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第二百二十二話 ウィベル猟犬団(2)

 名乗りが終わるとほぼ同時に、ウィベル猟犬団の"ヴァローナ"部隊は一気に加速して"エクス=カリバーン"を取り囲んだ。各々が装備したマシンガンが、ほぼ同時に火を噴く。


「むっ、全機マシンガン装備か……!」


 ブラスターと違い、金属製の砲弾を発射するマシンガンはフォトンセイバーで弾き飛ばすことが出来ない。宇宙空間では弾速の速いブラスターの方が一般的に好まれる傾向にあるため、この編成は対"凶星"を意識してのものに違いない。


「"凶星"の戦い方は研究しつくしている。そう簡単に隙は見せないとも」


「やってくれるじゃないか……!」


 砲弾の嵐を避けつつ、輝星は唸った。しかし、その顔には獰猛な笑みが張り付いている。歯をむき出しにしながら、ブラスターライフルを手近な"ヴァローナ"に向けて発砲した。

 回避しようとするヴァローナだが、ギリギリで間に合わず右足が吹き飛んだ。しかし、足の一本を失った程度ではストライカーは戦闘不能にならない。作動油と推進剤をまき散らしつつも、半壊した"ヴァローナ"はお返しとばかりにマシンガンを撃ち込んでくる。


「射軸をずらした? やるな!」


 I-conからもたらされる情報を生かした、先読み射撃だ。本当ならば、エンジンブロックを狙っていたのだ。被弾したとはいえ、致命的な一撃をさけた敵パイロットの技量は素晴らしいものがある。


「我が猟犬団の最精鋭だ! お気に召してくれたか?」


「こっちの性格をよくわかってるじゃないの!」


 小刻みにマシンガンの弾幕を回避しつつも、ニヤリと笑う輝星。しかし、後部座席のディアローズは冷や汗を垂らしていた。傭兵程度かんたんに蹴散らせると思っていたのだが、思っていた以上に厄介な相手のようだ。


「こ、こやつら……帝国の近衛クラスではないか? この戦闘力は」


「もしかしたらそれ以上かも」


「ぐぬぬっ、傭兵の分際で!」


 裏切った身とはいえ、自らの直属の部下であった近衛騎士団はディアローズにとっても自慢の精鋭だった。傭兵に練度の面で並ばれると、そこはかとなく悔しいものがある。


「俺も傭兵じゃないか」


 苦笑しつつ、輝星はさらに手負いの"ヴァローナ"にブラスターライフルを撃ち込んだ。一撃で倒せない以上、一機一機丁寧に撃墜するべきだという判断だ。しかし、今度もギリギリで急所を外されてしまう。


「手強い!」


 反撃に何十倍もの射撃が飛んでくるのだから、やりにくいことこの上ない。機体を縦横無尽に機動させ、なんとか回避を続ける。四方八方から飛んでくる機関砲弾のせいで、"エクス=カリバーン"のメインモニターはまるでオーロラにでも突っ込んだかのような有様になっていた。

 さしもの輝星も、こんな中で反撃をするのはなかなかに難儀だ。照準を定める一瞬の隙すら、敵はなかなか与えてくれない。回避するだけで精いっぱいだ。


「いいぞ、悪くない!」


 会心の笑みを浮かべたマキナが、ライフルを構えて突っ込んできた。モノアイが赤く発光すると同時に発砲炎が瞬き、"エクス=カリバーン"に大口径徹甲弾が飛来する。ビームではなく実体弾を発射するタイプのライフルだ。装備が徹底している。


「むっ!」


 精鋭部隊を率いているだけあって、マキナの射撃も極めて巧みだ。一発目は回避したものの、二発目はセイバーで切り払わざるをえなくなる。徹甲弾を光刃が捉え、一瞬にして金属蒸気へと昇華させた。


「やるじゃないか……!」


 フォトンセイバーをハイエンド品に交換していなければ、熱量が足りず砲弾は防ぎきれなかっただろう。さしもの輝星の額にも、冷や汗が浮かぶ。しかし、いつまでもやられっぱなしというわけにもいかない。流れるような動作で、三射目を放とうとしていた"ラーストチカ"に向けてライフルを撃った。


「そう来ると思っていた! いまだ、行け!」


 が、緑の光弾は"ラーストチカ"の左腕に装備された大型のシールドで防がれてしまう。そしてマキナの号令に従い、シールドとショートソードを構えた"ヴァローナ"が二機、特攻じみた突撃を刊行してくる。


「ぐっ!」


 輝星は即座にライフルを捨てた。火力が足りないと判断したからだ。代わりに抜いたメガブラスターライフルを、盾を持って突っ込んでくる"ヴァローナ"に打ち込んだ。一発目でシールド表面が赤熱し、二発目で装甲を貫通。"ヴァローナ"は沈黙した。

 が、敵はもう一機居る。そこまでは対処が間に合わず、輝星はショートソードをフォトンセイバーで何とか受け止めた。斥力同士が反発しあい、バチバチとスパークを上げる。


「いまだ、全機ミサイル発射!」


 マキナが獰猛な笑みと共に命令を下す。距離を取ってマシンガンの射撃をしていた"ヴァローナ"たちが、背中に背負った大型ミサイルランチャーから大量の高機動ミサイルを吐き出した。全機合わせれば、千発を超えるであろう猛烈な攻撃だ。


「ま、まず……ッ!」


 ディアローズが、真っ青な顔色で叫んだ。さしもの輝星も、これほどの数のミサイルは回避しきれない。絶体絶命のピンチだった。

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