第二話
遅くなりました。
第二話
≪はじめまして王都≫
クラスで話してから数日たったお休みの日、ダランとナルマは両親に連れられ、カントラストに一つしかない教会のなかにいた。
「やあ、ダラン。ナルマ。よく来たね」
そう二人に話しかけたのは、教会の神父―プーエルだ。
年のせいで光属性の象徴である金髪も白髪交じりになっているが、荘厳な濃紺色の神父服が彼の威厳を際立たせている。
プーエルは、好々爺といった風貌をしており、常日頃から優しい眼差しで町の人々に癒しと祈りを提供する重要な人物である。
両親の前に立ったダランとナルマは、揃ってプーエルに頭を下げた。
「「こんにちは、プーエルさま。きょうはよろしくおねがいします」」
「うんうん、こちらこそよろしく頼むよ」
プーエルはそんな二人に垂れ気味の目じりをさらに垂れさせ笑う。その顔は大人びて頭を下げるダラン達が可愛くて仕方がないといった様子。
さらに、プーエルの後ろには王都より派遣された黒の制服に身を包んだ術師が二人待機していた。頭を上げたダランとナルマは、その術師達に向かって左胸に手を当て軽く両膝を曲げた。これは初対面の人へ少年貴族が行う挨拶だ。
その恰好のままダラン達は術師へ向かい自己紹介を行った。
「カントラストのダラン・ケイリーです。きょうはよろしくおねがいします」
「おなじくナルマ・シントライです。よろしくおねがいします!」
それに対して、二人の術師は右胸に拳を当てて片膝を曲げる。同じくこちらは初対面の人へ成人貴族が行う挨拶になる。
「私は、神の第十団所属のクロウスラーです。三日間ですがどうぞよろしく」
オールバックに白髪をまとめた中年男性はそう言って二人をゆっくりと見た後にダラン達の背後の両親達にも同じようにお辞儀をした。
「同じくエマよ。よろしくね。」
もう一人の術師は、先ほどのクロウスラーとは違いフランクな挨拶だ。この町の女性と比べるとすらりと背が高く、短く切り揃えられた白髪に教会のステンドグラスから漏れる光が反射している。
「二人とも王都は初めて?テレポート、初めてだと酔うこともあるけど大丈夫かしら?」
挨拶を済ませたエマは、ダラン達に笑顔で問いかける。
その間にクロウスラーはダラン達の両親へ、診断会のスケジュールの確認や移動手段における契約内容等の説明を行った。
「ぼくはおうともテレポートもはじめてです…」
ダランは眉を下げ小さな声でエマに伝える。ダランの兄達がテレポートは一瞬過ぎて酔う暇もないと話していた為、エマの発言を聞き急に不安になったのだ。
その一方でナルマは自信たっぷりに答える。
「おれはきょねん、いちどだけおうとにいったぜ!」
「へえ!それはテレポートで行ったの?」
「そうだよ!とうさまがそくていかいのよしゅうにってたんじょうびにつれてってくれたんだ」
ナルマの答えにエマは面白そうに片眉をあげた。ダランはナルマの話を聞きながらやっぱり町一番の貴族は違うなあとぼんやりと思っていた。
「ならナルマがダランを引っ張ってあげてね。初めての王都は緊張するでしょう?」
「はい…どきどきします…」
「もちろん!おれがそくていかいじょうまであんないしてやるよ。ちゃんとおぼえてるんだぜ!」
ナルマはダランに向かいにっこりと笑いかける。ダランはその姿を見て「ナルマといっしょのときでよかったよ~」と胸を撫で下ろした。
しかし、エマはオーバーに肩を竦ませると、右手の人差し指を立て残念そうな声でナルマの計画が成り立たないことを伝えた。
「それは頼もしいけど、今回はテレポート場所が測定会場前なの。宿泊場所も測定会場の中の施設だからね。だから案内は私達に任せて頂戴ね」
「ええー!」
「そうなんだ。しらなかったや!」
エマの説明にダランとナルマだけでなく、クロウスラーから同じ説明を受けたらしい後ろの両親達も驚いた声を上げていた。
「ふふ、去年は違ったから知らなくても無理ないわ。今年から宿泊場所が変わったのよ。去年は工事中だった施設が完成したから、今年からは毎年そこに宿泊してもらうことになるわ」
「去年の例のこともあった為、今年は測定会場からなるべく子供たちを出さないようにしています。とはいえ、測定までの待ち時間は退屈でしょうから私達が近くの広場を案内することになるかと思います」
エマとクロウスラーの説明の後にプーエルも続けてウィル達に話しかける。
「広場とはいえここの噴水前とは比べ物にならない広場だ。出店もあるらしいから二人は十分楽しめるだろうさ」
それにウィルとナルマの父親は安心したように言った。
「まあ、初めての王都で人疲れもするだろうからうちのダランにはそのほうが有難いのかもしれないな」
「そうだな。ナルマも去年の記憶が正しいか不安が残る。調子に乗ってクロウスラーさん達に迷惑をかけてもいけない。丁度良かったと言える」
子供達をたった一人(正確には違うのだが、親の心境としては一人と言っても過言ではないのだ)で王都へ行かせることはウィル達にとっても不安で仕方なかった。
初めてや二回目の王都にはしゃぎ、迷子にでもなればどんな人攫いや事件に巻き込まれるかわからない。ダランは大人しくしていたとしても、初めて会う人々に気疲れを起こし倒れかねない。それならばいっそ測定会場という厳重警備のもとで拘束されていたほうが安心できるというのが本音だった。