第二十一話 フン!フン!フン!(汚い話になります。ご注意下さい)
火竜島は当然島であるために、全体的に塩っ気が多い。これに加えて土地は火山灰やら花崗岩やらで出来ていて、植物が生え辛い。林やら森なども点在するが、山肌なり斜面なりに存在しており、平野部は狭い。
この島に人間の入植がされなかった理由の一つである。この改善には時間が掛かるだろう。当面は現存する林を伐り出して、小規模ながらでも芋を育てよう。大陸から何かの苗を持って来たいな。
そこで、肥料も作ろうと考えた。考え付く肥料は、腐葉土、そして糞である。また海藻などでも肥料が作れたはずだが、そちらは後回しにしよう。食えるものを肥料に回すのは、もったいない。対象が芋なのでそんなに肥料は要らないと思う。腐葉土だけでも良いかもしれない。ただ、糞肥料の場合は精々20人程度の人間と火竜である。初期において大した量は作れない。
島で生活する前提のため、大陸との航路がある事にはあるが・・・・・・運べる量と頻度が脆弱だ。ここは自給自足を目指すべきだろう。そして、その場合において糞は貴重な資源となるだろう。日本の江戸時代では、糞の取り合いで争いが起きる事もあった。現代の日本では糞を加工するより、もっと楽な化学肥料があるけどね。確か、し尿処理施設では売っていたかなあ。
また、今まで適当にあちこちにしていた。ある程度、する場所は決めていたとは言え、放置したままというのも・・・・・・土は掛けているから、自然に発酵しているはずではあるが、これの循環も考えなければいけない。
糞を海に流したら、その海を泳ぎたくは無い。火竜島はそこそこ広い島ではあるので、土地に余裕はあるとは言える。しかし、きちんとしておかないと糞だらけになりかねない。循環はどうしても必要なのだ。
と言う力説の元、人糞、竜糞を集める事を了解してもらった。桜は特に考えなしに
「いいよー、コクヨウに任せる~」
で済んだのだが、ユズが抵抗。恥ずかしいらしい。
そうなん?
あー・・・・・・人間ってそうだっけ。知識としてでしかないから、感覚が分からん。
また、コリン隊長も難色を示した。結局はハーサ王妃が乗り気ではないながらも、必要ならばと承諾してくれた。これにより、全員の了解を得られた。あと、椿がやたら前に出てきていたが、残念ながら火の精霊は糞をしない。
了解を取れたので、思案に入る。まずはトイレを作る。古式豊かなボットントイレ。
う~ん、確か、あれって、後から汲み上げるんだよねえ。
メンドイ。水洗トイレ式に流せないかなあ。
水洗トイレは無理かー。構造どうやらいいのやら、パイプ作っても途中で詰まりそう。水の確保も無理だなあ。そうだなあ・・・・・・
壺
壺を使おう。便壺。壺にする形式にして、その壺を出し入れすれば、楽だぞ。壺を出し入れするには・・・・・・地面に掘って入れたら、面倒だな。
そうだ。二階建てにしよう。小さな石垣を四角に作る。その上に板を張って二階を作る。一回に壺を設置し、二階の床に穴を空ける。よし、これでいけるぞ。
「ナンシーさーん、大きい壺、二つばかり余ってない?」
「えっ、コクヨウさん、そんな事をいきなり言われても・・・・・・どうされるのですか?」
「うん、便壺にする」
ナンシーさんは変な顔をした。えーあー・・・・・・
「トイレ作るからさ。その」
「ああ、なるほど、そうですね。必要ですね」
現在、壺は貴重品なのである。椿窯蔵は、まだ開催の予定ではない。現在、キノト王子達が作った椀を日干し中だ。さらに壺を作る予定にしてはいない。野焼きでチャチャッと作るのも手だが、その場合は土器になるな。確か、耐水性低いっけ?糞尿が染み出るようだと不味いな。
うへー
人間の糞は面倒だなあ。オレ達火竜の糞は、水気無いんだよなあ。兎の糞みたいなものだ。
粘土も少ない。これも、一度島中探して粘土確保しないとなあ。今の段階では新規の壺を作るわけには行かない。したがって、使えるのは大陸からユズ達が持ってきた壺だけだ。ナンシーが困惑していると、ユズがやってきた。なんだろう、見張られている気がしないでもない。
「どうしたんですか。コクヨウ、ナンシーさん」
「ああ、ユズ、トイレを作ろうと思うんだけど、そのために大きい壺が二つ欲しい」
「さっきの肥料の話ですか?」
「そうそう、肥料用の糞を集めるのに、トイレ作ろうかと」
「ほうほう」
ユズが食いついてきた。
「それにほら、今は、まあ、アレだし」
具体的に言おうとしたら、ユズの目が光った。何とも言い難い危険を感じたので、曖昧な発言になってしまう。
「どの様なトイレを作るのですか?」
「えーと、こんな感じ」
オレは地面にさっき考えたものの図を描いて見た。
「えっ、この上は、何もないのですか?」
「あー・・・・・・オレの手だと細かい作業出来ないからねえ」
オレは短い手を振った。
「必要ならば、コリン隊長に頼んで、天幕か木板で作るしかない」
「そうですね。コリン隊長に頼んでおきましょう」
「うん、そっちはそっちで頼めるかな」
匂いもあるし、囲いが出来るのならば、ある方が良い。そういえば・・・・・・日本の知識で何かトイレ中は油断しているか何かで、危険とか。アレもよく分からんなー。火を吹けば良いだけじゃん。踏ん張っている時って、油断すると火が出るんだよなあ。
ボッ
人間も、火を吹けなくてもツバは吐けるから、対処は出来るでしょうに。まあ、防御壁があるのならば、あった方が安全性が高くなるか。
「それで、大きい壺は、男女用で二つあれば良いのでしょうか」
ナンシーが周りの壺を見回しながら問いかけてきた。
「うん? ああ、今は人間用と竜用で二つあれば良いよ」
代えは今度の船便で運ばれて来るものを使うか、椿窯蔵で作るかな。
「うん?」
「うん?」
今度はユズが小首を傾げて問いかけてきた。
「男女で二つではないのですか」
「違うよ。人間と竜だと体躯が違うから、同じトイレは作れない」
竜用のトイレは人間用よりも大きくしないといけない。壺も大きい方を竜用に回す。そんなに都合よく大きな壺があったっけかなあ。
「それに、これ肥料を作るのを目的としているからね」
「ええ」
「人間と竜の糞とで、効果が変わる可能性があると思うんだ」
食べている物は、変わりはしないのだから、肥料も変わらないかもしれない。それを調べておきたい。糞の水分量が違うからなあ。
「なるほど、それでは人間と竜、男女で大きな壺が4つ要るんですね」
「えっ、いや二つでいいよ。今は壺も貴重なんだし」
「4つ要りますね」
「そうですね。姫様。4つ要ると思います」
ふと見ると、ナンシー他の侍女達も頷いていた。
「ソウダネ、ヨッツイルネ。タイヘンダケドヨウイデキルカナ」
「ええ、コクヨウがそういうのならば、なんとかしてみましょう」
なにか、不合理を感じるが、逆らわない方が良いだろう。オレの野生の感がそう告げている。
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