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人物紹介

リッヤタータ:測定会前日にダラン達と仲良くなった少年。


リッヤタータは、ダラン達とは違い神殿の奥に進んだ一室にいた。

ガラスのない窓枠が吹き抜けタイプの部屋のつくりは外からの日差しや風が入りやすく、室内の白をより一層際立たせている。奥の扉の前には2つの水晶が置かれた台が置いてある。きらきらと光を反射して輝く水晶にリッヤタータは思わずごくり、と唾を飲み込んだ。

常に新鮮な空気を取り入れた空間は、清廉だがどこかひんやりと感じる。リッヤタータを含めて10名前後の子供達は部屋の広さと空気にどこか戸惑いながらも測定を待っていた。



(ダランとナルマは今年はやっぱり不合格かな?)


前に並んでいた少女と話しながらリッヤタータは前日に仲良くなった少年達のことを思い出していた。

6歳という幼さの残る外見や言動通りに、髪色もまだ白髪のままで能力が目覚めていないことを表していた彼ら。初めての測定会と王都を全力で楽しんでいたのが微笑ましかった。

リッヤタータは今回の測定会、自分は通ると確信していた。半年前からリッヤタータの髪は薄緑色になり始め、今では綺麗に色づいた髪になっていた。

恐らく大地系、植物に関する能力持ちとして成長していくことだろう。

大きな丸眼鏡を指で持ち上げたリッヤタータは、それにしても、と周りを見渡した。


部屋にいる子供達はリッヤタータと同じように、一目で能力に目覚めているとわかる髪色の変化した子供ばかりだった。

今までは大部屋での測定会ばかりだった為、今回違う部屋で測定することに戸惑ってしまう。


「私、この部屋初めて…」

「僕もだよ。どうしてだろう?」

「去年、髪色の変わっていた私の友達も私と一緒に大部屋での測定だったわ」

「俺の友達もだよ!」


戸惑っていたのはリッヤタータだけではないようだ。部屋中で少年少女は思い思いに不安の言葉を口にする。リッヤタータはそんな部屋のなかで、一人周りの子供よりも艶やかな髪色をした少年を見つけた。

白金と呼ぶに相応しい髪色をした少年は、顔の下半分を高級そうなストールで覆っていた。北の貴族には顔を隠す文化があると聞いたことがある。彼もそうなのだろうか。顔の半分が見えなくても整っているとわかる顔に見惚れていたのに気付いたのか、一瞬少年がリッヤタータのほうを見た気がした。

その時、部屋の奥の扉から神官達が現れた。

神官達はダラン達の時と同じような説明をし、子供達を2つの水晶台の前でそれぞれ並ばせる。

大部屋と違い縦一列に並ぶと、前の子供の測定結果が一つ後ろの子供にも聞こえてしまう。

リッヤタータの前には気になっていた白金の髪の少年が並んでいた。

近くで見るとますます髪色の美しさに見惚れてしまう。絹のようにさらさらとした髪も顔と同じように半分以上ストールに隠れていることが、リッヤタータには本当に惜しく感じられた。

しかし、リッヤタータはそんなことより、思ったよりも幼いのか背丈が自分よりも遥かに小さいことに驚いた。もしかするとダランやナルマと同じくらいかもしれない。


「では次。…この水晶に手を翳してください」

「はい、合格です。入学希望の学校があれば奥の間で生徒から案内状を受け取ってください」


リッヤタータが少年の観察をしていた間に、合格した子供は次々と、水晶台の奥の扉から案内状を受け取るために繋がった奥の間へと進んでいた。集められた子供の数も少なく順番は駆け足で進んでいく。あっという間に白金の髪の少年の番になった。少年は小さく頷くと右手を水晶の上に翳す。すると水晶がまるで少年の髪色のように白金色に眩しく輝いた。

これには測定をしていた神官や周りで待機していた神官達も驚き騒めいてしまう。神官は上擦った声で次の指示を出す。


「あ、ありがとうございます…。合格です。それでは奥の間へ…」

「いえ、結構」

「え?あ、ですが学園の案内状は奥の間でないとお渡しが…」

「ですから結構です。入学しませんから」


しかし少年は神官の戸惑いを無視するかのように、すげないそぶりで水晶台から踵を返すと入り口の扉へと向かって歩いていく。呆気にとられていた神官達だったが、そのなかでも偉そう(位的な意味で、である)な神官が慌てて少年を追うと声を掛けた。さらに水晶台の神官へも指示を飛ばす。


「君、少しこちらへ。ウエイズ君は次の子をお願いします」

「あ、はい…!…こほん。では、次の子どうぞ」

「は、はい…」


偉そうな神官からの指示を受け、ウエイズと呼ばれた神官は気持ちを落ち着かせるように咳払いを一つすると、次の番だったリッヤタータを呼んだ。

リッヤタータは緊張した声で返事をしながらも、頭では神官と一緒に入り口の扉の向こうへと消えていった少年のことを考えていた。


(なんだか物凄い子だったな…)


「はい、合格です。では奥の間で案内状を受け取ってくださいね」

「はい。ありがとうございます」


神官の言葉に頷いたリッヤタータは、先ほどの少年とは違い素直に奥へと進み扉を開けた。

扉の奥の部屋では各学園の生徒と、今しがた測定会にて能力の判定を受けた子供達が楽しそうに会話を繰り広げていた。

各学園の生徒達は子供達に学園の案内状を渡しつつ、同時に、自分の学園の勧誘も行っていく。

ウィズナー国に4つしかない学園である。どの学園も能力値に期待が持てる生徒を欲しがっているし、自分の学園の特色に合っていそうな子供達は特に熱心に勧誘を行っているようだった。

しかし、それを子供達に悟られることのないよう意識している。子供達からすればどの学園も憧れである。学園の特色はあるとはいえ、幼い身で自分の身の振り方を決めさせるのは酷というもの。憧れや希望を受け止め、アドバイスを行いつつ自分の学園へ興味を持つよう上手く誘導しているようだった。


「おや、君も合格だったんだね。おめでとう。ようこそ、能力持ちの世界へ」

「あ、ありがとうございます…!」


リッヤタータがどの学園の案内状を受け取るか困っていると、濃緑の制服に身を包んだ一人の男子生徒が声を掛けてきた。

笑顔でお祝いの言葉を言われたリッヤタータは、ようやく自分が測定会で合格出来たのだという事実を実感し、感極まって涙声でお礼を告げた。

男子生徒はそんなリッヤタータを微笑ましそうに見つめ、自分の所属する学園―クグフスト学園の魅力をさり気なくアピールするのだった。


学園おさらい

クグフスト学園:ウィズナー国一の学園。共学。制服の色は濃緑。

白百合:女学院。男性禁制の超お嬢様学校。制服の色は白。

大海園:完全実力主義な筋肉ダルマ。共学。制服は青いマント。

アーシャ:治癒学が得意な学園。共学。学園のエンブレムのデザインワッペンを身に着けている。

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