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第四十一話 vsカイセル、決着



 カイセルは爆熱球を避ける。ドドドドドン……と花火の様に四方から焼けるような熱風が爆発を伴って行き場を塞ぐ。真正面から迫るディンを打つしかカイセルには選択肢がない。小細工出来ないように無理矢理追い込まれたのだ。


 カイセルは動じない。剣技で勝っているのは自分だという確固たる自信がある。


 最速の一撃を放てば確実に勝てる。そう確信し、爆発魔法に巻き込まれないようにカイセルは飛び出した。


「来たか、ぶっ潰してやる……」


 途端にディンは刀に深紅の焔を纏わせる。呪印がブワアッ、と濃く発現する。


(えっ?)


 カイセルは困惑した。


(この力は一体どこから……?)


 ただ、困惑した所で時間は待ってくれない。刻一刻と迫るディンの馬鹿げた焔を完璧に避けた上でこの一撃で終わらせないとならない。恐らくこの力を更に強く出されたらいくらカイセルと言えども力負けするだろう。


 ただ、呪印が色濃く発現している。この力は長く持たない可能性も有るが、長引かせてはいけない力だと考えられた。自分のやり方が間違えていたのかもしれないとカイセルはここで初めて気付いた。


「楽にしてあげますよ!!」


 カイセルは大きな外傷を免れない剣技で応える事を決める。今の自分に出来る最高の称賛。それでいて、こんな時でも細心の注意を払い、打ち込む場所を選ぶ余裕がある。カイセルから見ればディンはまだその程度の剣士であった。


 ただ、魔力によるブーストがかかればそうもいかない。そこに関しては慢心していた。Sクラスの生徒ともなればイレギュラー的な力を有していても何らおかしくなかった。


「おらぁああああ!!」


 ディンが雄叫びを上げて剣を振り下ろそうとしている。カイセルから見れば愚鈍な太刀筋。


(勝ったな)


 ガギィン!!


 上等な鉱物のぶつかり合う音が閑静な学園に響く。戦いを見る者全員が呼吸を忘れ、二人の激戦を見守っている。


 カイセルは横一文字に抜刀してすり抜ける。圧倒的な速さだった。


 カイセルは仕留めた筈であるディンを確認する為に振り返るが、ディンは無傷でカイセルを睥睨していた。


 剣技不発。信じられない現実をカイセルは目にする。


(何故だっ!?)


「オレの勝ちだ」


 強い眼差しでディンは勝利を宣言する。それはカイセルの負けを同時に意味する。何を言っているのかカイセルは理解出来なかった。次の瞬間まで。


 次第にクルクルと刀の刀身がどこからとも無く落ちて地に突き刺さる。それを見たカイセルは不思議と軽くなった刀を見る。刀身が半分も残っていない。


(完全に僕の負けだな……)


 その姿を目に収めるバングルドは昔のライドを見ているようだと懐かしむ。


「そうみたいですね、僕の負けです」


 少し思考を含み、感慨に耽るカイセルは言う。それに、愛刀をへし折られてなお爽やかにはにかんだ。そして、ディンへと歩む。剣を割った謝罪をする為に。ただ、カイセルはわかって欲しかった。


 その剣ではもうディンの剣技は限界であると。それに剣も限界であると。そして剣は修復できることを。勿体無い才能を食い潰しているディンを見ていられなかった。


 思っていたより何倍もの激戦を繰り広げた二人を皆は讃える。


「グッ……!?」


「大丈夫ですか!?」


 ディンは身体の違和感に膝を着く。カイセルが駆け寄る。力の使い過ぎだった。闇の魔力が焔を扱ったせいで増幅していた。思った以上の出力にディン本人も自分の力だとは未だに信じられていない。


「はあっ、はあっ……」


 ディンの身体には過負荷がかかりすぎて熱を帯び、呪印がビガビガと呼吸している様に蠢く。


「大丈夫だ……」


「あのっ、僕、」


「後で、頼むよ」


 ディンは苦しく息を整えながら笑顔をつくる。カイセルが悪気無いことも、何か伝えたい意思を持っていることもディンは理解出来ている。それならばもうこれ以上の言葉も無粋なやり取りも必要無かった。


「わかりました」と言い、肩を落とすカイセル。彼はこの学園で剣士相手に初の敗北を喫する。底の知れない力、と言うものを初めて見た。そして思う。


(この人ならゼクス兄さんとも……)


 ギリギリで力の暴走を押さえ込んだディン。力に任せて自分を見失ってはいなかった。それに今は力の代償、相当の反動を受けている。その使い過ぎた力を抑え込まなければならない。




 バングルドはディンを止めようとしていた。ただ、ディンは制御して居るように見えた。それ故にバングルドはディンを止めなかった。それなのにマールに叱られる。


「校長!? なぜ止めなかったのですか!! 生徒が、あんなことにっ……!!」


「狼狽えるなマールよ。彼奴は逸材じゃ。使いこなしおった、あの力を」


「そんな、まさか……」


 誰が見ても分かるくらいに狼狽えるマール。彼女のこんな姿は見たくても見れるものでは無い。


 そして、二人の姿を見たミルシスは空気を読まずに二人に提供する刀、及び剣を早くも構想していた。


申し訳ありませんが、活動報告にもある通り、ここで一度区切りとします。

またいつか、書き直すその時まで……この作品は残しておきます。

プロットはかなり有るので、また書きたいとは思っています。

読了していただいた方々、どうもありがとうございました。

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