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支度

 相模型戦艦一番艦『相模』の建造が開始された。

 相模型戦艦は全長306m幅42m公試排水量95000tを誇る超大和級戦艦である。

 主砲の52cm三連装砲は前部二基、中央部二基、後部一基の計五基でありながら、近代的な速射システムにより、一門辺り毎分15発という規格外の破壊力を持つ。船全体で十五門の砲塔から放たれる砲弾は、毎分225発、秒間にして3.75発もの速射力を持つ。

 しかし、この近代戦闘が主となる世の中で、所謂前時代的な大艦巨砲主義の設計思想の元に作られたかのように見えるこの戦艦は、ミサイルなどの誘導弾をハッキングにより回避する害獣には有効であると思われる。信管と火薬だけで構成されたその砲弾に、ハッキングする余地などなく、当然弾道を変えることは不可能である。

 また、害獣のハッキング可能距離が40kmと長いことから、それよりも長い射程を持つ砲が求められた結果、52cmという第二次大戦中の戦艦大和をも凌駕する巨砲が採用された。

 造船ドックの作業員達の士気は高い。何せ戦艦はロマンであり、それを好きで造船の業界に就職してきた者たちが多い中、現代の技術をもってして戦艦を作るというのだから当然であると言える。



 相模の建造は順調である。聞くところによると、隅田型雷艇(ライテイ)母艦は一番艦の『隅田(スミダ)』から、『四万十(シマント)』、『大野(オオノ)』まで、三隻を三ヶ月で同時進行し作り上げたそうだ。

 戦艦である相模と違って、雷艇母艦は、無誘導の魚雷を積んだ小型ボート、所謂雷艇の母艦として使用される予定で、小型ボート輸送用の設計でしかない為、簡単な作りではあるのだが、三ヶ月で三隻は異例の速さであった。

 さらに驚かされたのが、その一ヶ月後、同時期に建造を開始した山彦型高速砲艦『山彦(ヤマビコ)』が完成したことである。

 こちらは、第二次大戦中で言う駆逐艦に当たる艦で、その名の通り高速で移動する砲艦である。

 一切の電子制御を排除し、その速力で害獣に肉薄し砲撃を与えて一撃離脱をするという設計思想の、近代戦闘にあるまじき船である。これは、戦艦を大量に配備できないために、仕方なく設計された船だということだ。

 現在、相模型戦艦は四隻を予定されているが、おそらくそれ以上の戦艦は作れないだろう。対して高速砲艦は、山彦型だけで五隻、今後も改良され新たな型が建造される予定らしい。

 山彦型の時点で、全長130m幅12m公試排水量3200tの船が、脅威の53knという速力を持つのに、これ以上進化するというのはにわかには信じがたい。



 戦前の日本では、艦種による命名規則というものがあり、戦艦は旧国名、駆逐艦は自然現象などから名前を付けることが多かった。

 現代日本での、害獣駆除のための船舶もこの例に漏れず、戦艦には旧国名を使用している。また、駆逐艦の命名規則を引き継いだのが前述の高速砲艦で、山彦型は一番艦から『山彦』『木霊(コダマ)』『(セセラギ)』『(トドロキ)』『潮騒(シオサイ)』というように、音に関する命名が為されている。

 また、雷艇母艦は、戦時中の軽巡洋艦の命名規則である河川の名前を引き継いでいる。そして重巡洋艦の命名規則である山の名前を引き継いでいるのが、セキュリティ艦という、害獣のハッキングに対抗するために開発されている船舶で、現在『武尊(ホタカ)型』の三隻が予定されているが、船体設計は完成しても、セキュリティのプログラムが全く完成の目途が立っていないらしい。



 相模型戦艦二番艦『播磨(ハリマ)』の建造が開始された。相模の建造がまだ30%にも達していないのに、御国は相当お急ぎらしい。


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