第参章 フトレイウェン 裏
登場する団体名や国家、人名は完全に架空のものであると誓います。
「引くな引くな!押し返せ!…っく…。」
剣を用いて戦った独立戦争での圧勝が今となってはうそのようである。
「…こんなことなら、おとなしく連合帝国臣民として生きておけばよかったんだよ、ご先祖様!」
アイドニ帝国…真神人民帝国とナムソ帝国の南方に位置するこの国は元はナイアティルブの植民地。しかし圧政に屈することを知らなかったアイドニ人は徒党を組み、連合帝国軍相手に圧勝を治め、自由を勝ち取った。自らの民族から皇帝を立て、自らの民族が政治を行う。「自由」という酒を酌み交わし、酔い、踊っていた。
しかし今は違う。半ば人民帝国の属国と化し、嘗ての領土を強制的に独立させられ、眷属にされた。国政は苦しくなり、「魔法」の開発国の一つであるにもかかわらず、その恩恵はあまりに薄いものだった。
「打て!」
未だに銃などを使っているあたりからも読み取ることができる。この国では「魔法」が全人民に与えられたものであるという前提は通じず、一部の高官のみが使うことができるものなのだ。
「行け!我々は『太陽の沈まぬ国』から勝利をもぎ取った民族なのだ!」
そうはいうものの、その時代と今とでは違う。あの時は双方が剣を持って戦った。しかし今は剣を使うのは人民帝国のみだ。…正確にいえば、剣と魔法。
「ウォスネット!てやあああああ!」
転移してきた敵兵が味方を大剣でなぎ倒していく。レイピアで串刺しにしていく。
「イマナット!」
呪文で呼び起こされた大量の水が
「イーザック!」
風でこちらに攻め寄せてくる。
「くぅぅ…」
「将軍!撤退命令を!これ以上は!」
「待て、まだ勝機はあるはずだ。」
「東方面の状況報告!第1・3・5・12小隊全滅!その他も散り散りになって敗走中です!」
「北方面の報告!戦闘可能な隊はほぼありません!」
「将軍!ご決断を。今なら皇帝の御慈悲だって…」
「うるさい!」
「オード二隊長!」
本名で呼ばれた瞬間、彼は一瞬固まった。そして。
「…全員に次ぐ。撤退しろ。これは命令である。従わぬ者は罰する。」
「良いご決断でした。皇帝陛下も情状酌量をくださることでしょう。」
「…アイドニは、どうしてこうなってしまったのか。」
「…我々が考えても仕方のないことです。今はただ、戦闘結果を報告する、その準備をするほかありません。」
沈痛な空気が漂う車の中で、敗走した兵士たちはただ黙り込み、神に祈った。
「…アイドニに栄光あれ…。」