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第1章-3 ガンプと呼ばれた怪物

大人数の大きな笑い声が響いた瞬間、全員の時間が止まる。

「まさか...ガンプ?」

雅司は、独り言のつもりでつぶやいた。

だが、その言葉に、紫苑がビクッと反応する。


「せ、先輩...?イタズラにしてはタチが悪いですよ...」紫苑の様子を見て、安心させようとしたのか、篤は剛に尋ねる。


「い、いや。ここに来るのは俺も初めてだし...」


紫苑の顔色が見るからに悪くなる。

「わ、わたし、もう帰る!」

紫苑は、手術室から出ようとした。しかし、あまりに慌てていたのか、扉に思いっきりぶつかってしまう。


バスンッと重い音が響く。「い、痛いよぉ...」紫苑はもはや半べそである。


そのとき、



           \ドッワハハハ/


またあの笑い声がした。それもすぐ近くで。

全員の視線が、音源である手術室の奥、棚の影となっているところに集まる。


 そこから、笑い声とともに身長が2mはある男が現れた。

革靴を履き、服装はスーツ、黄色いネクタイ、赤茶けたシミのあるYシャツ。そして、焼け焦げた顔、削げた唇。

まぶたのない瞳で、こちらを見つめる。笑い声は聞こえるのに、口は動いていなかった。


一番早くに反応したのは、”ガンプ”に一番近いところに居た剛であった。


「ひぃぃい!」

手術台から転げ落ちる。ガンプが足音を立てながら近づいてくる。次の瞬間、ガンプは手に持っていた鉄棒を振りかぶると、床に転がっている剛に向けて振りかぶった。


「うぐぅう」

鎖骨辺りを殴られた剛は、苦悶の表情を浮かべた。

ガンプは、再度鉄棒で殴ろうとして、大きく振りかぶる。しかし、その鉄の棒は空を切る。


 「今だ!」

雅司はジュリと紫苑の手を掴むと、手術室から外に出る。剛は奈緒と篤に半ば引きずり出されるように手術室からでると、病院から逃げ出すために車へと駆け出した。

ガンプも雅司たちを追って、手術室から出ようとするが、その巨体が幸いにして扉を通れなかった。

手術室からは大きな笑い声が、途絶えることなく続いていた。


 病院の入り口まで戻ると、外に出ようと扉を開けようとした。

「あ、開かない...」来るときは、簡単に開いた扉が、今は雅司がいくら力を込めても開かなかった。

「な、なんでよ!?なんで開かないのよ!?」紫苑は半狂乱になりながら、扉を叩く。

雅司が近くに落ちていたイスの脚で、扉のガラスを割ろうとするが、ヒビ1つ付かない。近くの窓にも同様にして割れない。

「何で割れないんだ...」雅司は愕然とする。



 「ちょっと、そこをどいてくれる?」

雅司が振り返ると、そこには鞄の中でごそごそと何かをしているジュリの姿が見えた。


「えっ、何を...」

雅司の言葉は、ジュリが鞄から出したあるものによって遮られた。


鞄から出されたもの、それは”小型のチェーンソー”だった。

「危ないから、離れてて。」

そうジュリは静かに言うと、その刃を扉の施錠部に当てる。

辺りには、低いエンジン音と、金属同士がこすれる甲高い音が響く。


「無理ね。」

少ししてからジュリはチェーンソーを止める。そこには傷1つ付いていない扉があった。


「どこか、他の出口はないの!?」奈緒にも紫苑の恐怖が伝搬したのか、パニックになりながらも叫ぶ。


「なあ、確か病院って緊急搬送口ってあるはずだよな?そこから逃げられないのか?」雅司が篤に尋ねた。


「あ、ああ。確かさっき病院の案内図を見たときにあったような...」


「じゃあ、早く行こう。先輩を早く病院に連れて行かないといけないし...」

雅司はチラリと剛の方を見やる。剛は鉄棒で殴られた衝撃で肉が裂けたようで、肩から血が滴っていた。

「それに、ガンプがここに来るかもしれない。」


 雅司は剛から懐中電灯を受け取ると、案内図を確認する。

どうやら非常口は、ここから病院を突き抜けた反対側であるらしい。

「ここの廊下をまっすぐ行って...」

雅司と篤で案内図を確認していると、突然、懐中電灯が切れる。


「いやぁぁぁっ」奈緒と紫苑は、突然真っ暗になったことに動揺して悲鳴を上げる。


その瞬間、



           \ドッワハハハ/


笑い声が聞こえた。その笑い声が、段々と大きく聞こえる。

”ガンプ”が近づいてきてる...その場に居る全員がそう思った。


「は、早く逃げようよ!」

紫苑が金切り声を上げる。


「い、いや、先輩はすぐに動かせないし、どこかに隠れよう。」篤は紫苑をなだめる。


「もうイヤっ!」

そう言い残すと、紫苑は1人で非常口の方に駆けていった。


「あ、おい!」篤は制止しようとしたが、紫苑は闇の中に消えた。


雅司は隠れる場所がないかと辺りを見渡す。

「あそこに隠れよう!」

雅司が指さしたのは、受付横にあるスタッフルームであった。


急いでスタッフルームに飛び込むと、すぐにあの笑い声がやってくる。





           \ドッワハハハ/





           \ドッワハハハ/




           \ドッワハハハ/




           \ドッワハハハ...




           \ドッワハ...




           \ドッ...




            ...



 しばらく近くを歩き回っていた様だったが、雅司たちは見つからなかった様で、そのまま笑い声は遠ざかっていった。

「なんとかやり過ごしたか...?」雅司はつぶやく。


「とりあえず、早くこの人の止血をしないと、長くは持たないわよ。」ジュリは剛の傷口を見ながら言う。


「で、でも包帯なんかないし。」


「これでなんとかするわ。」ジュリは自身のシャツを一部破ると、てきぱきと傷口の止血を始める。

シャツの一部で思いっきり傷口を縛られた剛は、苦痛でうめく。


静寂が流れる。動こうにも、遠くから笑い声が聞こえているため、その場に釘付けになってしまっていた。

剛は出血により、顔色が白くなっておりさらに呼吸も荒くなっていた。荒く呼吸をしていた剛だったが、突然口を開く。

「じ、実は」

剛は息も絶え絶えに喋り始めた。


「ガ、ガンプのことで...みんなに言ってなかったことがあるんだ...」


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