8、こわーい話
…………
「さあて、眠ろうかねぇ」
「じっちゃん、何か話してよ」
「話?寝つきのイイ奴が今日はどうした。あさってのことで眠れないんだろ~」
「そんなんじゃないけどさ」
「まあイイさ。何の話をしようか。そうだなぁ、ちょうどイイ怪談でもしてやろうか」
「怪談?」
「そうだよ。お城にまつわる話だ」
次のじっちゃんの声を待った。
「昔な、百年も昔の話なんだが…王様にはお后様と寵姫様がいらっしゃいました」
「チョーキって?」
「なんつーかな、平たく言やぁ嫁さん以外のオンナってとこかな」
「うん…」
何だか分からないけどイヤな表現だなぁ。
「お后様と寵姫様には、それぞれ王子様がありました。寵姫様の王子様のほうがお兄さんでした。でも、しきたりでお后様の王子様が歳は下でも次の国王になることが決まってました」
頭がこんがらがりそうな話だなぁ。
「ある日、国王になる王子様が夜眠ろうとしている時…コツコツ、コツコツと石を硬い物で打つような音がしてきました」
そこでじっちゃんは急に黙った。
犬の遠吠えが聞こえてきた。
それから、コンコンと何かを叩くような音。
「…あれ?何の音だ?」と、じっちゃんが言った。
何の音だ、じゃないよ。じっちゃんが話を盛り上げるためにやってんだろ。分かってるよ。
「じっちゃんがしてんだろ。ぜんぜん怖くないよ、そんなの」
俺が言うと、じっちゃんは黙っていた。
「はい、おしまい!さて、寝よう」
「えっ?話、途中じゃないの??」
「いや、お前さんはぜんぜん怖がらないから怖い話しても甲斐がないよ。あ~、アル坊に怖い話してやりたいな、あの子は全身で怖がってくれるから話し甲斐があるね~」
思い出し笑いか、じっちゃんは一人でクスクス笑った。
そりゃあ、アルは起きて話を聞いてる時でも、わざわざ布団を頭からかぶって怖い話を聞くし、そのあとは明るい昼間でも便所について行かされるくらい怖がる。
まあ、たしかに話し甲斐はあるけどさ。まったく、じっちゃんも人が悪いなぁ。
「おやすみ。灯りを消すぞ」
そう言ってじっちゃんはすぐに燭台の灯を吹き消した。
何も見えないくらい真っ暗になった。