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第1話 お姉ちゃん×ショタ

膝枕、耳かき、コスプレ、デート……沢山のイチャイチャをお見せします!

テンプレからちょっとマニアックなものまでいっぱい!


「お姉ちゃん、僕を甘やかして……!」



春になって、桜が降る。背中に背負う黒い箱は使い始めて六年目になった。

最近の悩みは友達よりも背が小さいこと。普通なら背がどんどん伸びてくる筈なのに俺は伸びないままだ。昨日までが休みだったこともあって少し憂鬱なような、でも少し楽しみなような。そんな複雑な気持ちのまま学校に向かう。昇降口に張り出されたクラス表を見て自分の名前を探す。「笹月 優太」の文字を見つけ出すと、人の流れに沿って歩く。「六年一組」と書かれた部屋の前までくると、そのドアを開けた。

お母さん譲りの茶髪の髪が桜と共に靡く。

教室には僕と同じ様なクラスメイトが沢山いた。

「おう! 優太ー」

いわゆるランドセルと呼ばれる物を机の横にかけると、俺は友達の輪の中に混ざる。友達と笑いあっていると、六年生最初の授業が始まった。


■+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+■


最初の日だったから学校は午前中で終わり、俺はそのまま真っ直ぐ家に帰ろうとしていた。本当は遊びに誘われていたけれど、なぜか今日はそういう気分にならなかったのだ。家の近くまで来ると、遠くの方から誰かが歩いているのが分かった。ブレザーを着ていたから直ぐに高校生だと分かる。でもこの辺でブレザーの高校に通う人なんていないし。

変だなと感じたので俺はその人が俺を横切るまで待ってみる事にした。

下を見ながら歩いているその人は、ゆっくり顔を上げる。そして突然驚いた様な表情をすると、次の瞬間勢いよく走り出した。影は次第に形がはっきりしてきて、近づいてくるのが女の人だと気付く。肩に付かないくらいのショートボブ。その髪が走る度に踊る。

だんだんと大きくなっていくその姿はいつの間にか見えなくなっていた。変わりに俺の体を包む生暖かさ。ほのかに香る甘い花の匂い。俺の目の前は紺色一色だった。そして何より息が苦しい。

何が起きたのか分からなかったけれど、次第に俺の頭が答えを導き出した。


俺、さっきの女子高生に抱きつかれてる・・・・・・!?


まずは離して貰わなくちゃと体をジタバタさせる。「ん〜! んん〜! 」なんて声にならない叫びで必死に訴えた。すると我に帰ったのか、女子高生は俺から体を退けた。

「あ! ごめんごめん! 嬉しくなってつい・・・・・・。わぁー変わらないなー。少し背が伸びたのかな? もう六年生だもんねー。」

俺の体はまだ熱を帯びている。本当に死ぬかと思った。

ドキドキと鼓動が早くなっている心臓を落ち着かせてから顔を上げる。

俺の方を真っ直ぐ見ているその人は目が大きくて肌はツヤツヤで唇はぷるぷるで・・・・・・多分こういう人を美人って言うんだろう。

って、目を奪われ過ぎて忘れていたけど、この人俺に抱きついてきた変態じゃないか!

ふと我に帰ったところで、彼女に向ける視線を警戒マックスにする。

恐る恐る聞きたいことを聞いてみることにした。

「あ、あの。いきなり抱きついたりして・・・・・・あなた誰ですか? 」

女子高生は、目を丸くさせ、きょとんとすると直ぐに晴れやかな笑顔を見せた。

「え? 忘れちゃったの? ほら五年くらい前に近所の公園で一緒に遊んだじゃない。ほらほら、私だよーなんちゃって。」

両手を頬の近くでひらひらさせる。うっ、あざとい。

はっ! 違う違う。五年前? ・・・・・・そういえば誰かと遊んでいた様な・・・・・・。

ということは、今目の前にいる人があの時の?

ぼんやりと思い出す過去は誰かと公園で遊んでいたという記憶だけだ。

でもいつの日から姿を消してそれっきり・・・・・・。

「なんで俺の事覚えてるの? あんなの凄く前の話なのに・・・・・・」

話しづらくなって顔を落とす。こんな事を聞いてもいいのかと心の中で戸惑っていると、女子高生は両手で俺の頬を持ちぐっと上げた。

眉を尖らせ、真剣な目付きで俺を見る。

「だって私、優くんの事大好きだもん! 今までもずーっと会いたかったんだもん! 」

初めて告白をされた。しかもこんなに年上の人から。

で、でも俺まだ小学生だし! そういうのは早いって思うし! あ、いや、周りの奴とか付き合ってる噂聞くけど! でもー!

なんて思考をぐるぐるさせていると、女子高生はそのままこう続けた。


「だからね、私のショタになって欲しいの! 」


・・・・・・しょた? ショタって何?

意味の分からないことを言われ反応に困っていると、女子高生は「あ、ショタって言うのは今ゆる小さい男の子とかの事でね。だから私のショタになって欲しくて・・・・・・」なんて追加説明していた。

この人が何を言っているのかは分からないけど取り敢えず、この人がやばい人だって分かった。きっと誰よりもこういう人が世の中に溢れているから防犯ブザーってあるんだ。今まで先生の話まともに聞いてなかったけど、これからはちゃんと聞こう。

今は生憎防犯ブザーを持っていなかった。けれど幸いな事に俺の家はすぐそこだ。走ってこの人から逃げよう。

逃げるタイミングを見計らっていると、女子高生は突然慌て出した。さっき自分が言ったことが変態発言だと気が付いたらしい。

どうどう、と腰を下げて両手を上下に動かしていた。それ、テレビで見たことある。敵対心を持っている相手にやるやつだ。自分は味方ですよって。


「いや、違くて! いや、違くはないけど・・・・・・。あのね、私こう見えても実は漫画家なの! それで最近連載が決まってね、どんな話にしようかなーって考えてたら時に『おねショタ』っていうジャンルがあるのを知ってね。それでそれを書こうと思ったんだけど、私の周りにショタが居なくて! そんな時に優くんのこと思い出したんだ! えーっとそれで・・・・・・。」

焦っているのか言いたいことがまとまっていなかった。ただ必死に俺の警戒しんを解こうとしているのは分かる。

「つまり、俺を漫画のモデルにしたいってこと? 」

俺の頭で理解したことを伝えると、「そうそう!」と首をブンブン振っていた。

確かにそれなら分からなくはない。でもこの、変態の漫画のモデルって・・・・・・。怪しいに決まってる。

「嫌です。それに俺忙しいんで。」

そうだ。俺にはやらなくちゃいけないことがある。父さんを安心させる為にも、まずは——。

少しだけ父さんの事を思い出した。俺の母さんは四年前に事故で死んだ。それから男で一つで俺を育ててくれて。だから俺は父さんの為にも絶対に・・・・・・。

「知ってるよ、優くんが中学受験するの。」

その言葉に我に帰る。女子高生の方を見ると、優しげな微笑みで俺のを見ていた。

「優くんは優しいからね。お父さんの為に勉強してる事知ってる。でも今の学力じゃ、合格は難しい。だからお姉さん考えました!」

両手の掌を合わせてパンと音を出す。そのまま片方の人差し指を顔の近くでくるくる回した。

「実はお姉さん、こう見えて去年の学力は学年一位なのです! だからね、私のお願い聞いてくれたら優くんの勉強、手伝ってあげる! 」

俺の前に手を差し出し、「どう? 」と首を傾げた。

この人のお願いを聞くのは正直やだ。でも父さんの事を思ったら・・・・・・。

今から思うと、まんまと罠に引っ掛かったなと思う。

俺は差し出されたその手を嫌々ながらとってしまった。

そしてそのまま手を引っ張られ俺はまた抱きつかれる。相変わらず息苦しいくて、でも「やったー! 」と嬉しそうな声を聞いたら抵抗する気も起きなかった。

急に俺の腕を掴んでグイッと奥に引っ張られると、女子高生はにっこりと不敵な笑みを浮かべた。


「私のことはお姉ちゃんって呼んでね? 」


その言葉からこの先の未来が見える。前途多難だ。これからずっとこの人の言いなりにならなくちゃいけないのか。取り敢えずまずは天国にいる母さんにでも助けを求めよう。そしたらきっと母さんが守ってくれるはずだ。


拝啓、天国にいる母さん。俺はどうやら変態なお姉ちゃんのショタになってしまいました。だから・・・・・・助けください!

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