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人物紹介

ダラン・ケイリー:主人公。今でいう小1。ショートヘア。

ナルマ・シントライ:主人公のクラスメイト。少し長いスポーツ刈。 

エマ:王都でのダラン達の引率係。神の第十団所属。20代前半。ショートボブ。


次の日、ダラン達が測定会を行う神殿へ向かうと、そこにはすでにダラン達を待つエマが立っていた。

エマがダラン達に向けて手を振る。二人はエマに気付くと笑顔で駆け寄った。


「エマ!」

「やっほー、ダラン、ナルマ。昨日はよく眠れた?」

「ううん。きんちょうして、ぜんぜんねむれなかったよ…」

「おれもねれなかった…」


ダランとナルマがともに寝不足を訴えると、エマはやっぱりかと苦笑を浮かべる。どうやら毎年初参加組は緊張と興奮で寝不足気味とのこと。

エマは肩を竦めると、二人の頭をぽんと軽く叩き測定場所へと促し歩きだす。


「でも、測定会が終わったらすぐ帰るから、帰ってからゆっくり休めばいいわよ」

「え!?おわったらもうかえるの?!」


エマの言葉にダランは驚いて眠そうに俯いていた顔を上げる。眠気もどこかへ飛んで行った様子だ。その横でナルマもぱちくりと目を瞬かせている。どうやら、今日帰るにしてももう少しゆっくり出来ると思っていたようだ。

エマはダラン達が勘違いをしていたことを知り、当り前よ、とため息をついた。


「そりゃそうよ、宿は次の子達が使わないと。一体何人が王都に来ると思ってるの?一人をいつまでも泊めとく場所なんてないわよ~」

「そ、そうだよね…」

「ちぇー!まあ、どうせまたらいねんもこれるって!」

「…そうだよね!らいねんはひろばのむこうのまちにもいきたいなあ!」


当然すぎるエマの話はまだ幼い二人に現実を突きつけた。がっくりと項垂れたダランとナルマだったが、二人で来年また楽しもうと希望を持てば沈んだ気持ちも浮上していった。

二人の中で今回の測定会は受からないと確定しているらしい。

果たして結果は、二人の想像通りだった。



「ここが測定場よ」


そういってエマに連れてこられた場所は神殿内の広い会場の一つだった。高い天井と壁の周りにある複数の神像が厳かな雰囲気を醸し出している。一面の白が床、天井のすべてを囲う。そして前のほうでは5つの水晶が台の上に置かれている。

会場はダラン達と同じく、今回が初測定会だと思われる少年少女で溢れかえっていた。


「わー!ひとがいっぱい!」

「うー…きんちょうしてきたぜ…」

「ふふっ。初測定の子は大抵ここで測定をするわ。大体は何の反応もないから緊張は無用よ」

「それはわかってるけど…でもきんちょうするんだよ!」


いかにも、な雰囲気にダランもナルマも会場内に入ることを躊躇してしまう。わかってはいたが普段感じない空気感にどうも尻込みしてしまうのだ。

しかしエマが会場の入り口から二人の背中を押す。

一歩足を踏み出したダラン達は、周りの子供の緊張した面持ちにつられごくりと唾を飲み込んだ。

その時、一人の老神官が中央に置かれた水晶の前に立って「静かに」と言った。


途端今まで子供達の賑やかな声が響いていた会場がしん…と静まり返る。


「これより測定会を開始する。順に前に出るように」


中央の神官は、老いているわりに低いがしっかりと張りのある声でそう告げた。

すると、ほかの水晶台にも男女の神官がそれぞれ立つ。そして前から順番に子供達も水晶台の前に並んだ。

やはりダラン達の年齢で能力の兆しを感じる者はいないらしく、水晶の前に立つ子供達は次から次へと変わっていく。大勢いた子供達は30分も立たないうちに半分へと減った。


(つぎ、ぼくのばんだ…)


ダランは緊張に少し震えた足を水晶台の前へと踏み出す。ダランの前にいた水晶台の女性神官は感情のない声で先ほどまでの子供に告げたようにダランへと指示を出す。


「利き手を水晶の上へと翳してください。…はい、ありがとうございます。また来年、貴方に神の加護が訪れますように」


ダランが右手を水晶に翳し、反応がないことを確認すると御座なりに定型句を付けダランへと測定の終わりを告げる。

リッヤタータに聞いていたとはいえ、余りにも呆気ない測定にダランは肩透かしを食らった気分だった。

思わず力んでいた肩から力を抜くとナルマを探す。一番端の台にいたダランとは違い中央の台にいたナルマも丁度測定が終わったらしく、呆気なさにぼんやりとしながらダランのほうまで歩いてきた。


「どうだった?」


ダランはナルマに向かって問いかける。別に能力の目覚めがあったとは思わなかったが、とりあえずそう聞くべきだとダランは思った。


「うん…まだめざめてないってよ」


ナルマは小さく唇と尖らせると、不服そうに腕を組みながらそう答えた。

わかっていたものの、やはり期待も大きかったらしい。落胆を隠せないナルマの様子に終わりに気付きやってきたエマはまたもや苦笑しただけだった。


「最初はそんなものよ。さ、村へ送っていくわ!」


そういって先に歩き出したエマをダランとナルマは慌てて追った。


(リッヤタータは受かったのかな?)


帰りのヘイスターに乗り込んだダランは、急な帰りでリッヤタータに会えなかったことを残念に思った。

今回の測定会を楽しみにしていたリッヤタータなら受かったかもしれない。


(またいつか会えるといいなあ…)


行きと同じく眩しい光に目を瞑りながら、ダランはぼんやりとそう思った。


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