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第四十三話 地味な嫌がらせ

 火竜島から王都を経て南部の砦に行っていたルーガ少尉には、道中の南部の都市での大型船発注と、南部の調味料及びお酒の調達もお願いしていた。しかし調達自体は出来ていたのだが、王都に関税として全部接収されていた。


 楽しみにしていたのになあ。


「台風の後処理がやっと一段落しましたな」

「それでは、伸ばし伸ばしになっていた、南部との交易を防がれた件への対応協議をお願いします」

「そだねー、南部との交易は許可されていたってのに、どういう名目なんだか」

「名目自体は関税ですね。100%なんてのは論外ですが、大型船発注を嗅ぎつけられたようで、その分も込みです」

「うっへ」

「申し訳ありません」


 ルーガ少尉が説明と謝罪をしたが、王都の連中が横暴なだけだよなあ。大型船の発注なんて隠そうとしても隠し通せるわけがない。また、あれって一応は軍船扱いだから、公式に登録されているんだよなあ。


「・・・・・・大型船は軍船扱いではないのか」


 コリン隊長が疑問を挟む。

 うん?あっ、そうか、軍船に関税が掛かるのはおかしいか。


「半分はそうですね。しかし、もう半分は交易船ですから」

「あーうー」


 ルーガ少尉が答えたが、軍船かつ交易船は今まで特に大して気にもしていなかったな。色々な算段の中での歪な形になっていたのが、こんなところで足を引っ張ってきたか。


「なぜ、現物を抑えたのでしょうか。現金支払いでも良かったと思いますが」

「酒と調味料と、ですからね。酒で火竜の歓心を買おうとしている。と考えられたのでしょう」


 ユズの疑問にルーガ少尉が答える。


「あー・・・・・・それで、お酒、そしてついでに調味料を差し押さえておけば、オレとの交渉が滞ると」


 特に、事前に火竜にお酒を提供する約束をしていたりした場合、約束の不履行で火竜の怒りを買う。なんてことも考えたのかもしれない。調味料も同様か。怒った火竜によって、キノト王子たちに危害を加えられることも期待したのかもしれないな。姑息だなあ。


「竜がお酒を好むってのは、割と知られた事実さね。もっとも、コクヨウもサクラちゃんもあまり興味なさそうだけどさ」


 スゥーイから、竜の生態について話が出た。そうか、竜ってお酒好きか。ヤマタノオロチとかもそんなんだったかな。


「火竜、コクヨウ殿の歓心を買おうとしていたと言われればそうですな。そもそもの発注者がコクヨウ殿なのですがな」

「支払いもコクヨウなのですよね」

「的確に、こちらが困るところをついてくるわけですね」


 あれ、待てよ。


「大型船って王都経由で持ってこなくてもいいんじゃないの。直接こっちに持ってくれば、王都の関税は掛からないでしょ?関税って南部都市から輸出時点で掛かるの?」

「いえ・・・・・・関税は王都で掛かるのですが、大型船は軍船でもありますから、一度王都の軍本部に観艦をしておく必要がありまして・・・・・・」


 軍船かつ輸送船って、厄介な立場だなあ。


「しかし、今払うのかね。先払い?」

「発注許可は王都の軍本部で私が寄った時に行いましたから」


 あー・・・・・・そこで関税が発生するってことにされたかあ。だからって軍本部で申請しないわけにはいかないな。軍艦だもんねえ。色々厄介だなあ。しかしなあ。


「それにしても、無駄な事を。大型船が就航すれば、火竜島と南部で直接交易出来るんでしょう? こんなの一時的にしかならないでしょうに」

「その一時、一回のみでも、火竜の機嫌を損ねれば、我々と火竜殿との関係が壊れると期待したのでしょうな。実際、コクヨウ殿やサクラ殿とこういう関係でなければ、十分だったでしょう」


 はあ、嫌がらせだなあ。やるのならば、もっと派手にやればいいだろうに。本格的にやって、火竜の怒りが自分たちに向くのを恐れているのかな。


「次回の調味料調達費用は、と言いますか、そもそも調味料等の調達費はこちらで出します」

「まあ、それは火竜島の交易品が順調になってから考えればいいさ。ウロコを代価にしたのも、その場しのぎなんだから」


 キノト王子の資産なり、軍部の予算なりもあるようだが、調味料とかは私用だからなあ。ちょっと遠慮して自費にしたわけだ。交易品が上手く出来れば、それを作って輸出して、その代価で買えば良い。

 だが、この調子だと・・・・・・


「ただ、次も関税取られるのかな?大型船が就航したら、王都に一度寄るんだよね」

「そ、それだと二重取りになりますが・・・・・・」

「ない、とは言い切れませんね。名目なんてなんとでもなるでしょうから」

「うわあ・・・・・・」


「ただ、多分としかいえませんが、次回はやらないでしょう」

「そうなの」

「ええ、今回の件はかなりな横紙破りでして、軍部の不評も買っているんですよ」

「あー・・・・・・」

「そうですな、前例も法令もなしに、半分だけとはいえ仮にも軍船に関税を掛けたのですからな」

「法令的には、グレーですね。なにしろ、半分軍船、半分交易船なんてのが想定されていませんでしたから」


 法の抜け穴かね。しかし、それならば取り様によっては軍の職権にも触れるってことだよなあ。


「軍部と・・・・・・えーと」

「カスボ王子派ですね」

「そうそう、それそれ、それとは仲が悪いのか?」


 忘れていたわけじゃないよ。ちょっと出てこなかっただけだよ。


「悪くはない、程度でしょうか。噂では一部で癒着している者もいるそうです。もっとも今回の件で、悪い方に傾いたでしょうね」


 ルーガ少尉は、最後の方の言葉を悪そうな顔で呟いた。

 ま、軍部があっち側でないのはマシなのかな。

 しかし、念には念をいれて、関税を取られないようにしたいな。再々調味料を徴発されたらかなわない。もし次回の便でも調味料が来ないようならば、手を考えないといけないな。


 ・・・・・・いざとなったら、遠泳で南部都市まで行くか。泳ぎの練習をしておこう。

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