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啓蒙は言葉ゾンビの髄液に (異世界もの)  作者: みよよよよよよよよよよ
プロローグ
12/15

疑念



松尾は驚いた。どうして今疑念を抱いたのだろう。



だって、勇者になるならない以前に、自分は弱い人間だ。



十中八九命を失う。なりたい筈がない。




でも、クラリッサ達は?




そこで松尾は()()とした。



王宮のエントランス。目の前にアラン王が居る。



松尾は慌てて頭を下げた。




「ア、アラン様!お疲れ様です、気付くのが遅れてすみません」




「いえいえ、大丈夫ですよ。頭を上げてください」




松尾は頭を上げた。アラン王はニコニコと笑っている。




「どうですか、例の件は。検討していただけましたか?」




「れ、例の件、勇者の件ですか」




「そうですとも」




松尾は返答に迷った。



それはたった今、えも知れぬ疑念を抱いていた問題に対する質問で、昨日ならば答えは決まっていた筈なのに、今となればどう返していいか分からなかった。




『クラリッサ達は?』




その疑問が意味するところは何だろう。



自分でも分からない。



ただ、その疑問だけがはっきりと胸に張り付いて離れないのだ。




松尾はそんな自分に混乱し、しばらくうんうんと唸った後に、さも苦渋の決断というように王に答えを返した。




「す…みません。まだ、心の整理がついていなくて…


おかしいんです、昨日まではちゃんと答えがはっきりしていたのですけど…」




「ほう…では、昨日までの答えをお聞かせ願えますか?」




「それは…」




言ってもいいのだろうか。



もしここでハッキリと断ってしまえば、今後は責務の悩みから解放される。



しかし、先程感じた心のしこりが何なのか、それが分かっていないままで断ってもいいのか?



…松尾は結論を出した。




「…すみません。正直に言いますと…悪い方へと考えていました。


私、元いた世界では戦いのない平和な国で暮らしていたもので、戦いを決意するには少し経験不足で…」




「…そうですか」




アラン王の声が少し落ち込んだ。



それを聞いた松尾は、ぎゅっと心が苦しくなった。



なんだろう、この胸のつっかえは。




松尾は慌ててフォローした。




「で、でも、今ちょっと迷っていて。


結論はまた変わるかもしれませんし、もう今一度お待ちくださいませんか」




「…はい、分かりました。是非ゆっくりとお考えください。


なんだか、急かすようになってしまって申し訳ありません」




「いえ、いやあの…ありがとうございます。すみません」




アラン王は去っていった。これで良かったのだろうか?



…先程からまるで、自分が勇者になりたがっているかのような疑問ばかりが出てくる。



そんな筈がない。そんな筈がないのだ。



自分は喧嘩の経験すらもない、普通の青少年以上に無力で臆病な箱入り息子なのだから…

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