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プロローグもこれで大詰め?

プロローグって、どこまでを言うんでしょうね。(哲学的な雰囲気で)

「え、何、気持ち悪い」

「ふふふ…今日はその暴言も許してやろう」

「え、何?ほんとに気持ち悪いんだけど」

「おい」


 スープをサクッと作り、魔法が使えた喜びを噛みしめていると、台所に入ってきたティナに暴言を吐かれた。

 しかし今の俺は気分が良いので許してやることにする。


「まぁいい。聞いて驚け!なんと魔法が使えたんだよ!」

「は?うそでしょ?!」

「マジだって!水も火も!おまけになんか知らんが野菜切るのもクッソ早くなったんだぜ!」

「凄いじゃない!これから料理はハルトに任せるわね!」

「なんでだよ!?」


 言い合いがヒートアップしそうな所で院長先生が来たのでお互いに口を噤む。

 院長先生をマジで怒らせた時のお仕置きはマジでやばいからだ。

 兄貴たちが居た時は、成人間近だってのにマジ泣きしてたな…。次の日いつも通りに戻ってた院長先生が余計に怖かった記憶が…


 何となく体が震えて来たので思考を追い払い、チビたちが起きるまでまだ時間があるからと、今起きたことを軽く説明する。

 そんなに言うなら、とティナが洗濯についても何とかなるんじゃないか、と言って3人で洗濯場へと向かった。


 でかい桶の中にあるたくさんの洗濯物。

 水はまだ入って無かった。

 つまり水を張るところからだ。

 また何か新しく魔法を使えるかもしれない、と俺は意気揚々と腕まくりをした。


「よし!ちょっと待ってろよ!」


 桶に手を触れ才能を意識する。


 頭に浮かぶイメージ。

「<目分量(えっと…この鍋の)の水(この辺までの水)>」

 桶に水がたまる。

 何かを声に出す。

 桶の中の洗濯物がぐるぐると回った。


 覚醒する意識とは裏腹に、俺は放心していた。


「ハルト?」

「ハルト君?」

「~っなんで?!どういうことだよ!?!」


目分量(えっと…この鍋の)の水(この辺までの水)>ってなんだよ!!

 長ぇよ!

 いやちょっと待て!

 …まさか、最初に口に出した言葉が魔法名になるのか…?


 ちょっと待て!!それなら火を使った時もそうなるじゃねぇか!

 待て待て!俺あの時なんて言ってたっけ?

 覚えてねぇわ!!

 誰か説明してくれ!!


「あ~~!!くそ!!」


 ―――<おかんの知恵袋><日記帳(あ~~!!くそ!!)>を取得しました。―――


【〇が「はぁっ!?」


 ―――<おかんの知恵袋><説明書(はぁっ!?)>を取得しました。―――


「うおおおおおい!!?」


 ―――<おかんの知恵袋><助言(うおおおおおい!!?)>を取得しました。―――


「もういいやめっ【才能を確認してごらんなさい。byおかん】誰だよ?!!」


 突如聞こえ出した文言に反射的に突っ込んだらその言葉が認識されてしまった挙句、誰かの声が被せられ更に突っ込むという悪循環に陥った。

 ようやく嫌なループが止まったのは良いが情報過多が過ぎてもう訳が分からない。

 地味に便利そうなのもまたなんか腹立つ!


「ハ、ハルト君…?」

「はっ!?」


 院長先生に声をかけられて我に返る。

 腫れ物に触る、みたいな目で見られている。

 やめてくれ!


 ティナはティナで俺から距離を取りヤベーもんを見る目をしている。

 逆の立場なら俺もそうするよ、畜生!!



 とりあえず俺の身に起きた被害を申告した。

 魔法を使う度に変な叫び声とか感想を言わなきゃいけないとか地獄だ。



「あははははは!!さっすがハルト!」

「お前な…」

「あらぁ~凄いわねぇ!」

「あ、うん…」


 院長先生が純粋に褒めてくれるのでこれ以上憤慨もしづらい。

 ドン引きから一転、腹を抱えて爆笑し出す非情なティナを無視して、おそらく”助言”と思われる【才能を確認してごらんなさい。byおかん】の声に従い、改めて自分の才能に目を向ける。


 俺は膝から崩れ落ちた。


 ――――――――――――――

 ハルト/12歳

 才能:【おかん】

 ▽<おかんの嗜み_LV.1>使用回数及び範囲はレベルに準ずる。

 L<調理>

 L(うおおぉぉ…!!)ごしらえ(おかんすげぇ…!!)

 →「うおおぉぉ…!!おかんすげぇ…!!」または「下ごしらえ」と唱えると触れた対象を切ることができる。切り方の指定が無い場合は乱切りで統一される。


 ▽<おかん魔法_LV.2>使用回数及び範囲はレベルに準ずる。

 L目分量(えっと…この鍋だと、)の水(この辺までの水)

 → 「えっと…この鍋だと、この辺までの水」または「水を張る」と唱えると、目視対象の器に対して7割の水で満たすことができる。器の指定が無い場合は手の平分の水で統一される。


 L火を(あ~っと…この鍋の)熾す(このくらいの火!)

 →「あ~っと…この鍋のこのくらいの火!」または「火を熾す」と唱えると、目視対象に火を着けることができる。対象が曖昧な場合はボヤが起こる。


 ▽<おかんの知恵袋_LV.3>使用回数及び範囲はレベルに準ずる。

 L日記帳(あ~~!!くそ!!)

 →「あ~~!!くそ!!」または「日記帳」と唱えると、過去の出来事の記録を確認できる。

 ▼未読の日記帳が1件あります。


 L説明書(はぁっ!?)

 →「はぁっ!?」または「説明書」と唱えると、目視対象の説明を確認できる。なお自身の才能については自動で説明が表示される。


 L助言(うおおおおおい!!?)

 →「うおおおおおい!!?」または「助言」と唱えると、おかんから助言が貰える。なおたまに暇を持て余したおかんから話しかけられる。

 ――――――――――――――


 いやいやいやいや!分からん!訳が分からん!!何もかもわからん!!

 さっきの声はどこのおかん?!

 というか未読の日記帳_1って何?!

 暇を持て余したおかんって誰?!


 突っ込み所が多すぎるがとりあえず、すぐにでも片付けられそうなものから順番に片づけることにする。


 ▽未読の日記帳

 --------

 〇月×日 雨

 今日も夫は帰って来ない。

 私一人でどうやってこの子たちを育てていけばいいの。

 あぁ…

 火を使う時は、火を着けたいものをじっと見つめながら「あ~っと…この鍋のこのくらいの火!」か「火を熾す」と声に出せば、火を着けることができるわ。

 --------


「重い!!!」


 ―――<おかんの嗜み><清掃><片付け(重い!!!)>を取得しました。―――


「~~~っ!!!」


 またなんか増えた!!

 叫び出しそうな声を必死にこらえて心の中で愚痴を吐く。


 しかも見なきゃよかった内容だし!

 前半が重い!ほんとにどこのおかんだよ!?未亡人っぽい雰囲気やめてくれよ!!

 俺に火のつけ方説明してる場合じゃねぇだろ!


 突然崩れ落ちたかと思えば一人頭を抱えている俺に、心配そうな院長先生の声と、笑い過ぎて喋れないティナに声を掛けられる。


「ハルト君、どうしたの?どこか具合でも悪いの?」

「ちょっ、こ、今度は、っな、なによっ?」

「・・・・・」


 何をどう説明すれば良いのか俺も分からない。

 とりあえず現実逃避では無いが突然増えた<片付け>に目を通す。


<清掃>

 L片付け(重い!!!)

 →「重い!!!」または「片付け」と唱えると触れた対象を片付けることができる。対象に触れない場合は物事の優先順位を表示する。


「・・・・・」


 おかげでなんとなく才能が発言する規則性は理解できた。

 できてしまった。

 直前に考えたことに関連する才能があれば、直後に出した音声を才能の名前にリンクさせるわけだ。

<清掃>が増えたのは、さっき「片付けよう」とか考えたからだし、覚えて無いとか説明してくれとか考えた直後に<おかんの知恵袋>が増えたし…。


 すっげぇ迷惑…。


 地味に便利な才能なのが余計に嫌だ。

 有難迷惑感が半端ない。

 冷静に考えれば滅茶苦茶便利で凄い才能なのに、放っといてくれよとか余計なことすんなとか、つい考えてしまう。

 どこの思春期だ。

 本当にこれどうやって説明したらいいんだろう。

 基本的には自身の才能は大っぴらにするべきではない、とか言われてるし。

 かといってコレを俺一人では抱えきれないし抱えたくない。

 誰かに愚痴りたい。


 誰かっていうかもう、この二人しかいないんだけど。


 俺は腹を決めて、二人に事の次第を説明した。


 反応は、うん、想像通りだよ。






当然ティナさんは爆笑。

院長先生は褒め称えた。


お読みいただきありがとうございました。

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