第十七話 焔と共に
本日最終投稿です。
また明日投稿ブーストかけます。
「おじいちゃん?」
「ほぅ、リオルデではないか」
「焔よ、この二人の事は許してやってくれんか」
「ん、まぁリオルデの頼みだというのなら聞いてやらんでもない」
無愛想に答える焔は状態を太刀へと戻す。意外と物分りが良い。絶対何か仕込まれているとリアナは推測する。
「おじいちゃん、これは一体どういうこと?」
「ガハハハ、すまんな。焔に協力して貰ってお前達の力を少々観させて貰った。手助けも考えておったが杞憂じゃったな」
そんな風に言って笑うリオルデ。
「おじいちゃん!! ひどい!! 嫌いになるからね!?」
リアナはストレートに言い放つ。語彙力が無い訳では無いが、この位子供じみた否定の方が祖父としては危機感を覚えるのだ。
「すまんすまん、何でもするから許してちょんまげ」
「さっぶ……」
リアナは額にビキビキと血管を浮かべ、ちょんまげポーズをしながら頭を下げる祖父を冷たい眼で睨みつけた。
「訳があってな」と言う、リオルデから事の発端から説明がされた。
この念話が出来る太刀、通称魔焔刀は数千年前に誕生したと言われていて、詳細は殆どが不明。使用する際に誓約を交わすと魔焔刀の力を借りることが出来る。だが、鬼神のような力にいきなり体がついて行かずに体が壊れる事もあり、使用者のその後は比較的短命に終わる。
魔焔刀は闇の力に加えて炎の力を得意とする。名前の通りだ。徐々に魔剣に体を蝕まれ、一度その身を委ねればその身が朽ち果てるまで同調し、完全に自由を奪われる苦しみを負う。
痛覚や苦しみなどは使用者である媒体に直接付与される。魔焔刀は痛覚を持ち合わせていないらしい。永遠とも思われる苦痛の果てに待っているのは死、ただそれのみだと。一時の力を手にするには大き過ぎる代償だ。
魔焔刀には魔焔刀の意思があるが今の形状では力を発動出来ない。力の封印が施されている太刀置きに置かれると擬人化さえできなくなってしまう。この太刀置きには、そんな魔焔刀の力を弱める呪術が施されている。
そして、その呪いから放たれた今。次第に力を取り戻していくという。
リオルデの説明の最中、魔焔刀は一々「そうじゃ、そうだったかの?」等、好き勝手に相槌を打っている。少しだけ、微笑ましい。
最後に、魔焔刀の力によって身を奪われた人間は自我を失って、闇の魔力による暴走と見なされ討伐対象になる。所謂魔人化と同様に扱われ処分される。
ただその中でも魔焔刀等による特殊な人身奪取はまた、その力の厄介さを鑑みて高難度討伐と共に緊急案件扱いされ、強力な討伐者が迅速に対応せざるを得ない。
それ故に魔焔刀は力を授けては罪も無く何度も媒体を殺されている。だからこそ、怒りのまま体の限界まで暴れ回ったり、悪逆の限りを尽くした事もある。結局は魔焔刀の力を借りる奴が悪いのだが。
そして、途方も無い時の中、生き抜く事の難しさに気づくものの報われず、世界を怨んでいた。怒りの波に飲まれ過去に何度か事件を起こしてしまう。
最終的に取られた措置が、陽の光さえ差すことの無い、とある小山に封印されたと言う経緯。
数百年封印されて猛省につぐ猛省。
この様な力を誇る存在であればある程に危害を加える思考はダメだと気付く。この数年もの間、リオルデと話すようになり、人が変わった。もっと人と触れ合い、 自由に生きていきたいよ思うようになった。
この世界へ差し迫る危機的状況も鑑みて持てる力での協力も惜しまないと言う。リオルデはそんな魔焔刀に憐れみを覚えた。
名は魔焔刀から取って焔と言うらしい。
「だから、お前達に託したいんじゃ」
ディンは腕を組んで「うん、うん」と、首を縦にコクコクと振っている。
「へぇ〜、んじゃあ、悪いやつじゃないんだな」
「そういう事になる」
「急にそんな事言われても……そんな太刀をどうしろって言うの?」
「少しでもこの世界を見せてやって欲しいんじゃ。細かい事もリダズへは話は通しておる」
「そうなんだ。でも、その話が本当なら太刀を帯びるだけでも危険な気がするんだけど」
と魔焔刀の危険性を危惧するリアナ。実に慎重である。
「なーに、心配すんな。ワシが言ってるんだから大丈夫なんじゃ」
ガハハハとリオルデは笑うをよそ目に「男ってそればかり……」なんてリアナの呟きをディンは聞こえないふりをした。
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そして、ディンとリアナは魔焔刀、焔を持ちようやくディグル村を出る。
多少荷の重い旅にはなるものの二人は胸を踊らせる。
これから先、見たことの無い光景が二人を待ち受けるだろう。道のりは長い。
まずはミザリー達との約束。それと冒険者となる為に国の中枢ディオーネ都へと向かう。
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