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第十四話 一段階、解放

短編、近々投稿予定です!!

それまでにはある程度投稿早めていきます!

「これは意図的に混ぜ込んでいるけど、リアナちゃんのも見せてご覧よ。」


「良いですけど」


  リアナは若干不貞腐れながらも掌から火球を生み出す。因みに火属性と言うのはかなり初歩的な魔法であるが、リアナは火属性の扱いに関してはあまり長けていない。人により得意属性や、自分の相性の良い属性が存在する。一つ相性が良いだけでも冒険者として、かなり恵まれている方ではあるが。


  そんなリアナの火球を見たザイモールはうーん、と顎を撫でながら思いを巡らせる。


「やっぱりね。ほんの少しだけ、光属性が混ざっている気がするんだよ。あの時の崩壊もリアナちゃんでしょ。同じ感じがするね」


「混ざっているんですか? わたしにも!?」


「無意識かぁ、僕も初めは似たようなもんだったからね。まあ、これさえ分かれば後はどうすればいいかすぐに分かるはずだよ」


「そうですね、ゆっくり考えてみます! ありがとうございました」


「僕にかかればこんなもんさ」

 

 さっきまでの雰囲気とは打って変わってザイモールもリアナも満足そうにしている。腐っても大英雄。魔力(オード)の知識、感覚には常の域から逸する絶対的なレベルが違う。


「オレ、ザイモールのそれなら作れるかも」

 

  ディンがそう言うといきなり火球を作り出し、うっすらと闇のオードを纏わせた。


  すると、目を見張る才能を前にザイモールは片眉をぴくりと動かし感心する。


「流石だよ、まさかそこまで出来たとはね」


「今のは初めてやったよ」


「嘘だろ? でも、今はまだその力には頼らない方がいい」


  闇のオードは使用者の隙に入り込み内部から蝕んでいく、行使する力が大きければ大きいほどそのリスクが生じるからだ。


(やはり、ライドさんの血を継いでるからとあってセンスが化け物じみてるな……)


 ザイモールは多少の不安を覚えながらも、ディンにライドを重ねてしまう。ザイモールは無情にもディンに更なる期待をしてしまう。


(きっと、ディンなら……)


 ーーーーーーーー


  それからして数日後、ディンは久々に山を下り、村へと帰ることになった。


  ディンが剣を用いた魔法の行使(コントロール)ができる頃を見計らい、ミザリーはディンの元へと再び訪れる。


「待たせたかしら?」


「そうでもないよ、ミザリーは相変わらず小さいな!」


「余計なお世話よ。ディンもすっかり落ち着いたようね」


 と久々の再会を喜ぶディン。一気に体躯が伸びたことから、改めて再会すると新鮮なまでにミザリーが小さく見える。


  そして、不服な表情をしたザイモールが何か言いたげにミザリーを睨みつけていた。


「何よザイモール。私を恨んだ所でお門違いよ」


「わかってるよ」


  ミザリーはリダズからの命令によりザイモールを連れ帰りに来た。


  それに、ザイモールは結局のところディグル村に来てからもディンを殆ど放置していたとリアナから聞いている。正に職務怠慢である。


  そして、もう一つ。真の目的はディンの呪印、第一段階の鎖を解く事。それによりディンは本来持つ力の一部が還元される事になる。ディンの才能、強靭的な魔力の器があればこの程度の力であれば身を滅ぼすこともないと考えられた。


  今はまだ協会でディンの話を出していないが、ザイモールを連れ帰った際は二人で報告する手筈になっていて、その際にはリダズも肝を冷やす事になるだろう。


(絶対怒られるんだろうなぁ)


 リダズと同じく大英雄であるザイモールはそう思う。立場で言えば似たようなものだが、絶対的な差がある。冒険者協会での立場。


  それに、この事は協会ないしはディオーネ王国としても只事では済まされないのが目に見えている。あのライド・アラングルドの息子に何かあったとなれば血色を変えてこの事態に取り付くだろう。その辺はザイモール、ミザリー共に疎いところがあり、己達にどんな処罰が下るかも想像がつかない。


 素人達の簡単な推測だけでも大事になる可能性が高い事象である事から隠蔽したとしても隠蔽リスクが高過ぎる。素直に報告をしようと言うミザリーの意見にザイモールも渋々納得したのだ。


  それに、ザイモールとのしばしの別れ、誰も惜しむ者も居なかった。円満で送り出される情けない幕切れとなった。


「それじゃあ、本当に戻るよ……? いいんだね?」


  ザイモールの別れ際のしぶとさったらなかった。


  結局リアナに脅され強制帰還となったのだ。



 ーーーーーー


  ミザリーはしっかりと責務を果たし、ディンは新たに力を手にしていた。体の奥底から何とも言えないエネルギーに満ちた感覚を覚える。


  今回は元から持っていた力よりも少し力を増した程度の魔力総量も多少は上がるらしい。つまりは、大幅なバージョンアップのようなもの。それが後、二回以上待っている。総計三回以上にもなる。ディンの持つ力が大きすぎた故の特例処置だ。それもライドの血を引くディンだからこそ、ではあるのだが。その上、焦らず一つ一つの壁を乗り越えていく事がディンには求められる。先はまだまだ遠いだろう。


  闇の魔力(オード)に関しても今までより多少扱える量が増えるだろうが、引き続き使用禁止の旨を珍しい事にザイモールが口を酸っぱくして言っていた。


 ザイモールは闇の魔力(オード)の危険性を体を持って理解しているからディンもまた不思議と説得された。


  そしてザイモールやミザリー、リアナを含め話した所、まずは冒険者協会本部のあるディオーネ王都まで出向いて欲しい、との事。


  それに従いディンとリアナは都へいく準備をする。ディンは長い間ディグル村に居ざるを得なかったが為に早く外の世界を見たいのだ。ディンの為にも片時も離れること無かったリアナもまた伸び盛りであるこの期間、無碍にするわけはいかない。


  冒険者としての成長、ミザリーの非人道的な実験への負い目、才能に溢れる亡きライドの後継としても協会の庇護の元、力をつけていって貰うことになるだろう。それに、現状ではザイモールたちでもディンがどのような成長をするのか見当がつかない。


  一番は危険視される強力な闇の魔力(オード)による魔人化だろうと言葉を残して。


  包み隠さずに言うとするならばいつでも始末出来るように協会のお膝下に置いておきたいという理由があるが故の待遇。


  ただ、それも重々承知の上である。


  そしてディンは己の夢へと一歩歩みだそうとしている。


  冒険者としての高みを目指し、冒険者の遥か高みに居る父の行方を探す旅へ。


  「それなら、おじいちゃんのところに行こうよ!」


  リアナが提案する。


  確かにディンはディオーネ王都へ向かえば良いとしか思っていなかった。どうやって行くかも知らずに。

 

「そうだな、そうするか!」


よろしければ、お気に入り、感想お待ちしております!!

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