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放課後の徘徊

作者: 森下青海

いじめ。忌み嫌われる者。


いつの世も、どこであろうと、絶えることはない。人間の業、或いは宿命と呼んでもいいかもしれない。



その日、俺は放課後の校内をうろうろしていた。部活も休みだし、かと言って家に帰る気もせず、どこかに繰り出す気分でもなかったから、校内をうろうろしていた。


あまり人気のないところを通り掛かった時だ。外から人の声がした。


数人の女子が、一人を取り囲んでいた。へたりこんでいる一人に対して、言葉の暴力を振るっているようだ。


廊下の開いている窓からしばらく眺めていたが、誰も俺に気付かない。そこで声を掛けてみた。


「お前ら、何してんの?」


取り囲んでいた奴らが慌てて振り返る。なんだ面白い連中だな、一様に驚いてるぞ。


「しょうもねぇことしてないで、家帰ってクソしてさっさと寝ろ」


リボンを見る限り下級生なようだ。俺のネクタイで上級生だとわかると、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


何こいつら?なかなか面白いな、などと考えていたら、声を掛けられた。


「助ける気があるなら、もっと早く助けなさいよ」


どうやらへたりこんでいた子はまだ残っていたようだ。この子も下級生だ。


「別に助けようとした訳じゃないからな。義憤や博愛主義でもなんでもない」


「…最低。痛!」


立ち上がろうとして、その子が崩れ落ちた。どうやら足が痛むようだ。


「なんだ、足でも痛めたか?保健室寄ってから帰れよ。じゃあな」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


慌てたように俺を呼び止める下級生女子。


「か弱い女の子が怪我してるんだから、手ぐらい貸しなさいよ」


「え?やだ」


「な!?何でよ!」


「言ったろ。お前を助けようとしたわけじゃないと。そろそろ帰る。じゃあな」


「あ〜わかった、わかったわよ。保健室まで連れていって下さい。助けて下さい、お願いします先輩」


「仕方ねぇな。ちょっと待ってろ」


仕方なく窓から外へ出て、下級生女子へ近付く。そして…


「きゃあ!なにすんのよ!」


「なにって…お姫様だっこ」


天地神明に誓って、120%の確率で、お姫様だっこである。


「なんでそうなるのよ!スケベ!変態!痴漢!」


「…そこのビオトープに落としてやろうか?」


「や、やめて!私が悪かった!だからそれだけはやめて先輩!ごめんなさい、謝るから!」


「…とりあえず保健室まで連れていってやるから黙ってろよ」


「…わかったわよ。だ、だけどこれすごく恥ずかしい…」


そう言った下級生女子は赤面している。なかなかウブな反応、ごっつぁんです。



さっくり保健室へ連れていき、保健医により手当てを受けた下級生女子。先生から頼まれて当女子の鞄をとってきてやった。ついでに自分のも。


「じゃあな、俺は帰る」


「ああ、先輩ちょっと待って!」


「なんだ、スタム?」


「誰がスタムよ!あんな厳つい元オランダ代表DF呼ばわりするな!」


「おお、ナイスツッコミ。しかしいい選手だった」


「ええ、それは認めるけど…って違うわよ!」


「だからなんだ、ヤンカー?」


「だからそれは元ドイツ代表FWじゃない!…落ち着け私!……先輩、私を家まで送って下さいお願いします。」


「え?やだ」


そこで一人爆笑していた先生が口を開いた。


「送ってあげなさい。彼女の足、まだかなり痛むみたいだし」


マンマミーア…



住所を聞くと、俺ん家に近かった。ちょいと寄り道をしたと思えば、大したことじゃない。


下級生女子の自宅まで歩いて20分。その間当女子は俺の腕にしがみついたまま、一言も話さなかった。


「ここが自宅か。義理は果たしたから俺は帰る。じゃあな」


「ああ、先輩ちょっと待って」


「なんだ?」


足を止め、振り向いた。そこで固まる俺。


「送ってくれてありがとう先輩。遅くなったけど、私の名前は笹井夏紀です」


満面の笑顔、だった。こいつの笑顔、すげーかわいい。


「どうしたの、先輩?」


「お前の笑顔に見惚れてた。俺は冬木秋彦」


「なっ!」


赤面したまま固まる下級生女子改め笹井夏紀。


「ま、お大事に。さらばだ」


再度帰りかけたところで。


「…ああ、先輩ちょっと待って!」


再度止まって振り返る。


「ねぇ、先輩家近いんでしょ?図々しいのはわかってるんだけど…あの…その…」


仕方がないな、こいつ。


「わかった、明日の朝迎えに来てやるよ」


「本当?ありがとう」


やっぱり笑顔はすげーかわいい。反則だ。


とんだ放課後だったが、まあ、これはこれでありだったな。

読んでいただいてありがとうございます。拙い文章ではありましたが、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。


個人的にはデカくてゴツくて厳ついサッカー選手が大好きです。スキンヘッドならなおのこと。少々前のお方々ですが。

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