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第三十九話 火竜と精霊と人の道

 はやっ


 目の前には、土で出来た側溝付きの道が家の前から芋畑まで続いていた。

 土の精霊トパズによって、道があっけなく出来てしまった。今までの苦労はなんだったんだろうか。いや、まだ石を敷く作業が残っている。トパズは土の変形や圧縮などなど、土を操るのに長けているが整地までは出来る。出来上がった土の道は、オレや桜が踏み固めた以上に硬くなっているのだが、石に対しては制御が利かないらしい。


 トパズは小石程度なら制御は出来るが、大きな石はもとより手のひら大の石も無理らしい。この辺はストーンバレットで吹き飛ばして運んだ方が良さそうだが。


「あれ、ルーガ少尉いないねえ」

「いませんな」


 傍らでコリン隊長が答える。ルーガ少尉は大型船の発注に出向いたばかりだ。


「それと、魔法に石の運搬は向いていないと思いますよ」


 ユズの突っ込みは正しいか。一回で運べるのは十数個、距離は数メートルか。いや、待てよ。大八車に載せるくらいならいけるんじゃないかなあ。


「なんにせよ、居ませんから」

「そだねー」


 仕方ないな。道に敷き詰める石は地道に持ち運ぶか。


 オレが岩を割って、そこそこの大きさな石を作る。桜とコリン隊長たちがそれを大八車に載せて、道に持ち運んで敷く。トパズとキノト王子と女性陣で、石の間に粘土を詰める。それをサファイアで水抜きをして、さらに椿で熱して固める。


 椿で熱するのはほどほどだ。やりすぎて硬くなると、割れ易くなる。それでも割れてしまうところや弱いところには、貝殻を削って粉にして撒いていく。簡単なセメントだ。補強材としては十分だろう。ただ貝殻の量は多くないので、一部分にしか出来ない。


「よし、仕上げはドラゴンローリング・・・・・・」


 ごすっ


 ユズによって、最後の仕上げは出来なかったが、家から芋畑の道は無事に完成した。


 ユズたちの完成祝いが一段落したあとで、オレはもう一つの道を作り始めた。トイレと堆肥作りのためのほら穴を繋ぐ道だ。

 便壺の運搬をするのに、道があった方が良い。トパズに道の整備をしてもらうと、後の整備はオレとウココたち男性兵士だけでひっそりと作り上げた。女性陣はあまり関わりあいたくないらしい。精霊たちもさけさせようとしていた。さすがにトパズの整地だけはやってもらわないとどうにもならないので、そこは許可されたのは幸いだろうか。

 人員が少なかったものの、こちらの方は短いだけあって短期間で出来た。


 ユズやコリン隊長たちは出来上がった道を使って、早速木材の運搬や収穫された芋の運搬をしている傍らで、オレは便壺を大八車に載せて堆肥製造所に運搬していた。


 何か納得いかないが、適任が自分なのは分かっている。軽い芋は女性でも運べるし、木材は重いとは言っても、最悪転ばしても問題はない。便壺の運搬は慎重に行う必要があるために、力に余裕のあるオレしか出来ない。


 ウココ他、数名の男性兵士には犠牲・・・・・・協力してもらって、便壺を大八車に縛り付けて一つ一つ運んでいく。大八車も一つ専用にしてもらったので、BQCと名前を書いて使う事にした。


 便壺を四つ、ほら穴に運び終えると、海岸から砂を持って来る。これを半日放置して日干ししたら、ほら穴に詰めていく。通常肥溜めは土の中に埋めるのだが、雨の多い火竜島なので、埋めずに高地に設置して水没の回避を試みている。コレ、必要なのかどうかは分からないけどねー。


 出口を大きな石で組み、隙間に粘土を埋めていく。

 全て終わったら、全員で石灰を被る。確か、石灰には消毒の効果があったはずだ。多分。ないよりはマシってレベルかなあ。そもそもの石灰も少ない。あとは海岸で洗って更に川で洗った。

 これで、数ヶ月程度で糞堆肥が出来るだろう。道が出来たのはありがたいなあ。



 さて、二つの道作りが順調に終わって一段落ついたのだが、まだ欲しい道はある。海岸への道と川への道だ。


 海岸への道は、収穫される魚や昆布の方は軽い代物だし、まだ道がなくてもなんとかなるが、船からの荷卸しは重量物なので欲しいところだ。ただ、往復頻度は1ヶ月に1度と、かなり少ないのでどうしたものか。


 結局は、オレたちで土を運んで盛り、トパズに圧縮してもらい、でこぼごが残る部分はみんなで削って道とした。石も敷かず側溝とかは全く作らず風雨には弱いものの、壊れれば必要な時に作り直すという事で、良しとした。

 なお、この道に関しては、ドラゴンローリングロードローラーの使用許可が出たので、オレと桜は十分に堪能した。


 川への道は、水汲みに必要であった。だが、トパズの能力が土の変化で、それも結構な距離面積まで可能なので、水の道・水路を作ってはどうかとなった。

 軽く設計図を地面に書く。こういう場合にはルーガ少尉の分野なのだが、いないのは痛いなあ。


 水路は川から家の近く100mほどのところまでとした。いっそ家まで引いた方が良いとの意見は、大雨のときに氾濫して家が水没する危険性から却下となった。また、水路は家に近づくまでの途中で海に流れる支線を作り、普段はそちらには流れないように木板を嵌めこんでおく。


 大雨のときに木板を外す・・・・・・余裕があればそうするが、放って置いても大雨のときは木板の上を流れるか、木板が壊れるだろう。木板は低めで薄い奴にしておく。


「ちょっと田んぼの様子をみてくる」


 という定型の危険を冒す必要はない。


 そして、家の近くまで水路を引っ張った後は、終点を海に流れるように掘り進めば良い。こうして、二本で水を逃がしてやれば、大雨の日も家まで水が来る事はないだろう。


 と言う計画を立てたものの、作るのは難航した。こちらは海岸への道とは違い、水が常時流れるので石を敷かないと土が削れて、側面が崩れてしまう。また、道中に石の部分があって、そこはオレが殴って割って回った。芋畑や海岸への道は下が石・岩だったとしてもその上に土を盛れば良かったが、こちらは掘らないといけなかった。


 支線や海に流れる道に関してはただ掘るだけで済ませたが、本線の水路に石を敷き終えれたのは、ルーガ少尉が戻ってきてからだった。


 こうして、芋畑への道、堆肥製造所への道、海岸への道と水路が1ヶ月半ほどで完成した。なかなか早いだろう。

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