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新聞屋

作者: 水月


まだ暗く丑三つ時と呼ばれる時間。

街灯のみついている道端。

そんな中に、明かりがついている戸建ての建物がある。人も多くはないが少なくもない数が集まっている。

そして、建物の前には人数と同じ数のバイクが停めてある。





この建物は、新聞屋の事務所兼作業場。

中では、皆、本紙に折り込み広告を組み込んでいく。

今日は平日。天気は晴れ。新聞は広告とあわせてもさほど厚くならず、ビニールのラッピングもしないで済むため、配達しやすい日である。




1時間ほどで組み込み作業が終わり、バイクに積んでゆく。それも終えると、出発だ。


店を出てすぐ右折し、真っ直ぐ進む。3つ目の交差点をまた右折。そこから2つ目の一軒家から配達開始だ。

バイクからは降りずに、ポストへ入れる。次は、隣のアパート。集合ポストがあるが、玄関ドアのポストに入れるため、今度は降りる。配達する家は4階のため階段を一段抜かしで駆け上がる。入れたらすぐ引き返し急いでおりていく。そして、また次の配達へ。


配達は時間との勝負。お客様が起きる前に全て配らなければならない。与えられた時間はおおよそ3時間。その間にミスなく配りきらなくてはならない。単純作業ではあるものの、一日2回を毎日、となるとなかなか難しい。抜かしや銘柄の間違いを起こさぬ様、気をつけていく。そして、もう一つ起こしてはならないものが交通事故。深夜だと出歩く人は全くと言って良いほどいない。道路を走る自動車も、まず無い。たまにすれ違うのは、同業者である場合がほとんどである。そんな状況だからか、同業者、一般人(今回は新聞屋以外が運転している自動車を指す。)問わず、危険運転をする人が現れることがある。信号無視に大幅なスピード違反、一方通行の逆走などなど。こちらがルールを守っていても、相手が違反すれば意味が無いもの。自分が交通ルールを守るのはもちろん、周囲も意識する。



さて、配達が折り返しになってきた。2ヶ所続けて、タワーマンション。ここを配ると残りはだいたい半分になる。戸数が多い分、新聞をとっている家庭が多い。2ヶ所だけでかなりの部数がはけるのだ。階段を上り、裏に回って、今度は階段を下りる。少し厚いドアをあけるとレタールームの投函側だ。ここはオートロックのため、中に入り配ることが出来ない。だから、裏から集合ポストへ投函する。右手の指で部屋番号と銘柄を書いた手板を挟み、手のひらと腕で新聞を持つ。左手で新聞を入れていく。この時は、手板とにらめっこである。集合ポストは特に間違い易い。目の前のポストの部屋番号が合っているかみていきながらの作業だ。

まず薄い諸紙ースポーツ紙やこども新聞を入れる。次は厚い本誌。こちらは配達部数が多いから、先ほど言ったにらめっこ状態になる。次々に半分に折って投函していく。スコーン、スコーンと新聞を投函する音がリズムを刻むかのように響く。音が消えたと思ったら、がしゃんとドアが閉まる音。レタールームを出ると急いでバイクの元へ。そして次のマンションへ。またにらめっこ。そして、今度は一軒家。


短いインターバルで走る、休む(運転)を繰り返す。次第に息もあがる。そして、最後の配達場所の一軒家へ。

すとん。新聞が落ちる音。バイクの前カゴにも荷台にも新聞は残っていない。太陽が昇り始め、空と辺りが明るくなってゆく。この夜と朝の境界線のような時間が好き。美しいと思う。



終了時刻、本日は午前5時48分。一先ず、今日も無事終えられたことに安堵する。あとは、お客様からクレームの電話が無いことを祈りつつ、帰路につく。事務所へ戻ると、同じく配達を終えた先輩、後輩が一人、また一人と帰ってくる。タイムカードを押したら、自分の家へと戻る。少し仮眠をとってから朝食としよう。

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