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第四十話 台風一過

 欧米では、オーマイガという言葉がある。日本語に翻訳すれば「なんてこった」直訳すれば、「ああ、私の神様」だ。欧米では、唯一神教のキリスト教が主に信仰されているのに、「私の」神とはどういうことだろうか。これでは、あなたの神や彼の神、彼女の神も存在するのではないだろうか。いや、神々GOD'Sや女神GODDESSなんてのもあるのだから、唯一神教なんて・・・・・・


「コクヨウ、ぶつぶつ愚痴を言っても、状況は変わりませんよ」


 オレの後ろでは家が倒壊していた。昨晩に襲ってきた台風が原因である。オーマイガとか、ど畜生とか叫びたい。オレの神様は冷たいようだ。


 先日出来たばかりの道も補修が必要になった。水路も決壊している部分がある。家の近くまで引かなかったので、水がこちらまで来る事はなかったのは幸いか。壊れたら一番やばい堆肥製造所は無事だった。ほら穴の入り口は石を積んでいる構造なので頑丈である。これが無事ならば他は取り返しがつくから、最悪の事態ではない。


 保存食は、家の裏手にあるほら穴に退避させている分は無事であったが、家の方に備蓄してあった分は吹き飛んでしまったり、水や泥に塗れてしまって食べれなくなってしまった。昆布あたりならば、泥を落とせれば大丈夫だろうか。


「コクヨウ、そんなに昆布を睨んでいても、駄目ですよ」


 泥まみれで妙な匂いまで放つ昆布も駄目だった。


 はあー・・・・・・


 家はまた作り直しである。家の周辺の石垣は無事なので、その中に天幕を張る事にした。当面はこの中で暮らす事になる。今、コリン隊長たちが汗を流しながら大急ぎで天幕を張っている。台風一過の晴天が気温を引き上げて恨めしい。


 女性陣は吹き飛んだ小物を集めている。色々吹き飛んでしまって、泥まみれのモノも多いが、その中でも使えそうなものもあるはずだ。


 桜は裏手のほら穴に張り付いている。そこで茶碗に閉じこもってしまっている椿に寄り添っている。油断したなあ。着々と進む家などの準備のために、火竜島の風雨を甘くみてしまった。


 ん。


 様子をうかがっていると、椿がほら穴から出てきた。良かった、元気が出てきたようだ。それを確認すると、オレはトイレの処理に向かった。


 トイレは上部だけの破損で済んでいる。だが、便壺は抜き出しになっている。蓋をしているから水が入る事はないが、次は難しい。同じ規模の台風が来るとは思わないが、強い雨でも降ってしまえば持たないかも知れない。


 どうしたものか。


 当面は閉鎖か。オレは木フタの上に重石を載せた。オレがする台風の後片付けはそれくらいだ。


 オレの後の仕事はっと、そこで銛を取り出した。


「んじゃ、魚取ってくるねー」

「よろしくお願いします」

「保存食もどれだけ使えるか分かりませんから、食料確保出来るならばした方が良いですからね」


 現時点で、食料確保に動けるのはオレだけだ。芋畑の収穫は先日したばかりで、植えたばかりだ。それも様子次第では、植え直しが必要になるかもしれない。林の中での採取も台風が去った後では望めない。海上も荒れているので、漁は潜らないと難しい。しかも、それが出来るのは体力の高い火竜のオレくらいっと。


「椿の事よろしくねー」

「任せてください」

「大丈夫ですよ」


 桜にもアイコンタクトを送り、サファイアと一緒に海岸に向かう。ユズもついて来たがったが、危険なので家で片付けをしてもらっている。荒れた海の側なんて、漢探知の分類だ。


「コクヨウ、本当に大丈夫ですか。海中は荒れていないって・・・・・・・」

「大丈夫大丈夫、サファイアもいるしさ」


 台風で海が荒れるのは風のためであり、そのため問題になるのは表面だけだ。海中は荒れていない。川が激流でもその水中は穏やかなものなのだ。浮き上がる時は大変だけど、サファイアもいるから大丈夫大丈夫。


 ダッパーン


 海岸まで来てみたら、海は思ったより大荒れである。


 うへえええ


 台風は過ぎたはずなんだがなあ。オレは真上の晴天をもう一度確認したが、晴れが確認出来ても海の荒れが収まるわけではない。


 ま、大丈夫か。

 オレはサファイアと一緒に海に向かって突き進んだ。波はオレの体を叩くようにかぶさってきた。痛いな、いや、それよりもうっとおしいか。オレは波を殴った。うん、あまり意味は無い。そのまま体力に任せて強引に海に潜った。


 海中は予想通り穏やか・・・・・・と言うほどでもないか。普段よりかは荒れている。海上と比べればなんていう事もないし、火竜のオレには負担にならない。ただ、問題は・・・・・・魚がいない。


 うーむ。台風の後は魚がよく釣れるとは聞くんだがなあ。アレはデマ何だろうか。それとも”日本”とこっちの世界では違うんだろうか。または海流の穏やかなところに退避しているんだろうか。


 あたりを見回してみるものの、海流の穏やかな場所はなさそうだ。入り組んだところとか、岩の陰かなあ。そんな風に考えていると・・・・・・


 来る でかい 危険


「サファイア!」


 何かを感じたオレはサファイアに奥の手を即座に発動してもらった。そうすると、オレを中心に海水がのいた。1mほどだろうか。オレを中心にぽっかりと海水のない空間が出来た。気圧差で耳がツンと来る。火竜にも三半規管のようなものがあるのだろうか。そんな事が頭に浮かぶと、目の前に大きな物体が飛び込んできた。それはサメだった。反射的にアッパーをかますと、サメは上に跳ね上がり、オレは下に落ちた。


 台風の性か何かの拍子か、サメが海岸に近づいてきて、この辺一体を食い荒らしたか。それで魚が食い尽くされたかどかに逃げたか。

 それはそれとぢて、サメはまずい。こいつは・・・・・・アンモニア臭くて食えたもんじゃない。


 打ち上げられたサメが落ちてきた。オレは下半身を海中で立ち泳ぎして、上半身をサファイアが作った泡に寄せてサメにトドメを刺した。海の中に突然に出来た空中に放り出されたサメは、最初の突撃以外には何も出来なかったようだ。


 そのままサメを抱えて、海上に顔を出して息をする。


 ぶっへ、ぶほっほっほ


 海上は荒れているのでなかなか息がし辛い。そこもサファイアに頼んで、息が出来るように海水を寄せて空間を確保してもらった。サファイア様々である。


 もう一度潜って、海岸に向かった。


 さて、サメかー・・・・・・大物ではあるんだがな。フカひれは意味無いか。調味料が少ない今の状況では、ただのゼラチンだ。ルーガ少尉が南部の調味料を持ってきてくれているが、無事かどうか分からない。かまぼこはいけるかなあ。


 なんにせよ、アンモニア臭がする前に処理をしたいんだが、サメの処理ってどうだっけ、適当に切って、焼いとけばいいだろうか。いや、先に水にさらしてアンモニアを抜いた方がいいだろうか。水・・・・・・川の水は泥まみれだったな。今の段階だと水は貴重だねえ。


 焼くか。


 オレは海岸に上がると、サメを抱えたまま急いで海から離れた。そして急いで切ってブロックにすると、火を吹いて焼き上げた。


 その日の晩飯は、サメ焼きとなった。早く食べないと駄目だしな。今日中に全部食べてしまいたい。処理が早く出来ていたのか、アンモニア臭は思ったほどせず、調味料の中で酢が無事だったのでそれをかけて食べると、なかなかおいしかった。

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