「ここにいるみんなはキャラクターなんかじゃない、私達と同じ人間で、生きているんだよ！！」〜絶望の果てに死ね！〜
題名のセリフが好きな作品や自作品に入っている方は閲覧ご注意ください。
いやな思いをさせてしまうかもしれません。
サイコホラー作品です。
──人殺し！ あなたのせいで沢山の人が、命が……。
命？ ああ、2人の人間の殺人未遂ね。ふふふふ。
── 2人？ 何を言って……？ なぜあんな酷いことを。なんで笑っていられるの？！
なぜあんなことをしたかって？ それはね……
まだ若くて、楽しいこともたくさんある幸せな人生の途中で、いきなり殺され、こんな気味の悪い世界に突然生まれ変わらされた。交通ルールガン無視のトラックに轢き殺されてね。
読んだことはなかったけど、そこそこ知名度もある作品だから、ここがあの作品の世界だって程なくして気づいた。そして、私が主人公だってね。
そこからは気味悪くて仕方なかった。人間なんて誰もいないこんな世界。
おかしな髪色に、目や鼻の大きさや形もイラストちっくな人間とは違う顔、ほくろもニキビもないような人形のような体。それぞれのパーツの細さや長さも人間離れしていた。
こんななら、着ぐるみに囲まれていた方が何倍もましだった。絶対的に人間とは違うくせして、まるで人間ですといった風に過ごされて吐き気がした。何度も何度も狂いそうになった。いっそ狂ってしまったのなら幸せだったのかもしれないけど。
でも、私だってその仲間だって分かっていたのよ。
毎日暮らしていて分かってた。人間とは思えないようなこの体をね。
自分も漫画のメインキャラだって事実を認めたくないけれど、心の奥底では認めかけていた。
この世界全てへの憎悪を燃やすことだけで、自我を保っていた。
見た目だけなら、まだマシだったはず。
どこか強引で決まっている筋道通りに進むようなおかしな流れ、不自然すぎる私の周りのキャラクターの感情の変化。
耐えられなかった。もしかしたら、私はもう半分狂っていたのかもしれない……
こわいこわいよ！ おかあさんおとうさんたすけて……おうちにかえりたい。こんなとこもういたくない。あたまがおかしくなりそう……おねがいだからだれかわたしをすくいだしてよ！！！！
死ぬことだって何回も考えた。でも、それで全部終わっちゃったら？ 家族にはもう絶対会えない。もしかしたら、何とかなるかもしれないと信じて、どこにも見えない希望にすがってギリギリで生き延びていた。
心を守るためか、ほとんど何も考えず、流されるまま無気力に生きてきた。
自分の意思を持って行動しないからか、物語通りの流れに進んでいったと思う。作品は読んだことはないが、聞いたことがあるあらすじと同じような流れだった気がする。虐げられた女の子がたくさんの男の子たちに好かれてハッピーな学園生活？
全体的なところはともかく、部分的なところはどうか知らないけど。
ああ、あと違うのは、主人公の気持ち？ ハッピーだったことはなかったね。
幼い頃から虐げられていたのも、もうどうでも良かった。
キャラクターに何を言われたって別に傷ついたりはしない。この体が理由なのか、心が理由なのか、暴力だって痛みを感じなかった。
でも、あなたは別よ。
ギリギリで生きてきて、あなたが私と同じ日本人だって気づいたとき、希望を持ってしまった。
ずっと1人で頑張っていればよかったのに。
私は人間だった！ あの子も人間だ。なんて嬉しいことだろう。
きっと分かり合える。この世界に来てからの空虚な気持ちも、おかしくなってしまいそうだった気持ちもきっと……
そんなあなたは私になんて言ったか覚えている？
「ここにいるみんなはキャラクターなんかじゃない、私達と同じ人間で、生きているんだよ！！」？？？？？？？？？？？？？？？？
みんなのことを弄ぶのはやめて？？
なにいってるの？やめてやめてやめてやめてやめて……
仲良くなれなくてもよかった。あなたの存在が希望でもあった。
でも私の苦しみの全てを否定して……
あなたはキャラクターと恋し、友情や家族愛を育んで、私に賢しらに説教してきた。
何一つ分かってはくれないのね。
私が幸せそうに見えた？ 楽しそうに見えた？ この世界に来てから、心から笑ったことなんてないし、作り笑いすらつくってないのに……
これは理不尽な怒りなのかもしれない、八つ当たりかもしれない。期待しなければよかった。
でももう止まれなかった。
許せない！！！
キャラクターではなく、人間に言われた言葉は無視できなかった。
この気持ちは絶望なんかでは言い表せない。
ぼんやりとこの世界全体に持っていた憎悪なんて、簡単に超えた。
あなたという1人の人間だけの憎悪で頭がいっぱいになった。
しねしねしねしねしねしねしねしね……
殺す、殺してやる。
楽には死なせない。私と同じような、いやそれ以上の絶望を味わって、絶望の果てに死ね！！！
日本での私ならもちろん、そしてあなたと出会う前の私だって、自分がこんなに苦しいのなら、それを他の人に味わってほしいどころか、そんな思いしてほしくないと思えた。
でももう限界だったの。
それであなたの大好きなキャラクターをたくさん殺してから、あなたも一緒に殺してあげて、その後に私ももう死んじゃおうと思ったの。もうがんばるのやーめた。
でも、失敗しちゃった。
どうでもいいキャラクターしか死ななかったね。
えーっと、たくさんの人を殺しただっけ？
私が殺そうとしたのは2人だけだよ？ でも、失敗しちゃったから、1人しか死なないね。
2人の殺人未遂なんて地獄行きかな〜？ 悪いことだって分かってるよ。
死んだ後も絶対お母さんたちとは会えないのは悲しい。親不孝だね。
よく考えてみて、キャラクターを殺すのと人を殺すのが同じわけないでしょ？
今回だって、悪いのはあなたと私の２人を殺そうとしたことであって、たくさんのキャラクターを殺したことじゃないよ？
いろんな小説の作者はたくさんのキャラクターを殺してるよ？ 名前があるキャラクターもあれば、なんもなくて、数字だけで何人死んだみたいなときもあるよね。
あれって殺人なの？ 作品でキャラクターを死なせたら、申し訳なく、悲しく思わなければならないの？
思い入れのあるときは違うかもね。でも、全く知らない作品のどうでもいいキャラクター死んだとき、あなたは悲しんだ？ 死を悼んだ？ 興味すらなかったでしょ？
私もこの作品なんてどうでもいいし、この世界に来てからは嫌いだよ？ なんで死を悼むの？ 申し訳なく思う必要ある？
痛ましい事件で人間が死んだ時とは違うんだよ？？
分かった？？？
へー、死罪なんだね。
私、やっと死んでもいいんだね。嬉しい！！
うんうん、ギロチンなんだね。
血がいっぱい出るといいなぁ……
痛かったらいいなぁ……
そうしたら、私は人間で生きてるって思って死ねるでしょ？
えっ？ こわくないのかって？ こわいよ、でもそれよりもう解放されていいんだって幸せなの！
ありがとう！ あなたのおかげでもうつらくないし、この世界に来てから私の感情が目覚めて、初めて自分の意思で行動できたよ。それから、初めて幸せだって思えた。
いろいろあったけど、幸せになれるといいね。
ばいばい。
いたいいたいいたいいたいいたい……
こんなにいたいの、にほんでしぬまえにこうつうじこにあったときぶりだ、あはははははははは、
ちがいっぱいでてる、
いきてる！！
おかあさんおとうさんしんじゃってごめんね、
このせかいにも、あのこにもやっとばいばいできる、
しあ、わ、せ……。
目が覚めるとそこは見知らぬ天井で、ツーンと鼻を刺す薬品の匂いがしていた。
おしまい
最後まで拙作を読んでいただきありがとうございました。
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天邪鬼な性格ゆえ、変なところが気になって、いちゃもんをつけたような作品になってしまいましたが、テンプレも転生の恋愛ものも大好きです。
他の著作も一味違う切り口で書いておりますので、お時間がありましたら、ぜひ。
「虐待赤ずきんと人食い狼」
赤ずきんに関する個人的に感じた気になる点を消していったらできた作品です。
https://ncode.syosetu.com/n9019gu/
「ありきたらない恋人契約と一途な初恋の行方〜ヒロインになれない私は〜」
こちらも恋愛小説のご都合主義的な気になる点を昇華させたもので、愛がテーマの作品です。
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