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第二十八話 釣りをしよう

 この火竜島において、食料調達をしようと思えば漁が手っ取り早い。平野部分は狭く、なかなか生えて来ない植物、このために農業は難しい。

 それでも芋畑ならばなんとかなるだろうが、それくらいだろうか。大陸から苗を手に入れれば、この火竜島でも育成出来る物があるかもしれないが、それは随分と先の話になる。


 漁は現在のところ、オレと桜が銛突きで取ってきているだけだ。オレ達が他に手を取られると、途端に魚不足になってしまう。取る量も増やしたいから、他の者も魚を取れるようにすべきだ。


 魚網は注文している。小船も・・・・・・次来るかは分からないが、注文はしている。うーん、やっぱり船は、火山島の木を伐って作った方が良かったかなあ。でも、あんまり大きくて太いのはないんだよなあ。


 あー、その場合でも筏なら出来るか・・・・・・。いや、繋ぎ合わせる縄がないなあ。


 待てよ。木組みで行けるか?

 う~ん? うん、よし、筏と釣竿を作ろう。


「ギョウコ~、筏作るから、そこの丸太使っていい?」

「駄目です」


 はやっ。


 日干ししている丸太の使用許可は降りなかった。家の壁と屋根用の丸太だったから勝手に使えないわけだ。


 遠くの林を眺める。木の数も多くは無いからなあ。早々伐り倒すわけには行かないが、筏を作るだけならば数はそんなに多くいらないから、大丈夫大丈夫。


 そこで、斧とソリを借りて林におもむいた。大八車の方を借りようかと思ったが、長い物を運ぶには向いていない。はみでるし。ソリは重いなあ。


「コクヨウ、何をするのです?」


 準備をしているオレに、ユズが近寄ってきた。


「筏作るよー、そのために木を伐ってくる」

「筏を作ってどうするのですか」

「海での漁に使う。小船はいつになるか分からないし、漁がオレ達の銛突きだけだと、量が取れないからねー」

「なるほど、それでは、私も一緒に行きましょう」


 桜は椿と一緒に日向ぼっこをしていて、その側でスゥーイがなにやら記録をしている。彼女達は今回は着いて来ないようだ。


「桜ー、椿ー行って来るよー」

「行って来ます」

「いってらっしゃーい~」

「いってらっしゃいさー」


 オレとユズとギョウコの3人で林に来た。林では6本の木を切り倒す。合間合間に、ユズが撫でてくれた。丸太となった6本をソリに載せたところで、昆布茶を頂き、家にまで引きずって持ち帰る。

 ユズはまた丸太の上に乗った。こういうのが好きなんだな。


 コリン隊長達が切り出していた丸太とは離れた場所で日干しをする。どの道、海水につけるので、日干しする意味があるのかは分からないが、木組みを作るために、道具の製作の方が必要になるので、時間はある。


「今度はどうするのですか」

「木を彫るための道具を作る」

「どんな道具ですか」

「ノミかな」


 タマゴの欠片を取り出して、欠片を時間を掛けて地味に削る。刃先を作るのは片手で出来たのだが、それ以上の細かい作業はオレには無理だ。ノミの形を説明して、ギョウコに刃先に柄をつけてもらった。


「コクヨウって、器用なのか、そうでないのか」


 ユズが感心したのか、呆れたのか、よく分からない感想を出した。


 続く作業は翌日になった。縦に3本、横に3本隙間をつけた状態で仮組みして、かみ合う箇所を製作したノミで彫る。


 カツカツ


 丸一日を使ってもまだ彫りきれなかった。さらに日を費やして、やっと丸太を彫り終える。これを浜にまで持ち込んで、6本を組み合わせてノミで削った部分をかみ合わせた。多少歪になってしまい、隙間が出来たがその部分には小石をはめ込んで調整した。


 作り上げた筏でいざ、大海原へ・・・・・・


 うん、オレは乗れないのでギョウコに乗ってもらった。隙間が多いというか、ほぼ隙間だらけの筏なのだが、なんとか浮かんでいる。波にも耐えた。浮かぶのを確認した後は一度引き上げて、次の作業をする。


 続いては釣竿の作成だ。丸太にする時に打ち払った枝をまっすぐになるように削る。そして、その先に布のほつれた糸をもらってくくり付けた。釣り針は、壊れた鉄片をもらって、削って成型する。釣り針にタマゴの欠片を使うのはさすがに勿体無かった。失くしてしまう可能性もあるからなあ。


 餌は砂浜を掘って探し回った。海に入って、海底を探ると、よく分からん虫? が手に入った。ゴカイでいいんかなあ。これ。


 うん、ユズ達は一斉に身を引いた。やっぱり嫌いなんだね。こういうの。

 ・・・・・・オレもあんまり得意じゃないなあ。ルアーとか作れないものかなあ。


 こうして、やっと釣りの形は整ったので、ギョウコにやらせる。うん、オレの体躯・器用さでは色々無理がある。ギョウコは筏の上をよたよたとしながらも、海上に出て、釣竿を垂らした。


 あっ、波がでかい。


 ドッパーン

「うわあああ」


 大波一つで筏が壊れて、ギョウコが海に投げ出された。

 慌てて、壊れた筏を回収する。


「あぶない、あぶない、危うく丸太が流されるところだった」

「けほっ、けほっ、こっちの心配もしてくださいよ」


 ギョウコは大丈夫そうだった。

 回収した筏を、もう一度組み合わせる。どうやら嵌めていた石が大波の衝撃で外れてしまい、それで分解したようだ。今度は組み上げてから、さらに釘を打ち付けて補強する。


 時間が掛かって、用意が出来たのは二日後だった。渋るギョウコをなだめすかして、釣りに行かせた。今度は、分解されずに済み釣りも順調に行った。


 ギョウコは何度か足を踏み外したり、海にこけたりしたような気がしたが・・・・・・釣果は問題なく、十分だった。


 これで、オレと桜以外でも、漁が出来るようになったのだ。

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