表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/44

第三十七話 道を作ろう

 道を作ろう。

 今まで林には道のない草原を通って行く。林から伐り出した丸太を運ぶのは、ソリを使った力技のごり押しだ。整備された道が欲しくなる。それに芋畑も作ってあるため、拠点との行き交いは多くなる。


「と、いう事なんだけど」

「道~?」

「整備された道ですか」

「舗道ですな。行き交いの多い箇所には必須の代物でしょう」


 林に向かう草原を歩いているのは、オレ、桜、ユズ、スゥーイ、一歩下がってコリン隊長。それに椿とサファイアは浮かんでついて来ている。


「あれば有り難いですな。大八車が使い易くなります」

「そうね。雨の後のぬかるみを歩くのは辛いですね」

「そう? 泥んこ楽しいよ~」


 ふふふ


 桜とサファイアは泥んこも楽しんでいる。確かにアレはアレで楽しいが、移動しにくく時間を取られるのは困るのだ。


「ふーむ。火竜が泥遊びをするのは目撃例があるけれど、やっぱりそういう習性なんだねー」


 相変わらず、スゥーイはオレには関心がないようだ。 


「泥遊びは泥遊びでやるとしてだ。大八車が行き交い出来る程度の幅の道を作りたいな。そして」


 オレは火山を見上げて


「出来れば火山まで道を通したい。溶岩の熱を利用したいんだ」

「なるほど、しかし、それは時間が掛かりそうですな」

「コクヨウ、良いのですか。火竜の重要な産卵地なのでしょう」


 あっと、その問題があったなあ。


「あーうー・・・・・・」

「それに、途中に川がありましたから、橋も必要になりますよ」

「うぐっ」


 困ったな。確かに、橋作りまで考えれば、どれほど時間が掛かるか。全部やろうとしたら年単位になりそう。


「と、とりあえず、芋畑の奥あたりから丸太運びのために、林までの道を作る事を考えてはどうですか。何も全部を一斉に考えなくても良いでしょう」


 コリン隊長がフォローしてくれたので、それに乗る。


「そうだねー。なんにしろ、その道は必要だから、そっちが出来てから考えればいいかー」


 こっちの方は、問題ないだろう。


 さて、道作りだが、言うは簡単作るのは難しい。単純に踏み固めるだけで道が出来れば楽なんだがなあ。普通だったら、オレたち火竜の重量で踏み固めれば、それだけでそこそこの道が出来るはずなんだよなあ。


「何度も、ここを通っているんだろう。その割りに道にはなってないね。獣道くらいは出来そうなものなのにさー」


 火竜島は風雨の強い島だ。そのために、なかなか踏み固めるということが出来ない。すぐにぬかるんでしまうのだ。多分、オレと桜が何日も掛けて往復すれば、道になるとは思うんだが、今はそこまではしていない。地盤固めのためにはやらないと駄目だろうか。


 しかも地盤固めをしても、長期間風雨に晒されれば簡単に崩れるだろう。

 道を作るとしたら煉瓦などを敷いた方が良いだろう。オレと桜の家の居場所用に作った、脆い土器では駄目だ。野焼きの方が楽に作れるんだが道としては無理だろう。かといって、椿に焼いてもらうとしたら、どれくらいの時間が掛かるか。数キロ分の道の煉瓦なんて、作っていられない。


「岩を砕いて、石を作って、それを敷くか」

「ふむ」

「石と石の間に粘土を詰めて後から焼けば、モノになるんじゃないかなあ」


「焼くの~」

 ふんす


 桜と椿が焼くという事に反応した。粘土を焼くのは、オレ、桜、椿の3人掛かりでやれば早く終わるだろう。道全てではないし、粘土の固さは土器程度になると思うが、メインが石ならば大丈夫なんじゃないかなあ。セメントとかアスファルトとか使えればいいんだけど。


 アスファルトは原油からだっけ・・・・・・セメントは何から出来てるんだっけ。えーとセメント土あったかなあ。石灰石だったっけ?火竜島にあったかなあ。あんまりそれっぽい石は見なかったけど。


 貝殻を集めて砕けば、石灰になるだろうか・・・・・・行けるかもしれないが、量が足りないな。弱そうな箇所への補強材くらいなら、使えるかなあ。

 もし石灰を使うならば、大陸から購入する必要があるかな。やはり今は粘土で隙間を埋めていくか。

 

「粘土は焼かない方が良くはありませんか。硬くしてしまうと、割れそうです」

「む。その可能性もあるかー」

「大丈夫じゃないかな~、焼いちゃおうよ~」

 ふんす


 桜と椿はやる気である。


「うーん、そうだなあ。どっちにしろ、試してからだなあ」


 そんな風に喋りながら歩いていたら、芋畑に着いた。芋畑ではすでに芽が出ており、順調そうである。あとどれくらいで収穫できるだろうか。収穫した後の運搬を考えれば、それまでには道を作っておきたいな。


「道を作っておきたいねえー」


 足に付いた土を拭いながら振り返った。長いなー。


「そうですね」


 みんな、足に付いた土を除けている。うっとうしいよねー。今朝雨が降ったせいなのか、思ったよりぬかるんでいた。


「コリン隊長は、椿と協力して、粘土の固まり具合を確認してみてー」

「はい、分かりました」

「オレと桜は、地固めと行こう。雨が降れば台無しになるが、短期間で集中して踏み固めればいけるんじゃないかなあと思う」

「ふに~、踏むよ~踏むよ~」


「火竜の道作りか・・・・・・初めてだと思うけど、参考にはならんさねー・・・・・・土竜ならば例があるんだけどさ」

「ほう、土竜の道作りだと」

「道を作る竜と言えば、土竜くらいさねー。火竜が道を作るなんて聞いた事はないよ。成長すれば飛べるってこともあるんだろうけど」

「火竜が幼竜時代に過ごす、この火竜島でもそれらしい道の跡はなかったですな」


 少し対抗心が芽生える。火竜が道作りで土竜に劣ると?


「ただ、そうは言ってもね。土竜は邪魔な石や岩をどかして、巨体の重量で道を踏み固めるだけさ。ここのように雨が多い場所じゃないから、それで十分に道になるってだけさ」


「ふむ、土竜の移動速度は早くないと聞きますが、時間は掛かるのではないですかな」

「掛かるさねー。道が出来るのは年単位さー。でも一度出来てしまえば人間も通商路として重宝しているからねー。ほら、イアリカ大道ってあるだろう」

「えっ、あれって、土竜が作った道路なんですか」

「大元はねー。かなり昔の事だし、その後の改修・整備は人がやってるから、知らない人も多いけどさー」


 ぬっ


 大きな道は現時点では作れない。ならば、オレたちはもっと早く作ろう。実際のところ、年単位も費やしていられない。さて・・・・・・


「桜! やるぞ」

「うん、いいよ~」


 ドラゴンローリングロードローラー!


 ゴロゴロゴロゴロ


 オレは巨体を道に横たわらせ、そのまま転がっていった。桜も同様に道を転がる。火竜の巨体でのロードローラーだ。これで地盤固めを速攻で終わらせる!


「コ、コクヨウ、そっちは川の方ですよ! ああ、サクラちゃんそっちは・・・・・・」


 うん、泥遊びは出来たからよしとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ