてた奴等だろ?お前が死んだら僕は別の場所でお前を苦しめた人物としてレッテルを貼られるってことか、しかも最悪な事に僕にはそれを弁護してくれる味方もいないって訳か』


『素晴らしい洞察力です。さすが偽者さん』


悟『偽者?』


『はい貴方は私を本気で助けようとはしていませんでした。ただ面白そうな臭いがしたから近寄って来ただけのただの自己中さんって事です。』


二人の間に風か靡く


(な、なんだこの子...)


悟は心をここまで読まれたことに動揺を隠せない


悟『どうしてそう思う?』


『私はあらゆる方法で過去4回ほど自殺を試みたのですが残念ながらその度に誰かに止められ命を救われてしまいました。つまり本気で死のうとしたからこそ分かるんです。本気で救おうとする人の気持ちが』


(本気か、なるほどこの17年間うわべだけで渡り歩いて来た僕じゃ浅はかだったってわけだ一つ為になったな)


『さてここからが本題です。桜井 悟さん貴方には私の悲願を叶えるため協力して頂きます。もし達成したのならば私のスマホから貴方の名前を削除し私自身も自殺をやめましょう』


悟『それは脅迫ってやつか?』


(隙を見てあのスマホを奪うか?いやそんなことしても他の物に書かれれば同じことか)


悟『で、具体的には僕は何をすればいいんだ?』


『ご理解ありがとう御座います。簡単です。今お見せしたスマホに書かれている貴方以外の人物全員に対し私の変わりに復讐をして頂きたいのです。』


悟『復讐?例えば何をすればいいんだ?』


『それはお任せ致します。私の憎しみが晴れ満足出来ればクリアです。』


悟『投げやりかよそんなゲームみたいにしやがって』


『いいえ貴方の流儀に沿っただけです。』


悟『流儀?』


空模様が険しくなり雨が降る直前の様な嫌に生暖かい風が靡く


『だって貴方は...』



【桜井 悟の部屋】



バサッ!!


悟は急に自分の寝ていた布団を蹴りあげ飛び起きる


悟『ハァーハァーハァーハァー...』


目覚ましを見る


-3:15-


悟は頭を押さえ今日の出来事を思い出す。


悟『あいつ...』



【回想 学校屋上】



『だって貴方は...サイコパスでしょ?』


悟『え?...なぜ?なぜ分かるんだお前!』


雨がぱらつき始め悟の頬を伝う


『さぁ校舎に入りましょう桜井さん』


そう言うと彼女は屋上の入り口へと歩いて行く


悟『おい!』


悟の呼び掛けには応じはしなかった。


『早く来てください。扉を閉めますので』


悟『クソが』


悟も渋々校舎へ入る


ガチャ!!


彼女は屋上の鍵を取り出し施錠する。


悟『なんでお前屋上の鍵なんて持っているんだ?』


『天文部員だからです。今活動しているのは私だけですが』


悟『この学校で一番持っていては危険な人物によく教師も渡したもんだ、で?活動ってのは自殺をすることか?』


『そうですね間違ってはいません。目的はそこにありました。あとはお昼など虐められないよう逃げこむ為の場所とこの屋上からの人間観察といったところでしょうか』


悟『ふーん、金網のド真ん中で大の字になっていたのも一応自殺の活動中だったってわけか』


『あれは登り始めたのは良かったのですが途中力尽きてしまい上へと進めなくなり、かと言って下にも降りるのが怖く結果あのような形になってしまっただけです。私高所恐怖障なんです。』


悟『高所恐怖障の奴がなんで飛び降りを選ぶんだよっ』


『自殺と言ったら飛び降りです。これは自殺少女としてのプライドです。』キラ


彼女は眼鏡に手を添え決めポーズを取る



悟『自殺少女ね...』ボソ


『では桜井さん明日お昼にここへまた来て下さい。ターゲットの詳しい詳細を教え致します。では』


彼女は階段を降りて行く


悟『待て!』


『ん?まだ何か?』


悟『これからお前の元で働こうってのにまだ名前すら聞いて無いぞ』


『柏[カシワ]と申します。では』


柏は軽くお辞儀をし去って行った。



【回想 終了】



辺りはシーンとし時計の音だけが響き渡る

悟はベッドの上でぼーっと座り尽くしていた


悟『柏...名字か名前かも分からねぇクソ!あいつが生きている限り僕の学園生活は休まらない、かと言ってあいつが死ねばもっとでかい爆弾を落とされる』


悟は頭を抱え込み悩む


悟(どうする?柏を眠らせて捕まえ何処か人けのない場所で監禁でもするか?精神的に究極まで追い込み喋れないレベルの廃人にしてやれば...そうだ元々虐められていたのなら僕は疑われない...)


悟は不気味な表情を浮かべる


悟『だめだ!あまりにもリスクが高い!何より柏に精神的な追い込みは効果がない!...くそっ八方塞がりだ』


悟は勢いよくベッドへと横たわる

その反動で悟のスマホがベッドから落ち待ち受け画面の光が薄暗く電灯した


悟はスマホをベッドから手を伸ばし拾いしばらく見つめる


柏にスマホを向けられている時を思い返した。


悟『クソ... ....ん?待てよ』



【学校お昼 屋上入り口前】



柏が既に待っている


悟『...お、お待たせ致しました。』


悟がおどおどした様子で柏の前に現れる


柏『来て下さりありがとう御座います。』


悟『なぁこれは自分の復讐だろ?なんで俺を利用する必要があるんだ?』


柏『昨日も言った通り私では自らの死でしか彼らに復讐ができないからです。』


悟『だから俺の弱味を握って飼い犬の様に利用するのか?俺はお前が自殺をしようとしていたところを助けたんだぞ?なのに感謝どころか勝手に俺を加害者にしたて上げて何が楽しんだ?』


悟が一歩前へと柏に近づく


同時に一歩下がる柏


柏『あ、貴方は今私には逆らえない立場ですよ?大丈夫です。この復讐が終われば規定通り貴方の名前を消します。』


悟『名前ってのはお前のスマホにメモしてあるお前を虐めた加害者リストのことで間違えないんだよな?』


柏『ええ間違えはありません。ですが今さら何の確認ですか?それなら昨日も話したじゃ......?』


柏は悟の異変に察する


悟『・・・フフッ』


悟の表情が不気味に微笑む


悟は胸ポケットへ手を入れボタンを押す


ピッ!


悟がゆっくり胸ポケットからスマホを取り出した。


柏『全て録音していたんですね』


悟『ふふふっあははははははははぁーー~!!さすがに気づくよなぁ?まぁけど残念だったな!お前は自ら僕を利用したと認めてしまったぁ!つまりお前が死のうがこの録音さえあれば問題無いってわけだぁ!あひゃひゃひゃひゃー!!!』


柏『随分と嬉しそうですね?』


悟『いゃ~お前の言う通り僕はやっぱりゲームが好きみたいでね!お前との駆け引きに勝てた事が嬉しくて嬉しくて』


柏『貴方はそうやって周りを騙し嘘で身を固め他人をあざ笑うそんなゲスい生き方を一生するんですね』


悟『は!なんとでも言え!それが利口な生き方なんだよ!自身が楽しくなる様周りを利用するそれの何が悪い?多かれ少なかれ皆やっていることだろ?』


柏『そうかもしれませんね、さぁ私はこれからどう致しましょう?』


悟『さーな!もう僕には関係ない死にたいなら勝手に自殺すればいい!』


柏『分かりました。では自殺致します。』


柏は内ポケットに手を入れる


...ピッ!


悟『!?』


柏も自身のスマホを悟に見せつけ微笑む


悟『このクソが!.. だ、だがな!僕の方が真実を録音している以上お前が何をしようと意味はない!先にこの僕の録音したデータを公開すればお前の負けだ!』


柏『なるほどお好きにしてください。私は貴方が公開したあとにこの録音を編集した後公開致します。』


(編集だと?いかん!僕の枷の外れた言動と自殺すればいいと言い放ったのが致命的だ!柏めわざと言わせたな)


悟『は!ならこちらも編集してやるさ!そして僕もお前が公開した後に公開する!』


柏『ほぅ』


(よし!咄嗟の返しだったが上出来だ!この場合後から公開した方に分がある)


柏『なるほどつまりお互い先には公開できない、よってこのデータは意味をなし得なくなったわけですね』


悟『さーて今度こそ手詰まりだな!自殺少女!!』


柏『はぁ......』


柏はポケットから財布を出し始める


悟『何してんだ?』


柏はその財布を悟に向け投げ渡す


悟『?』


宙を舞う財布はクマの絵柄の付いたまるで子どもが所持するようなマジックテープ式の財布だった

悟は反射的に受け取る


バンッッ!!


するとそのタイミングで屋上の入り口が開き柏が走り出して行く


悟『しまった!』


悟は咄嗟に後を追いかける

柏の走り出した方向には既に脚立が用意されていた


(柏のやつ!ここまで準備していたのか!)


柏は脚立を駆け上がり金網の上まで到達する

同時に足で脚立を蹴り倒す


悟『クソッ!』


柏は大きく息を吸い込んだ


柏『さくらい さとるの為にーーー!!わたしはしにまーーーす!!』


校内中にとてつもない大きな声が響き渡る


悟『えーーーーーー!?』


外にいる生徒はもちろん

下の教室の窓から覗く者もいた


生徒『え?何?』『おい!屋上!!』『キャーー!』『自殺!?』『あぶねーぞー!!』『さくらい?』『誰だ?さくらいさとるって?』ざわざわ


柏は一気に注目を浴びる


(嘘だろ!嘘だろ!嘘だろ??こいつとんでもないことしやがって!今までの戦略が全てパーだ!クソ何か手はないのか?何か??)


柏の手が金網の一番上に届く


柏『これで貴方はおしまいです。...悟くん』


悟を上から見下ろす柏の髪が風に揺られ靡き渡る


悟は下を向いたまま悔しそうに握りこぶしを作っている。


悟『...いいだろう!こうなりゃ道連れだ!柏!!』


悟が大きく息を吸い込む


悟『かしわーーーー!!俺が悪かったーーー!!お前のことを愛しているーーー!!大好きだーーーーーーーーーーー!!!』


またしても校内中に響き渡る


柏『え"ッッ!?あっ!』


不意に力が抜け柏の手が金網から離れるその勢いで悟目掛けて落下した


ズシッッ!!


悟にダイレクトアタックを決め二人ともその場で痛みもがく


悟『クソッ!避けれなかった!』


柏『イッタァーーー!!』


生徒『おい!助かったみたいだぞ?』『てか恋人同士の知和喧嘩かよw』『あーマジびびったぁ』『てか大声で恥ずかしいw』ざわざわ


バンッッ!!


屋上の扉から教員たちが勢いよく入って来る


先生『コラァーーーーー!!!』


(その後は僕も柏も手荒く職員室へ連行され2時間こっぴどく説教の嵐だった、そして不幸にも僕と柏は...)


[職員室]


先生『まったく!最近の若いカップルっは本当に何を考えているんだか!もっと慎ましく付き合えないのか?』


(完全恋人認定されたのであった。)


2時間の説教が終わり職員室を後にする

二人は何も話すことなく空気も体もどっしり重い中廊下を歩く


辺りは丁度放課後に差し掛かっていた


生徒『おいあのふたりだぜ!』『ヒューヒュー』『カッコ良かったぞ彼氏!』『仲直りできたかーw?』ざわざわ


柏『あの桜井さん』


悟『なんだ?』


柏『どうしてこうなったんですか?』


悟『僕も聞きたい』


柏『...屋上に行きませんか?』


悟『また自殺か?』


柏『そうしたいところですが話し合いましょう』


悟『そうしましょう』


[屋上入り口前]


柏が屋上の鍵を取り出す。


悟『お前それさっき先生に没収されたろ?』


柏『スペアを作っておいたんです。私も逃げ場所と自殺スポットを失なうのは困りますからね』


悟『勝手に自殺スポットにするな』


ガチャッ!


生ぬるい屋上の風が二人を包む


屋上の外から死角になる金網越しで腰を落ち着かせた。


その後しばらくの無言が続く


柏『...さすがですね』


悟『...何が?』


柏『元来あの自殺の時点で私が勝っていました。貴方は私の死後下手をすれば殺人犯という汚名を着せられ私の呪いに一生苦しんだことでしょう』


悟『ハハ呪いを解く呪文が口から咄嗟に出たのは普段の行いかな、けど何にせよゲームは僕の負けだ僕たちが恋人だと認定された以上もうお前に何かある度に自然と僕が絡んでくる つまりもう赤の他人として無かった事にする僕の戦略が完全に敗退した。』


柏『なるほど、ですがこの展開は私も想定外です。』


悟『同じくだ、まぁいいだろ約束通りお前の復讐に加担してやる』


柏『なら一つ付け加えて差し上げます。復讐をやりとげて頂けたら私はこの学校を去りましょう勿論桜井さんとの恋人設定も自然な形で風化するよう努めます。如何ですか?』


悟は返答をすぐにはせず自分のポケットをあさる


柏『また録音ですか?』


悟『違うもう録音する意味はない、あった!ほれ!』


悟が差し出したのは柏から投げ渡されたクマの財布だった


悟『久しぶりだな平山(ヒラヤマ) (スモモ)今は柏 李って言うのか』


柏『...やはり思い出してしまいましたか』


悟『この財布を見るまでは完全に分からなかったよ』


柏に財布を差し出す。


柏『それは元々貴方の物です。死ぬ前に返しておこうと思いまして』


悟『確かに僕の財布だったな小学生の時お前に虐められて取られたんだっけ?』


柏『...その通りです。』


悟『しかし驚いたよ小学時代の平山 李は弱い者虐めをしていた女子のリーダー的人物だったはずだ、それが今じゃ180°違うどころか昔の面影ゼロの別人ときたもんだ』


柏『その切はなんと言いましょうか不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。』


悟『いや今の方が不快です。』


柏『...ですね』


悟『はぁ...』


悟は空を見上げる


(そうそもそも僕が自分自身人とは違うと感じ始めた切っ掛けでもあった。僕は平山 李が転校し去るまで虐めらっ子だった。けど彼女が去るその日...)



【回想 小学5年生】



前の黒板には平山 李ちゃんありがとうと大きく書かれている。


柏を囲む生徒たち


それを遠目で見ている悟


(よし、これでもう李ちゃんに虐められなくてすむ嫌なやつが転校するなんて本当に僕は付いている)


生徒たちは泣きながら柏と手を繋ぎ別れを惜しんでいる


(...それにしても不思議だ

あいつはあくまで他の小学校へ行くだけであって怪我をしたわけでもこの世から消えるわけでもない、連絡を取りたかったら番号を教えて貰えばいいし会いたかったら住所を教えてもらえばいい、むしろ今日皆にお別れパーティーみたいな物を開いてもらい本人は楽しそうではないか悲しむ意味が分からない...ん?)


不意に柏と目が合うそれを反射的に反らす悟


(な、なんだ今の?)


先生『おーい桜井、次はお前の番だ平山にお別れの言葉を言ってあげなさい』


悟『え?ぁ、はい。』


(転校をする子と一人一人両手で握手をしながら最後のお別れの言葉を伝える先生考案の面倒くさい儀式だ)


柏の前に悟がやって来る


先生『さぁ手を繋いで』


柏と悟が両手を繋ぐ


(ん?)


柏『悟くんじゃーね』


悟『う、うん』


と一言交わしただけですぐ手を離す。


生徒『それだけかよ~』『もっと何か言いなよ』『あっさり過ぎ~』ざわざわ


軽い罵声を浴びながらも早足で自分の席へと戻る悟


先生『はーい静かに少ない言葉であっても伝えることが大切なんだぞ、では次の人...』


その後お別れ会は最後まで続いた。


[放課後 小学校屋上]


悟が屋上への階段を上がると普段は開いてない屋上の扉が開いていた。


悟は怖がりながらもにゆっくり屋上へと出て行く


悟『眩しっ!』


夕日が照りつけるなか柏が空を見上げて立っていた。


柏『よかった、悟くん来ないかと思ったよ』


悟は手に握った紙を見せる


悟『だって来ないと怒るって書いてあったから』


この紙は先ほど手を繋いだ際柏からこっそり渡されたものだった


柏『アハハ、来なかったら悟くんの上履きでも捨てあげようかと思ったよ』


悟『ねぇ李ちゃん最後に何の用なんだい?』


柏『用って用は無いんだけどさ、もうあんたを虐められないって思ったら名残惜しくてさ~ほらランドセルの中にカエル入れたり教科書隠したりホースで水かけたり楽しかったよね~』


(いったい李ちゃんは何を考えているんだ、どれも僕側からしたら迷惑でしかなかった、けどこれで最後今日を乗り越えれば明日から彼女のいない平和が僕には訪れる)


悟は少しにやつく


悟『...そうだね』


柏『はぁ、ねぇ悟くんなんであんた自分が虐められていたか分かる?』


悟『さぁあれが虐めなのかどうかも僕には分からないよ』


柏『やっぱり違う悟くんは他の子とは何かが違うの』


悟『違う?』


柏『上手く説明できないけど反応が違うと言うか抵抗しないと言うか、あー!とにかくムカつくのよ!!』


(自分は人とは違うそれは何となく知ってはいるけどまだうまく理解はできていない、なるほど彼女はそこのうやむやに腹が立っていたのか)


悟『李ちゃんごめんね』


柏『なんであんたが謝るのよ!』


悟『違うの?』


柏は顔をうつ向かせる


柏『えーと、その...』


悟『?』


柏『あー悟くんにこれ返す』


柏はクマの財布を差し出す。


悟『別に新しいの買って貰ったし大丈夫だよ』


柏『いやいやそう言う問題じゃないでしょ、はい!』


財布を悟に押し付け受け取らせた


悟『ど、どーも』


少し沈黙が流れる


柏『あ、あのね悟くん!...私悟くんのことが...す、好きなの//』


悟『...』


柏『あ、あのその財布の中に私の新しい住所と番号の書いた紙入れておいたからよかったら連絡して欲し...』


悟『大丈夫』


柏『え?』


悟『いゃ李ちゃんと今日でさよならなのになんで連絡するの?そりゃ李ちゃんは僕を虐めるのが好きなのは知ってるけど学校が変わってまで僕じゃなきゃダメな理由が分からないよできれば向こうの学校で相手を探して欲しいな』


柏はしばらく無言になる


柏『...なるほどやっぱりあんた頭おかしいよね、ぃゃ私もか』ボソ


バサッ!


悟『うわっ!』


柏は悟からクマの財布を奪い突き飛ばす。


柏『アハハそうするわ!向こうの学校で新しいオモチャ見つけるわよ、この財布はやっぱり貰っておくね!アハハ...じゃあね悟くん』


と言いながら柏は去っていく


悟『なんだったんだ?』



【回想 終了】



(今思えばあれは完璧な告白だったんだな...あークソ!ただでさえ接しにくいやつなのにさらにややこしい事に)


柏はじっと悟の顔を見ている


悟『うぉ!なんだよ?』


柏『いえもしかしたら気にしていらっしゃるのかと』


悟『なんの話だ?』


柏『昔私が桜井さんに告白をしたお話です。』


悟『ブォッッ!!』


(おいおいド直球かよ!)


柏『安心して下さい。貴方に迷惑をかけた平山 李はもういません』


悟『え?』


柏『貴方の言う通り別人なんですよ私は平山 李の記憶と概念だけを持つただの柏 李です。だから貴方への思いも何だったのか理解はできません』


悟『まぁ小学生の恋なんてそもそもふわふわしているものだしな~』


悟は立ち上がり両手を上げ背伸びをする


そんな悟を横に思いふける様に遠くを見つめている柏


悟『けど形だけではあるが僕たちは今日から恋人でありそして共犯者だ』


悟が柏に手を差し伸べる


柏『?』


悟『お前のそのゲーム楽しませてもらうぞ』


柏が手を繋ぐ


柏『契約完了ですね』


悟『だな!』


柏『あ、クマの財布の中に私の生徒証が入っているのでそれだけ返して頂けませんか?』


悟『お、おう』


財布を出すと透かさず悟から奪い取る


悟『?』


柏『やはりこの財布は契約完了後お渡し致します。問題ありませんね?』


悟の中で昔の平山 李と姿が重なる


悟『ふっ、やっぱりお前は嫌なやつだ』笑顔


(こうして自称サイコパスと自称自殺少女の奇妙な関係は始まった。

そしてそんな混ぜると危険極まりない二人による卑劣な復讐劇の開幕だ)



《一話終了》

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