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はい、これはプロローグです。

プロローグがげしゅたるとほうかい

「ただいまー」

「おかえりハルト!ちょうど良かった!薪割ってきて!」

「「「にーちゃんあそぼー」」」

「よーし!なら薪集め選手権だ!」

「「「わぁーい!」」」


 帰って早々、チビたちの遊び兼、薪割り。

 俺の才能で謝礼が出たとは微塵も思ってもいなかったのか純粋に人手が足りないのか。

 いや完全に後者だろうけど。


 そんな訳で庭で薪割り。

 俺が丸太一つ分の薪を割る間にチビたちには小さな木片拾いを命じる。

 一番多く拾えた奴の頭をめちゃくちゃ撫でるというお財布に優しい遊びだ。

 豪華商品なんて無くてもチビたちからは不満の声は出ない。むしろ頭撫でられる為に頑張ってくれるという。

 ぜひこのまま心が綺麗なまま育って欲しい。




 夕食を終え、チビたちを寝かしつけた後は、院長先生と年長組で話し合いを行う。

 話題は今日の出来事と、俺の今後について。


「ええ?!ほんとに?!」

「おう、てわけで先生。はいこれ」

「あらダメよ。ハルト君のお金でしょう?」

「いーって。家に金入れるのは長男の仕事だろ?」

「実際は十六男位じゃない?」

「うっせぇティナ!今は長男だから良いんだよ!」


 ぎゃいぎゃいと騒ぐ俺たちを微笑ましく見守る先生が袋からお金を取り出す。


 チャリっと微かな音を立て、キラリと光るまばゆい金色。

 しかも3枚。


「「「え」」」


 金貨が3枚。

 大人1人が働かなくても2年は好きに飲み食いして余裕で過ごせる額。何なら遊んで暮らせる。遊びによるけど。


 しん、と静まり返る部屋。


「ききききき金貨ぁ?!」

「おおおおお落ち着け!メッキかも…!」

「やややややっぱりこれはハルト君のお金で」

「ムリムリムリムリ!怖い怖い怖い!」


 全員で動揺し、地味に押し付け合った結果、とりあえずまだ未成年である俺が持つのは恐ろしいので孤児院で使うことに。

 そうなると下手に残して置くのもただただ恐ろしいので使い切る算段で。

 壁とかボロいし天井から雨漏りするしで、まずはその辺の修繕に回す。

 それでも余裕で余るの顔が引き攣るが、全員の服を揃える。ついでに予備も。

 まだ余るので顔を青くしながらも保存食を買い込む。

 まだまだ余ったので白目を剥いて相談した結果、教会に寄進が決まった。

 なんと、怪我や病気が治る回復薬(小)、の引換券を貰った。しかも10枚。

 ちょっと怖いけどこれならまぁ、うん。

 と若干麻痺しかけた頭で無理やり3人で納得した。


 いざと言う時のお金は確かに必要ではあるが、泡銭は下手に取っておくと危険だという言い伝えにのっとり景気よく使った。

 最悪、回復薬(小)は売れるし。


 後から聞いた話によると、使い切るまでは先生も俺もティナも気味が悪…顔色が悪かったらしい。

 やたらとチビたちがくっついてきてたのは心配してのことだったのか、と全員で反省したのは言うまでもない。――閑話休題――



「で、ハルトは結局冒険者になるの?」

「おう。正直才能が微妙で迷ったけど。とりあえず講習受けて、よっぽど無理そうならやめるけどな」

「心配だけど、何かしら挑戦しない事には分からないものねぇ」

「うん、12歳のうちなら無料で受けれるし」

「でもハルトの才能って【おか「無限の可能性があるって言われたしな!」


 ティナに言わせまいと言葉を被せる。

 目が合った。


「【おか「だから無限の可能性にかけることにした」


 目を合わせながら火花を散らす。

 睨み合いながらもティナの口元に注視していると、とんだ伏兵に土手っ腹を突かれる。


「【おかん】って何が出来るの?」

「ぐふっ…!」


 空気を読まないというか、空気ってなぁに?レベルな天然で爆弾をぶち当ててくる院長先生に悪気なく突っ込まれた。

 先生に講義しても仕方ないので、長老に聞いた話をそのまま伝えてみた。


「へぇええ~~物は言いようねぇ」

 と感心するティナ。


「あらまぁ、世のお母さんってすごいのねぇ」

 と素直に尊敬する院長先生。


「ソーダネ」

 絶対に違うとも言えないので同調する俺。


「まぁとりあえず、色々試してみるしかないからわかんねぇ」

「そうよねぇ、危なくないなら良いのだけど」

「ハルト!早く魔法使ってみてよ!」

「無茶言うなって!」

「うふふ、大丈夫よ。才能に関するものに触れていれば使えるようになるわ」


 翌日、院長先生の言葉が当たることを知る。






「ハルト、スープ作っといて!」

「おう」


 ティナに言われ、適当に材料を切ろうとした所で手を止める。

 才能【おかん】を意識してナイフを手に持ってみる。


「!」


 突然、頭にイメージが流れ込んだ。


 左手で材料を投げる。

 右手のナイフが閃く。

 綺麗に切られた野菜。

 種類に分かれて籠に落ちる。


 イメージが切れるとハッと覚醒する。

 目の前には切られる前の野菜たち。


 ゴクリと唾を飲み込む。


 ―才能とは閃き―


 いや閃き過ぎだろ、という突っ込みはぶん投げ素直に従う。


 イメージ通りに左手で材料を投げる。

 イメージ通りに右手でナイフを動かす。

 綺麗に切られた野菜に感動する間もなく、野菜が種類に分かれて籠に落ちていた。


「うおおぉぉ…!!おかんすげぇ…!!」


 野菜を切る時間が一瞬で短縮された挙句、料理人(プロ)が切ったかのような美しい材料。

 俺の期待値は爆上がりした。


 次は鍋に水を入れて材料をぶち込んで火にかける。


 つまり、水と火を使う。


 いつもなら井戸から水を汲み、火打石で火を熾すのだが、今日の俺は一味違う。


「ふふふ…」


 明らかに怪しい笑いを漏らして【おかん】を意識して、コンロに置いた鍋に手を添える。


 また頭にイメージが流れ込む。

 何かを声に出す。

 鍋に水が満たされる。

 何かを声に出す。

 コンロに火が付いた。


 イメージが切れ、覚醒する。

 どうも魔法的なナニカは声に出さないといけないらしい。

 ただ漠然と「水」とか言った場合、鍋のサイズが変わった時にも対応してくれるんだろうか。と妙な心配が過ぎる。

 コップ一杯の水が欲しいのに、鍋並みの水が出てきたらもはや嫌がらせだ。


 ここはこう、何かうまい文言を…

 よし。


「なんかちょうどいい感じの水」


 何も起きなかった。


 自分でも引くほど空気が凍ったのが分かる。

 俺以外誰も居ないけどな。


 ふわっとした言い回しがよろしく無かったのかもしれない。

 気を取り直して、どれ位の水が必要かイメージしながら別の言葉を声に出す。


「えっと…この鍋だと、この辺までの水」


 バシャァッ


「おおお!!」


 希望通りの水の量が出てきた。

 次!次は火!


 ワクワクしながら声に出す。


「あ~っと…この鍋のこのくらいの火!」


 ボッ


「うおおおおおっ!!」


 すげぇ!

【おかん】すげぇ!!


 俺は興奮し過ぎて聞こえていなかった。

 才能を振るうたびに聞こえていたアナウンスを。




 ―――<おかんの嗜み><調理><(うおおぉぉ…!!)ごしらえ(おかんすげぇ…!!)>を取得しました。―――

 ―――<おかん魔法><目分量(えっと…この鍋だと、)の水(この辺までの水)>を取得しました。―――

 ―――<おかん魔法><火を(あ~っと…この鍋の)熾す(このくらいの火!)>を取得しました。―――






お読み頂きありがとうございます。

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