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第十五話 石垣の完成

 石を積んで五段、高さは50cmくらいの石垣を作り上げた。

 あー、疲れた疲れた。

 オレと桜は疲れ果てて、伏せっていた。ユズはそんなオレ達に疲労回復の魔法を掛けてくれていた。おかげで体中がなにか、ほわほわとする。


「あー・・・・・・で、家はどうするの?」


 ユズ、コリン隊長、ルーガ少尉達を見回して聞いてみた。


「まともに作れば、数ヶ月掛かると思いますが・・・・・・」

「うん? 微妙な物言いだね」

「コクヨウ殿とサクラ殿が随分と頑張られましたから」

「あー・・・・・・」


 ルーガ少尉が答えてくれた。石垣を数日で積み上げてしまったのは、想定以上に早かったわけだ。桜と顔を見合わせる。


「そもそも次の船便が着いて、道具を揃えてから家を建てるつもりでした」


 なるほど、石垣は次の船便が来るまでに作るくらいの日程だったのか。オレ達が頑張り過ぎたかな。


「その日程でもかなり早いですよ。人だけなら、まだまだ掛かったでしょう」


 ふむ。


 しかし、そうは言っても、実のところ石垣はまだ完成しているわけじゃない。サン達はまだ、隙間を埋めるのに土を詰めている。また、石のはまり具合を良くする為に、男性兵士が上の石を動かし調整している。大まかなところは終わっているが、細かな作業と調整は残っているのだ。

 それは、もう、サン達に丸投げだ。


「サクラさんもコクヨウも頑張ったもんね」


 ユズが撫でてくれる。うん、撫でられるの好き。撫でてくるユズの手に、オレと桜は逆に頭を擦り付けた。


 スリスリ


「この規模の石垣を碌な道具もない中で、数日で終わらせるというのはすごいですよ」

「んー・・・・・・と言っても、細かい作業はそっちにお任せだからねえ」


 サン達の作業を眺める。


「それでも、そういった作業は余った時間で進めれば良いだけです」


 なお、時間が掛かったのは、大石の運搬でもなければ、積み上げでもなかった。石垣作りで一番困ったのは、大石がどこにあるのかって事だった。これの探索に時間が掛かるのだ。

 中ぐらいの石はそこらにある。岩ってほどの大きいものも、そこらにあるという程ではないが散在している。近場の適当な大石は数が少なく、早々に取り尽くしてしまった。


 この問題の解消、つまり大石の確保のために、岩を割る事にした。それさえ出来れば、後は火竜のパワーで運び込んで積み上げるだけだ。岩を割るのも火竜のパワーだけど。


 オレは手をさする。

 岩割りした手が痛む。

 ユズに回復魔法を掛けてもらって治ってはいるのだが、どこか軋む。


 オレは一度、手にヒビを入れてしまった後でも、岩割りを続行しようとした。ユズの回復魔法があれば、と思ったがそのユズがドクターストップを掛けた。


 天幕内の台におかれたナックルをみる。岩割りに使っていた、簡素なものだ。壊れた斧の鉄を使って、椿に溶かしてもらって成型したものを布で包んでいる。握り手を作ってはいるが、ただの鉄の塊でもある。


 あれを作る事でやっとユズの了解が取れた。渋々だったようだけど。


 ちょっと岩割りにムキになったのかもしれない。あそこまでやらなくても良かったかなあと、今更ながらに思う。石垣を早く作れたのは、そうい一幕もあったからだ。我ながら、無理をしたものである。


 ユズのオレを見る目が痛い。今回の事で相当睨まれただろうか。やりすぎたかなあ。

 ・・・・・・今度何かするときは、それ用の道具を作ってからにしよう。



「未完成とは言いますが、現状でも石垣はありがたいですからね」

「石垣の中で天幕建てるだけでも、前と随分変わりました」

「今朝の風雨でも、今まで比べれば随分と楽にしのげましたからな」

「そだねー」


 多少の風では天幕は飛ばなくなった。多少でない風には、飛んでしまうけど。

 下から吹き上げる雨、なんてものも無くなって、助かった。石垣の中で設営されている天幕のいくつかを呆けながら見ていた。


「家も火竜殿の協力があれば、想定よりかは早く建てられそうですな」

「どうかなあ。細かい事は出来ないよ」


 コリン隊長は、気楽に言ってくれる。オレは自分の短い手を見る。確かに火竜の力は重機の代わりにはなるが、細かな作業が出来るわけじゃない。その辺は人間達にやってもらうしかない。


「その部分は、我々がやりますよ」

「手助け頂けるだけで、ありがたい事です」


 ユズが睨みつけるように、コリン隊長とルーガ少尉を見た。


「コリン、ルーガ少尉、あまりコクヨウやサクラさんに頼ってはいけませんよ」

「は、はい。ユズ王女様」

「そ、そうですね」


「コクヨウ、サクラさん、今はしっかり休んでください。特にコクヨウは」

「は、はい」

「は~い」


「コクヨウはすぐに、無茶をしたがるようですから」


 ユズは溜息を吐いて、しみじみと言った。


「いや、それユズが言う?」

「うっ」

「はははは」


 ユズに自覚はあるようだ。周囲もそういう認識だ。しかし、オレもユズの事は言えないか。無茶は慎まないとな。


 ともかく、これで一段落はついたわけだ。オレは手を擦りながら、一休みさせてもらう事にした。

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